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第七章
残りカス
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フォルネアの魔眼【重圧の魔眼】は肉体的、精神的に負荷を与える能力だ。
直接攻撃でもあり、精神攻撃でもあるから、回避するのは難しい。
はっきり言ってタチが悪い能力だよ。
「わ、私が回復を!」
ぐったりしたルーストレームに駆け寄ったシラナが慌てて回復魔法をかけたが、ルーストレームの状態は一向に回復する兆しを見せなかった。
「ど、どうして? 全力でやってるのに!」
「無駄だよ。魔眼に限らず、魔族の攻撃には魔力が込められているんだ。だから、攻撃を受けた者には魔力が少ないながらも残留するんだよ。その子が回復しないのは、その魔力が君の回復魔法を拒んでいるのさ。つまり、君の全力は僕の攻撃の残りカスより弱いってわけ」
「そんな……私はフェンドラ最高の魔力を……」
攻撃の残りカスより自分の全力が劣っていると言われたシラナはショックを受けていた。
気持ちはわかるけど、フェンドラ最高なんて自尊心は、さっさと捨てた方がいい。
魔族と人間の差はそれぐらい大きいんだ。
「残ってる全員で表に出てよ。どれくらい差があるか、先にその眼で見るといい」
「フォルネア!? まさか、ここで全力を出す気か?」
「そうだよ。君がね」
フォルネアは軽く俺にそう振った。
勝手に決められるのは癪だけど、少し安心もしている。
はっきり言って、こんな所でフォルネアが全力を出したら、俺には防ぎきれないからな。
「とにかく全員だ。他にも来ている奴がいるんだろ? そいつらも呼んで」
「わかりました。では、中将はあの4人を連れて外へお願いします。ガルヴァン殿とシラナ殿は私と一緒に外へ」
「じゃあ、僕も」
全員が外に出ていき、フォルネアも外に行こうとしたから慌てて止めた。
「おい! こっちはどうすんだよ?」
「おっと、忘れてた。さっさと起きてよ、お嬢ちゃん」
フォルネアがパチンと指を鳴らすと、ルーストレームの身体に淡い光が宿り、土気色だった皮膚に生気が蘇った。
「大丈夫か? ルーストレーム」
「うっ……あぁ、なんて無様なのかしら。情けないったらないわね」
「生きてただけ大したもんだよ。常人ならとっくに死んでる」
「慰めは無用よ。これじゃあ、役に立たないと言われても仕方ないわね」
あの自信と横暴の塊で戦闘狂のルーストレームが意気消沈している。
実力差を思い知らされて、完全に折れてしまったようだ。
そんな気持ちを知ってか知らずか、フォルネアがズカズカとやって来た。
「お目覚めはどう? お嬢ちゃん」
「ええ、最悪の目覚めだわ。ここまで実力差があるなんて……まるで悪夢みたい」
「それはご愁傷様。でも、今からちょっとした余興が始まるから表に出てよ」
「一体、何が始まるのかしら? 正直言って、これ以上の衝撃はキツいわよ」
「大丈夫。元気が出るものだから。ウチの相方が全力を見せるんだもん」
そう言われてルーストレームが俺の顔を覗き込む。
期待と不安が混じったような眼、ルーストレームには似合わないな。
「立てるんなら、さっさと行くぞ。時間がないんだから早く済ませたい」
「そうね。はっきり言って貴方との差を明確に見せつけられるのも嫌なんだけど」
「自分が到達しなきゃいけないところを見ておくのも大事だよ。ほら、手伝ってやるよ」
俺はルーストレームに肩をかして起こしてやった。
こんな事をする日が来るとは思わなかったよ。
「貴方、背が伸びたのね。近くで見ると、随分といい男になったじゃない」
「気持ち悪いからやめろ。ねっとり絡むな。鬱陶しい」
「あら? これでも黙ってればいい女ってよく言われるのよ?」
「じゃあ黙ってろ」
「狼狽えないのね。ふふっ、男としても成長してるってわけね。ますますいい感じ。本気で考えちゃおうかしら」
無駄に色気を撒き散らして、訳のわからない事を言うルーストレームを連れて、俺は外に向かった。
直接攻撃でもあり、精神攻撃でもあるから、回避するのは難しい。
はっきり言ってタチが悪い能力だよ。
「わ、私が回復を!」
ぐったりしたルーストレームに駆け寄ったシラナが慌てて回復魔法をかけたが、ルーストレームの状態は一向に回復する兆しを見せなかった。
「ど、どうして? 全力でやってるのに!」
「無駄だよ。魔眼に限らず、魔族の攻撃には魔力が込められているんだ。だから、攻撃を受けた者には魔力が少ないながらも残留するんだよ。その子が回復しないのは、その魔力が君の回復魔法を拒んでいるのさ。つまり、君の全力は僕の攻撃の残りカスより弱いってわけ」
「そんな……私はフェンドラ最高の魔力を……」
攻撃の残りカスより自分の全力が劣っていると言われたシラナはショックを受けていた。
気持ちはわかるけど、フェンドラ最高なんて自尊心は、さっさと捨てた方がいい。
魔族と人間の差はそれぐらい大きいんだ。
「残ってる全員で表に出てよ。どれくらい差があるか、先にその眼で見るといい」
「フォルネア!? まさか、ここで全力を出す気か?」
「そうだよ。君がね」
フォルネアは軽く俺にそう振った。
勝手に決められるのは癪だけど、少し安心もしている。
はっきり言って、こんな所でフォルネアが全力を出したら、俺には防ぎきれないからな。
「とにかく全員だ。他にも来ている奴がいるんだろ? そいつらも呼んで」
「わかりました。では、中将はあの4人を連れて外へお願いします。ガルヴァン殿とシラナ殿は私と一緒に外へ」
「じゃあ、僕も」
全員が外に出ていき、フォルネアも外に行こうとしたから慌てて止めた。
「おい! こっちはどうすんだよ?」
「おっと、忘れてた。さっさと起きてよ、お嬢ちゃん」
フォルネアがパチンと指を鳴らすと、ルーストレームの身体に淡い光が宿り、土気色だった皮膚に生気が蘇った。
「大丈夫か? ルーストレーム」
「うっ……あぁ、なんて無様なのかしら。情けないったらないわね」
「生きてただけ大したもんだよ。常人ならとっくに死んでる」
「慰めは無用よ。これじゃあ、役に立たないと言われても仕方ないわね」
あの自信と横暴の塊で戦闘狂のルーストレームが意気消沈している。
実力差を思い知らされて、完全に折れてしまったようだ。
そんな気持ちを知ってか知らずか、フォルネアがズカズカとやって来た。
「お目覚めはどう? お嬢ちゃん」
「ええ、最悪の目覚めだわ。ここまで実力差があるなんて……まるで悪夢みたい」
「それはご愁傷様。でも、今からちょっとした余興が始まるから表に出てよ」
「一体、何が始まるのかしら? 正直言って、これ以上の衝撃はキツいわよ」
「大丈夫。元気が出るものだから。ウチの相方が全力を見せるんだもん」
そう言われてルーストレームが俺の顔を覗き込む。
期待と不安が混じったような眼、ルーストレームには似合わないな。
「立てるんなら、さっさと行くぞ。時間がないんだから早く済ませたい」
「そうね。はっきり言って貴方との差を明確に見せつけられるのも嫌なんだけど」
「自分が到達しなきゃいけないところを見ておくのも大事だよ。ほら、手伝ってやるよ」
俺はルーストレームに肩をかして起こしてやった。
こんな事をする日が来るとは思わなかったよ。
「貴方、背が伸びたのね。近くで見ると、随分といい男になったじゃない」
「気持ち悪いからやめろ。ねっとり絡むな。鬱陶しい」
「あら? これでも黙ってればいい女ってよく言われるのよ?」
「じゃあ黙ってろ」
「狼狽えないのね。ふふっ、男としても成長してるってわけね。ますますいい感じ。本気で考えちゃおうかしら」
無駄に色気を撒き散らして、訳のわからない事を言うルーストレームを連れて、俺は外に向かった。
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