食うために軍人になりました【一人称版】

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第七章

上位種の魔族

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 なんと冷たい深く重い気迫だ。
 身体の芯まで凍えてしまいそうで、今にも逃げ出したくなる。
 他の人達も同じ思いなんだろう。
 あの、冷静沈着なウォーレイク閣下でさえ冷汗が滲んでいるじゃないか。
 これが、これが【上位種グレーター】と呼ばれる魔族の本気か。
 勝てる気がしない。

「さぁ、どうなんだい? 手始めに君の首から差し出すのかい?」

「フォ、フォルネア殿……我々は……」

「醜い言い逃れは僕の気を逆撫でるだけだよ。それとも、証拠がないとでも言うつもり? だったら教えてやる。証拠なんてどうでもいいんだよ。僕がそうだと言ったら、そうなんだ。お前達がリクトを襲った。だから、その代価を払え。わかったか?」

「うっ……」

 更に気迫が増した。
 目の前にいるグランツの感じている重圧は、私達の比ではないだろう。
 フェンドラはとんだ墓穴を掘ったものだ。
 
「た、確かに……我々フェンドラはヴァランタイン帝国のリクト・フォン・シュナイデン男爵を脅威と判断し、一年前に彼を抹殺すべく動いた事は事実です。その事については、フォルネア殿、及びヴァランタイン帝国に対して深くお詫び致します」

 ついにグランツがリクト暗殺未遂を認め、伏して謝罪した。
 だが、それは遅すぎる謝罪だ。
 謝罪とは時が過ぎれば、その意味を無くし、それだけでは済まなくなるものだ。

「で? 謝罪は言葉だけか? さっさと僕の言ったものを用意しろよ」

「フォルネア殿、それについては暫くの猶予をいただくわけにはいきませんか!? アマナ王国との戦いの前にフェンドラの力を削ぐは、同盟の力を削ぐと同じ! この戦いの後に改めて謝罪の場を設けさせてくださいませんか? さすれば……っ!」

「さすれば、なんだ? 一緒に戦った仲だから減刑? それとも力を得た後ならば私にも対抗できるとでも思っているのか?」

「そ、そのような事は考えておりません! ただ死力を尽くす戦いの前に戦力を削ぐのは良策とは言えないと申しているのです!」

「戦力を削ぐ? 笑わせるな。僕が本気になれば、力を得た後のお前達全員にも勝るぞ。逆に言えば、僕はリクトさえいればいいんだ。あいつが義理だ、恩だと言うから僕は付き合ってるだけ。お前達、同盟の事など知った事じゃないんだよ」

「そ、それは……」

 完全にグランツの負け、フェンドラの終わりだ。
 ここで力を得られなければ、アマナ王国との戦いで生き残れないだろうし、生き残ったとしても、帝国や共和国との戦力差が開いた状態では、立場は弱くなるだけだ。
 しかし、力を得るために必要なものが大きすぎる。
 それを差し出した時点でフェンドラは終わりだろう。
 どっちにしても、フェンドラは詰んだ。
 もはや無傷で乗り切る事は叶わない。
 叶うとすれば……
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