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第六章
主人
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「ライブランドの王族が処刑された、だと? 悪い冗談ではないのだろうな?」
鉄面皮の如き、こいつが慌てるほどだ。
冗談ではないことはわかっている。
だが、それでもそれを期待せずにはいられない。
もし、本当であれば、帝国存亡の危機に繋がる。
「残念ながら、これは本当の事です。直に確認したとの事、偽りでも幻覚でもありません」
「馬鹿なっ! アマナ王国はたかだか人口150万人程度の小国ではないかっ!? それがライブランド王国に勝った? どんな奇跡が起きた? 神でも味方についたのか!?」
「か、閣下! お気を確かに!」
信頼する部下達の必死な声でも落ち着けない程、私の心はかき乱され、体裁を取り繕うことすら出来なくなっていた。
ここ数日はこんな事ばかりだっ!
故郷は他国の介入を許して堕落し、可愛がっていた部下を失い、最愛の父と兄を拘束して、今度は自国より強大な隣国が小国によって滅ぼされただと?
何故こんなにも問題ばかりがやって来るのだ!
私が何をした?
私が神の機嫌を損ねる行いをしたとでも言うのか!?
「そのような顔をしている場合ではありませんよ、ジェニングス中将。これは早急に対策を講じねばならぬ事態です」
「わかっている! ライブランド王国をいとも簡単に落とした国が急に現れた。それなのに、こちらはその国の情報を何も得ていない。もし、攻め込まれでもしたら……」
戦争の勝敗を分けるのは情報だ。
より、正確な情報をどれだけ得られるかで作戦の内容も成否も変わってくる。
しかし、帝国にはアマナ王国の情報が全くないのだ!
情報……そうだ!
「テラーズ殿! 卿ならアマナ王国について情報を持っているのではないか?」
一縷の望みはこの男しかいない。
というより、この男が知らぬのであれば知っている者はいないと言っても過言でない。
「確かに、ある程度の情報なら持っています。しかし、戦力となるとそこまで確度の高い情報はありません。牧歌的で危険度の低い国でしたから、諜報員も多くは派遣していなかったのです。今となっては失態でした」
「そうか……いや、卿を責める理由も時間もない。我々もすぐに行動計画を改める必要がある。この場で作戦会議を……」
「お、お待ちください! 閣下!」
「リッくん……いえ、シュナイデン中佐の事はどうなさるのですかぁ?」
「うっ……」
嘆願するようなアリシアとファンティーヌの瞳に心が締めつけられる。
2人の瞳が痛いわけではない。
私自身も同じ事を考え、答えを出せていないからだ。
「シュナイデン中佐の捜索を中止なされるのですか!? それは、あんまりでは……」
「ここまで情報を得て見捨てるなど、そんな事できるわけがありませんわ! せめて、私達だけでも捜索を続ける事をお許しくださいませ!」
「イリア……クリスティーヌ、それは……」
痛い。
胸が痛い。
胸の内で帝国軍団中将としての私と、リクトを慕う私とが死闘を繰り広げているかのようだ。
私は、私はどうすれば……
「それはできない話ですな」
床しか見れなかった私の代わりに声を出したのは、テラーズだった。
こいつなら、どうする?
自らの主人の事を思えば、当然……
「今は旦那様の捜索をしている場合ではありません。早急に帝都に帰還しなければ」
「な、んだと? 卿は、卿は自らの主人を見捨てると言うのか? お前がリクトは生きていると言ったんだぞ!?」
気づいたら胸ぐらを掴み、嫌いな顔を眼前に近づけていた。
どうやら、私の中でリクトを慕う私が勝ったようだ。
鉄面皮の如き、こいつが慌てるほどだ。
冗談ではないことはわかっている。
だが、それでもそれを期待せずにはいられない。
もし、本当であれば、帝国存亡の危機に繋がる。
「残念ながら、これは本当の事です。直に確認したとの事、偽りでも幻覚でもありません」
「馬鹿なっ! アマナ王国はたかだか人口150万人程度の小国ではないかっ!? それがライブランド王国に勝った? どんな奇跡が起きた? 神でも味方についたのか!?」
「か、閣下! お気を確かに!」
信頼する部下達の必死な声でも落ち着けない程、私の心はかき乱され、体裁を取り繕うことすら出来なくなっていた。
ここ数日はこんな事ばかりだっ!
故郷は他国の介入を許して堕落し、可愛がっていた部下を失い、最愛の父と兄を拘束して、今度は自国より強大な隣国が小国によって滅ぼされただと?
何故こんなにも問題ばかりがやって来るのだ!
私が何をした?
私が神の機嫌を損ねる行いをしたとでも言うのか!?
「そのような顔をしている場合ではありませんよ、ジェニングス中将。これは早急に対策を講じねばならぬ事態です」
「わかっている! ライブランド王国をいとも簡単に落とした国が急に現れた。それなのに、こちらはその国の情報を何も得ていない。もし、攻め込まれでもしたら……」
戦争の勝敗を分けるのは情報だ。
より、正確な情報をどれだけ得られるかで作戦の内容も成否も変わってくる。
しかし、帝国にはアマナ王国の情報が全くないのだ!
情報……そうだ!
「テラーズ殿! 卿ならアマナ王国について情報を持っているのではないか?」
一縷の望みはこの男しかいない。
というより、この男が知らぬのであれば知っている者はいないと言っても過言でない。
「確かに、ある程度の情報なら持っています。しかし、戦力となるとそこまで確度の高い情報はありません。牧歌的で危険度の低い国でしたから、諜報員も多くは派遣していなかったのです。今となっては失態でした」
「そうか……いや、卿を責める理由も時間もない。我々もすぐに行動計画を改める必要がある。この場で作戦会議を……」
「お、お待ちください! 閣下!」
「リッくん……いえ、シュナイデン中佐の事はどうなさるのですかぁ?」
「うっ……」
嘆願するようなアリシアとファンティーヌの瞳に心が締めつけられる。
2人の瞳が痛いわけではない。
私自身も同じ事を考え、答えを出せていないからだ。
「シュナイデン中佐の捜索を中止なされるのですか!? それは、あんまりでは……」
「ここまで情報を得て見捨てるなど、そんな事できるわけがありませんわ! せめて、私達だけでも捜索を続ける事をお許しくださいませ!」
「イリア……クリスティーヌ、それは……」
痛い。
胸が痛い。
胸の内で帝国軍団中将としての私と、リクトを慕う私とが死闘を繰り広げているかのようだ。
私は、私はどうすれば……
「それはできない話ですな」
床しか見れなかった私の代わりに声を出したのは、テラーズだった。
こいつなら、どうする?
自らの主人の事を思えば、当然……
「今は旦那様の捜索をしている場合ではありません。早急に帝都に帰還しなければ」
「な、んだと? 卿は、卿は自らの主人を見捨てると言うのか? お前がリクトは生きていると言ったんだぞ!?」
気づいたら胸ぐらを掴み、嫌いな顔を眼前に近づけていた。
どうやら、私の中でリクトを慕う私が勝ったようだ。
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