食うために軍人になりました【一人称版】

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第七章

仇敵

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「場の空気を変えるのに良いかと思っていましたが、さすがにやり過ぎです。ジェニングス中将、私的な話は後日としてください」

「うっ……醜態を晒して申し訳ありません、閣下」

 ウォーレイク閣下に諌められて、ジェニングス中将の顔が戻った。
 何かよくわからないが、助かった。
 いや、後から追求されるんだから怖いのが先送りになっただけか。
 うん、先の事は先の俺に任せるとしよう。
 それよりも、こいつに挨拶しておかないとな。

「あの時はどうも。変わりがないようで良かったよ。ルーストレームさん」

 俺は仇敵であるルーストレームに視線を向けた。
 3年前と容姿はまるで変わっていないが、あの時よりは強くなっている。
 もっとも今の俺と比べると差があり過ぎるけどね。

「ふふふっ、お久しぶりね。貴方は随分と
いい男になっちゃったじゃない。外見も強さも。『俺のものになれ』って言われたら、この場でも服従しちゃいそうだわ」

 勘弁してくれ。
 外見は美女でも、こんな危ない奴とずっと一緒にいるなんて気が休まる日が無くなってしまう。
 それに、ルーストレームは魔殻を破れば俺に匹敵する強さを得るだろう。
 そうなったら、どっちかが死ぬまで終わらない戦争が始まる。
 それだけは絶対に嫌だ。
 
「そんなに嫌そうな眼で見られたら、私だって傷つくわよ。今は同盟国のお仲間なんだから仲良くしましょ!」

「仲良くはともかく、貴女が魔殻を破って強くなれば戦力的には助かる。もちろん、魔殻を破った反動で死ななければの話だけど」

「あら? 心配してくれるの? ふふっ、優しいのね。大丈夫、貴方と同じ高みに昇って戦えるなら、私が何が何でも生にしがみつくから。たとえ、死神が引き剥がしにきてもね」

 不敵な笑みに背筋が寒くなる。
 相変わらず恐ろしい人だ。
 敵としてこれほど嫌な相手もいない。
 だけど、味方にすればこれほど安心できる相手もいない。
 今回の戦争では特にね。

「それで? 帝国で魔殻とやらを破って強くなったのは、そちらの中将さんだけかしら?」

「いや、中将とその部下が4名。それにバランディン、コクトー、テーニセンの3人だ。俺の使用人達も良い機会だから試させようかなと思っている」

「そう。フェンドラが海神十二将全員となると、共和国は私だけってわけにもいかないわね……ねぇ、サウデンベルクさん」

 ルーストレームは一緒に来た代議士であろう人に声をかけた。
 急に声をかけられて、少し驚いた顔をしていたが、すぐに取り繕えるあたりは流石と言うべきだろう。
 政をする者がこの程度で狼狽していては話にならないからね。

「私に何か?」

「残っている百勇士に声をかけられないか試してほしいの。第三席のダインは死んでも、第一席や第五席は生きてるわ。このままだと、戦争後に戦力差が開いちゃうわよ」

 確かにその通りだ。
 帝国は俺を含めると9人、使用人達も含めると15人になる。
 フェンドラは12人。
 戦争だから全員無事とはいかないだろうけど、共和国は今のままだとルーストレーム1人だけだ。
 戦争後の事を考えると、確かに戦力差はあるだろう。

「散り散りになっている彼らを集めるのは難しいと思いますが、やってみましょう。未来のために」

「お願いね。まぁ、駄目だったら私は帝国に付くだけだけど。そうならないように頑張ってね」

 ルーストレームが再び不敵な笑みを浮かべた。
 頑張ってくれ、代議士さん!
 本当に頼むよ!
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