食うために軍人になりました【一人称版】

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第七章

地獄の入り口

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「では、時間もありませんし、これで会談は終わりとしましょう。サンデンベルク殿は共和国に戻り、百勇士の残存兵力を集めてください。なるべく早く」

「わかりました。では、私はこれで失礼します。ルーストレームをよろしくお願いします」
 
 代議士は挨拶もそこそこに、すぐに部屋を出て行った。
 急ぐのも当然か。
 百勇士の残りが何人いるかわからないけど、とにかく急いで集めないと、アマナ王国が攻めてくるまでに間に合わない。
 俺達が耐えている間に使いもんになってくれたらいいんだけど。

「フェンドラの方々はどうされますか? 全員で自国戻られますか?」

「いえ、ここにいるガルヴァンとシラナは置いていき、儂だけが戻ります。王にも仔細を報告せねばなりませんゆえに」

「わかりました。では、ガルヴァン殿とシラナ殿は、私が責任を持ってお預かりいたします」

「かたじけないのである。では、儂もこれにて。ガルヴァン、シラナ。これよりはウォーレイク元帥の命で動くのである。余計な詮索は無用、ひたすらに強くなるのである」

「へっ! 強くなれるんなら誰にでも従うさ! 少なくとも今の俺じゃ、どうあってもそこの2人には敵わないだろうからな」

「私は戦いには向きませんが、力が増せば多くの人々を癒すこともできましょう。最善を尽くします」

 あのシスターっぽい人は1年前にも見たな。
 優れた回復者で厄介な相手だったけど、味方になれば心強い。
 あのガルヴァンとかいう大男の方は、何となくルーストレームの似た空気があるな。

「何かしら? 多分だけど、すごく失礼なこと考えてるわよね?」

 ルーストレームがキツい視線を俺に向けてきた。
 チラッと動いた視線の動きだけで、そこまで勘づくとは、相変わらず油断ならない奴だ。
 
「別に何も考えてないよ。それより、さっさと俺達も動いた方がいい。時間はないんだから」

「そうですね。シュナイデン中佐の言うとおりです。では、フォルネア殿お願い致します」

「はいはい、わかったよ。じゃあ、とりあえずそこの3人とリクトの使用人の魔殻を破る。あとは来たやつから順にやっていく。それと、すでに魔殻を破ってる5人は僕とリクトと戦闘訓練だ。いいな?」

「えっ? 俺もやるのか?」

 急な話に俺は戸惑った。
 てっきりフォルネアが全部やるもんだと思ってたのに、どういう事だ?

「人数が多いし、何より伸ばす方向性が違うからな。僕は魔法を使うやつを見るから、リクトは直接戦闘するやつを見ろ」

 って事は、俺はルーストレームとガルヴァン、それにアリシアとイリアで、フォルネアが中将とファンティーヌ、クリスティーヌ、シラナってわけか。
 ルーストレームと一緒ってのはあんまり気分が進まないなぁ。

「ちょっと……さっきから随分な扱いじゃない? お姉さん、悲しくなってきたわよ?」

 だから、気づくなって!
 勘が良すぎるだろうがっ!
 
「そこの女、無駄口をたたくな。これからは生命を賭けた修行となる。犬死にしたくなかったら気を抜かない事だ」

「あら、魔族さん。私もこれまで生温い生き方をして来たつもりはないのよ? 簡単に死ぬ気はないわ」

 ルーストレームが挑戦的な視線をフォルネアに向けた。
 あの視線は、魔眼か。
 魔族に通じるか試しているのかもしれんが、無駄な事だ。

「魔眼、か。その程度の魔眼など魔族にはそよ風程度にしか感じないぞ。本物の魔眼とは、こういうものだ!」

 フォルネアの瞳が怪しく光った。
 マズい!
 ここで躾けるつもりか!?

「ぐ……あ、がが……」

 白眼を見開き、口から涎を垂らしながら生気を失っていくルーストレーム。
 このままだと、ここで死ぬぞ!

「フォルネア!」

「わかってるよ。ほら」

 フォルネアがそう言うと、ルーストレームの身体は力なくその場に倒れた。
 髪が湿るほどの汗をかき、皮膚は土のように気持ち悪い色をしているが、何とか生きているようだ。
 フォルネアめ、ギリギリじゃないか。
 他の人達も完全に引いてるぞ。

「これでわかったかい? 君達が今から戦おうって奴等の力を。これから先は地獄だと思うんだね」

 鋭い眼つきに微笑を浮かべたフォルネアは、まさに地獄の鬼に見えた。
 実際、あの顔をしたフォルネアに俺は何度も殺されかけたからな。
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