鑑定能力で恩を返す

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第一章

資産

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 エレンの頭上に不気味に燃え続けていた地獄の炎ヘルフレイムが徐々に小さくなって消えていった。
 そしてエレンはその場に跪いて、頭を垂れる。

「私の名はエレン。真名はエレオノーラ・ヴァン・ユラークと申します。ダンピールとしてジラノフ帝国のルドラド村に生を受け、116年の時が経っております。この度は私の呪いを解いていただいたことを深く感謝致しますと共に、数々の無礼をお許しください。もし、それが叶うなら私は終世、貴方様にお仕えする所存です」

 エレンは先程までの畏怖感は綺麗に消え去り、また不自然なまでの優雅な姿に戻っていた。
 
「ダンピールか。なるほどのぅ。その妖艶な美貌は何者かと思っておったが、納得じゃな」

「私の母がヴァンパイアでした。人である父を虜にするはずが自分が虜になってしまい普通に恋をして、私は産まれました」

「ヴァンパイア!? それって魔……」

「ヴァンパイアなど一部の魔物は《知性ある種族インテリジェンストライヴ》と言われ、人族とも普通に交流もするからのぅ。今時、人族とのハーフも珍しい事でないじゃろ。それに魔物モンスターと同一視するのは最大の侮辱となるから気をつけんとなぁ」

 サトは慌てて口を塞いだ。
 ロンメルのフォローがなければエレンの母親を侮辱するところだったからである。

「はい。私は母が私を孕ってからは血液を絶ってくれたおかげで、ヴァンパイア特有の血液摂取は必要なく、人族と同じ食事で事足ります。ご迷惑はおかけしません。何卒、お側にお仕えすることをお許しください」

 再び頭を下げて懇願するエレンに、サトは的外れな発言をした。

「側に仕えるって、ここで働きたいってこと?」

 サトの言葉にエレンは困惑し、ロンメルは溜息を漏らした。

「やれやれ。エレンさんや、こいつは世間知らずでな。堪忍してやってくれ」

「い、いえ、私は大丈夫です」

「サト。お前さんはエレンさんを奴隷として買ったんじゃぞ? つまり、エレンさんはお前さんの所有物であり、資産となるのじゃ。ロンメル商店で働きたいと言う意味ではなく、お前さんを主人として働かせてくれと言っておるんじゃよ」

「し、所有物? し、資産って! そ、そんな……」

「奴隷を買うとはそういう事じゃ。主人は奴隷の衣食住を保障し、代わりに奴隷は労働力を提供するんじゃよ。まぁ、お前さんの給金なら1人くらいは養っていけるじゃろう」

 サトは焦った。
 呪いをかけれた可哀想な魔物を解放してあげようと思っただけで、そんな事までは考えもしなかったのである。
 物を買う時売る時はその先まで考えてから決断しなければならない。
 サトはそれを見誤ったのである。
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