食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第六章

嫁と結婚

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「よ、嫁になるって……俺から言っておいてなんだけど、本当にいいのか?」

「おう! いいぞ!」

 さっきまで炎上していた頭がフォルネアの決断で一瞬にして冷えた。
 冷静になって考えると、自分が相当ヤバい事を言っていた事に気づいて、背筋が凍りそうになる。
 自身の勝手な理由で恩人に結婚を強要してた……何を考えているんだ、俺は!?
 無礼にも程があるだろ!
 貴様は恩を仇で返す気かっ!
 くそっ! 
 キスに動揺して冷静じゃ無かったとはいえ、付き合ってもいない女性に結婚を強要するなんて最低だ!
 これこそ、貴族どもと変わらない下衆の所業じゃないか!
 お、俺はなんて事をしてしまったんだ……

「フォ、フォルネア……」

「なんだ?」

「その……い、嫌なら断ってくれても……」

「別に嫌じゃないぞ? 僕はお前の嫁になる。いやぁ、一度くらいは経験しておきたかったんだよなぁ。どうせ結婚できないし」

「そ、そうか。それなら……ん? 結婚できない?」

「うん? そうだぞ。僕とお前は結婚できないんだぞ?」

 は? えっ? なに? どういう事?
 結婚できない? 
 でも、さっき嫁になるって……えっ?

「知らないと思うけど、僕達魔族は同族以外とは結婚できないんだ」
 
「な、なんだって……?」

「魔族のしきたりで決まっててな。これは生まれながらに魂に刻まれる呪いみたいなもんだから、他種族と結婚した時点で僕の魂は消失しちゃうんだよ。面倒な事だよねぇ。あはははっ!」

 あははって……魂が消失する事をそんなに軽く流していいのか?
 おまけに好きな他種族が出来ても結婚できないなんて……
 
「それって、辛いんじゃ……」

「別に辛くないぞ? だって、一緒に生活したり交わるのには問題ないからな」

「そうなのか?」

「まぁね。それにお前の国だって他種族との結婚なんか認めてないだろ? 同じようなもんじゃん」

 はっ! そ、そういえば……帝国って獣人とか亜人との結婚すら認めてなかったっけ。
 言われてみれば一緒……か?

「じゃあ、さっきの嫁になるって言ってたのはなんなんだ?」
 
「結婚してないパートナーを魔族は『嫁』と呼ぶんだよ。結婚してる時は『妻』だ。魔族特有の言い回しだな」

「ま、紛らわしい……じゃあ、俺との関係はどうなるんだ?」

「結婚してないパートナーだ。相棒と言った方がいいかもな。結婚してないだけで他は夫婦と変わらない。ただし! 僕はもうキスも身体を許すつもりもないぞ。どうしてもやりたかったら僕に勝って屈服させる事だ。そうなったら君に身も心も捧げるよ」

『そんなちんちくりんの身体とやりたいとは思わないから安心しろ』とは、言わない方がいいな。
 マジで殺されかねない。
 それにしてもこの場合はどうしたらいいんだ?
 相手の都合で結婚はできない。
 でも、一緒に暮らしていくわけだから責任は放棄してない……なんかご都合過ぎる解釈のようだけど、フォルネアの意見を尊重するなら、これで納得するしかないか。

「わかった。じゃあ、これからは相棒って事でよろしく頼むよ」

「おう! じゃあ相棒として君に色々教えてやるよ! 先ずはその危ない魔力の使い方からな」
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