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第二章
エレンちゃん
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店じまいを済ませたロンメル商店内異様な緊張感に包まれていた。
その雰囲気を醸し出しているのは間違いなく、エレンと一緒に入ってきた女性だ。
透き通るような白い肌に均整のとれた手足、スラリとした身体には不釣り合いな程の豊かな胸と丸みを帯びたお尻。
しかし、その身体に纏う服はあまりにも少なかった。
「夜分遅くにごめんなさいね。どうしても貴方に会いたい気持ちを抑えきれなくて……」
「い、いえ……それはいいんですけど、その……」
露わな素肌を晒している女にサトは視線をどこに持っていけばいいかわからなかった。
身体を見るのが恥ずかしいなら顔を見ていればいいのだが、それすら出来なかった。
女は美しかった。
澄ましているとうっとりするような妖艶な色気を感じさせるが、口を開けばパッと華やかになり、天真爛漫な魅力を感じさせる不思議な女だった。
「私の名はリサ。真名を告げられなくてごめんなさいね」
「お、お気になさらず! サトと言います。と、とりあえずこちらをどうぞ。お口に合えばいいんですけど……」
サトはリサの前に紅い液体の入ったジュースの入ったグラスを置いた。
普通ならお茶を出すのだが、サトはこっちの方がいいと考えたのだ。
「クリムゾンブラッド……さすがエレンちゃんの主人さん、御心遣い痛み入りますわ」
リサはグラスをとって中身を口に運んでいく。
特別な行為ではないが、その姿すら妖艶で色っぽさを感じさせるので、サトは本当に目のやり場に困っていた。
視線を泳がせているとふと、エレンと目が合った。
だが、エレンはすぐに視線を逸らして俯いてしまう。
「あぁ、これはとても美味しいクリムゾンブラッドですね。正直、こんなに美味しい物は初めてです。どちらでお求めになったかお聞きしてもいいかしら?」
「いや、それは私の手作りでして販売はしてないんですよ」
「そうなんですか? こんなに美味しいのに……他の方のお口には合いませんの?」
「そうではありません。これはエレンさんのために作った物でして、販売するつもりはないんですよ」
クリムゾンブラッドは温暖地域である南方原産の果物であり、公都ハメルンまでは輸送に時間がかかるため、質の良い物は少なく、あったとしても高価だった。
サトはそのクリムゾンブラッドを自費で購入して、ジュースに加工してエレンに渡していたのである。
給金を受け取らないエレンに対するサトの心遣いだった。
「ふーん、なるほど……エレンちゃん、随分と大事にされているみたいね。私の魅了にもかからないし、意外と芯のある良い男じゃない」
「だ、だから最初からそう言ったでしょ? もういいでしょ? もうこの辺で……」
「うーん、まぁね~。そうだ! サトさんだっけ? 私のものになる気はない?」
「えっ? うっ……」
突然の申し出に呆気にとられるサトだったが、その後、急にサトの意識が遠のき始めた。
その雰囲気を醸し出しているのは間違いなく、エレンと一緒に入ってきた女性だ。
透き通るような白い肌に均整のとれた手足、スラリとした身体には不釣り合いな程の豊かな胸と丸みを帯びたお尻。
しかし、その身体に纏う服はあまりにも少なかった。
「夜分遅くにごめんなさいね。どうしても貴方に会いたい気持ちを抑えきれなくて……」
「い、いえ……それはいいんですけど、その……」
露わな素肌を晒している女にサトは視線をどこに持っていけばいいかわからなかった。
身体を見るのが恥ずかしいなら顔を見ていればいいのだが、それすら出来なかった。
女は美しかった。
澄ましているとうっとりするような妖艶な色気を感じさせるが、口を開けばパッと華やかになり、天真爛漫な魅力を感じさせる不思議な女だった。
「私の名はリサ。真名を告げられなくてごめんなさいね」
「お、お気になさらず! サトと言います。と、とりあえずこちらをどうぞ。お口に合えばいいんですけど……」
サトはリサの前に紅い液体の入ったジュースの入ったグラスを置いた。
普通ならお茶を出すのだが、サトはこっちの方がいいと考えたのだ。
「クリムゾンブラッド……さすがエレンちゃんの主人さん、御心遣い痛み入りますわ」
リサはグラスをとって中身を口に運んでいく。
特別な行為ではないが、その姿すら妖艶で色っぽさを感じさせるので、サトは本当に目のやり場に困っていた。
視線を泳がせているとふと、エレンと目が合った。
だが、エレンはすぐに視線を逸らして俯いてしまう。
「あぁ、これはとても美味しいクリムゾンブラッドですね。正直、こんなに美味しい物は初めてです。どちらでお求めになったかお聞きしてもいいかしら?」
「いや、それは私の手作りでして販売はしてないんですよ」
「そうなんですか? こんなに美味しいのに……他の方のお口には合いませんの?」
「そうではありません。これはエレンさんのために作った物でして、販売するつもりはないんですよ」
クリムゾンブラッドは温暖地域である南方原産の果物であり、公都ハメルンまでは輸送に時間がかかるため、質の良い物は少なく、あったとしても高価だった。
サトはそのクリムゾンブラッドを自費で購入して、ジュースに加工してエレンに渡していたのである。
給金を受け取らないエレンに対するサトの心遣いだった。
「ふーん、なるほど……エレンちゃん、随分と大事にされているみたいね。私の魅了にもかからないし、意外と芯のある良い男じゃない」
「だ、だから最初からそう言ったでしょ? もういいでしょ? もうこの辺で……」
「うーん、まぁね~。そうだ! サトさんだっけ? 私のものになる気はない?」
「えっ? うっ……」
突然の申し出に呆気にとられるサトだったが、その後、急にサトの意識が遠のき始めた。
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