食うために軍人になりました【一人称版】

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第七章

甘くない

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「御言葉ですが、ガルヴァン殿。それは貴国も同じなのではありませんか?」

 サウデンベルクの顔が変わった。
 さっきまでは人の良さそうな感じだったのに、今は非道く冷たく見える。
 こいつ、こっちが本性というわけか。

「そりゃあ、どういう意味だ?」

「貴国は一年前、何やら大層な戦いがあったそうじゃないですか。そのせいで栄えある海神十二将はかなりの痛手を被った、そうではありませんか?」

「っ! て、てめぇ!」

「今も戦線に復帰できず、伏せている者や、中には部屋から出てこられ無くなった方もおられるとお聞きしましたが……それで、どれ程の戦力があると大言を吐かれるんですか?」

 この男、食えないな。
 ルークリアはルークリアで、一年前の事を正確に把握していたのだ。
 どの国も諜報活動には余念が無い、という事だ。

「サウデンベルクさんよ、面白ぇじゃねぇか。だったら、この場でどれ程の戦力があるか証明してやろうか!? ぁああ!?」

「それもいいわね。私は貴方みたいな粗野で声がデカくて、品性の欠片もないような男は嫌いなのよ。この際、退場願おうかしら?」

「いいねぇ。第二席スティーグ・ルーストレーム。なかなか良い女だ。安心しな、殺しはしねぇ。後で悔しがる顔を見ながら、たっぷり楽しんでやるからよ」

「貴方じゃ、あっちの方も期待できないわね。私が抱かれてもいいと思った男は、今はただ一人だけ。すっこんでろ、ブサイク」

 両者の睨み合い、そしてぶつかる気迫がガタガタとテーブルを小刻みに揺らしている。
 凄まじいものだ、と以前の私なら思っていたんだろうが、今の私には児戯にも思える。
 やはり、こんなものか。
 組むに値するとは思えないな。

「そこまでにしてください。戦いに来たのではないのでしょう? 止めないと言うなら、帝国は引かせていただきますが、よろしいですか?」

「……ガルヴァン、止めよ」

「ルーストレームさんも、ここは私の顔を立てて抑えてくださいませんか?」

 グランツとサウデンベルクに諌められた二人は、執着する事無く、スッと手を引いた。
 どうやらアテが外れたようだ。

「この際ですから、はっきり申し上げておきます。我が帝国は今回の同盟案を強く必要としてはいません。ですから、仲裁する気も譲歩する気もありません。その事は理解しておいてください」

 ウォーレイク閣下の言葉に誰も何も言えなくなっている。
 当然だ。
 私達の上官はそれほど甘くはないぞ?
 会談の席に着きながら、その最中に他国と仲違いをする事で、同盟締結に有利な条件を引き出そうしたんだろうが、そうはいかん。
 フォルネア殿のおかげで、私達は巨大な戦力を手に入れているのだ。
 お前達が争うなら、この場を去るだけ。
 下手に出る気はないぞ!

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