食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第六章

アレ

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 俺の中で何かが弾けて、まるで身体の中に穴が開いたような気がした。
 その穴は巨大な魔物の口のよう何かを貪り、喰らい尽くそうとしている。
 そいつが喰らうたびに穴の底が熱くなっていく。
 いや、熱さはどんどん広がって、いつの間にか全身が燃え盛るように熱くなっていた。
 だけど、満たされたような、何かを達成したかのような充実感がある。
 さっきまでの痛みも苦しさもない。
 穏やかな気分だ。
 身体が軽い。
 今なら何でも出来そうな気がするくらいだ。

「……い! ……えるか!? お……っ!」

 遠くで誰かが必死に叫んでいるのがわかる。
 誰だ? 俺は今とても気分がいいところなんだ。
 邪魔して欲しくないな。
 
「おいっ! 眼を開けろ! おいっ!」

 眼を開けろ?
 何を言っているんだ?
 俺の眼はしっかり開いている。
 そこに誰がいるのかもわかるぞ。
 この感じは……フォルネアだな。
 フォルネア? フォルネアって……

「おいっ! 起きろ! さっさと起きろ! この童貞野郎!」

「だぁああ! その言い方は止めろぉおおおお!」

 バッと身体を起こすと、そこには服がボロボロになったフォルネアが半泣きになっていた。
 何だ!? 何があった!?

「起きた……? 起きた! 良かったぁあああああ! うわぁあああああ! このまま起きなかったらどうしようかと……僕は……僕は……うわぁぁあああああ!」

「お、おい……そ、そんなに泣くなよ」

 急に堰を切ったように泣きじゃくるフォルネアに、俺の方がどうしたらいいかわからない。
 一体何が起こったんだ?
 よく見たら俺もボロボロになってるし、何をしてたんだっけ?
 確か魔殻を破るからって、フォルネアに協力してもらって、魔殻が破れたと思ったら急に魔力が暴走して、それで俺は……
 あっ、だんだん思い出してきたぞ。
 それでお互いが暴走した魔力でボロボロになって、フォルネアを巻き添えにできないって離れようとした俺に……こ、こいつはぁあああ!?

「もうすごく心配したんだよ! 急に叫び出したと思ったらすごい魔力で荒れ狂う魔力の奔流を抑え込んで飲み込むんだもん! あんな事が出来るんだったら最初からやればいいのに! もう! バカ! アホ! でも、本当に無事で良か……」

「アホはお前じゃぁあああああ! 何してくれてんだよ! バカヤロ!」

 安堵の表情を浮かべていたフォルネアが飛び上がるように驚いた。
 急に怒鳴るのは悪いが、今回ばかりは俺の怒りの方が優先だ!

「な、なんだよ!? 急にアホとかバカとかって! 僕は君を心配して……」

「心配してくれてどうもありがとうございますだよ! でも、その前にお前は俺に何をしたんだよ!? 何のつもりだ、アレは!?」

「えっ……ア、アレ? アレって何さ?」

「惚けんな! お前は俺にいきなり何をしたんだよ! 思い出せ!」

 フォルネアは本当に何の事かわからないのか首を傾げていた。
 そして、しばらく考えた後に俺が顔を真っ赤にして怒っている事でやっと気がついたようだ。

「もしかしてアレって、アレのこと? 深くて濃厚なやつのこと?」

「ソレの事だ!」

「アレはしょうがないでしょ? 君が意識飛ばしそうになってたから、なんとかしなきゃと思って……でも、気持ち悪くはなかったでしょ?」

 ぐっ……それについては反論できない。
 い、いや! そんな事より問題はそこじゃない!
 
「勝手にした事に問題があるんだよ!」

「何でだよ! だいたいこんな可愛い子にしてもらっておいて、文句つけるなんてどういうつもり!? 何の問題があるか言ってみなよ!」

「大ありなんだよ! お、俺は……俺はお前と……結婚しないといけないんだよ!」

「ふぇええええええええええええ!?」

 フォルネアが俺と同じように顔を真っ赤にして叫んだ。
 やっと事の重大さに気づいたようだ。
 それにしても、どうしよう……
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