ステータス最弱かつ瀕死状態で転生した私は、異世界最強で最恐で最凶の森で生き延びます。

鮒捌ケコラ

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7.夢か現か

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 だが、その日に熟睡する事はなかった。

「(ジルジルジルジルジルジル)……!!」

 なんだ!?これは一体何の悪夢だ!?

「(ゴギッガキガキゴキキッ)……っ!!」

 それは、私が経験したどの拷問によるものとも異なる。もっと高次的な何かだった。

 全身が熱く、痛い。

 身体中の血肉と骨をミキサーにかけられて、こねまくられているかの様だ。

 何より、全然夢から醒めない。これまでの悪夢とはまるで違う。

 そのまま、悪夢は朝まで続いた。


「(ムクッ)……夢……だよな?」

 ここは廃村の小屋。昨日、色々あったから早く寝る為にここに泊まった。

 だが、熟睡出来ずに本末転倒だ。

「……戻るか。」

 ここじゃダメだ。とりあえず、森の小屋に戻って療養しよう。プヨが待ってるしな。

 あれこれ考えるのは、ちゃんと寝てからだ。

「……着いた。」

 ひとまず、森の入り口に着いた。さっさと小屋に戻ろう。

「(ザッザッザッザッ)」

 それにしても、昨日の子……明らかにわたしに対して何かを隠している。

 けど、敵対って感じではない。敵対じゃないなら、隠さなきゃならない理由って?

“「(ウゴォォォォッ)」“

 そもそも、あの剣を捌いた技術だって、一丁一石で身につくものじゃないだろう。一体何処で身に付けたってんだ?

“「ガルルルルルァッ!!(ガッ)……ガウ?」“

 それに、どうにも昔から私を知っているかの様な口ぶりだった。初対面は、1ヶ月前にほんの数分だけだったよな?

"「ガウガウッ(シャシャシャッ)ガウッ!?」“

 あいつは一体、何を隠して……

“「ガォォォォォォッ!!」“
「(ゴズッ)」
“「フゴッ!?」"

 裏拳で一撃かます。

「うるっさいなぁ!さっきから!」
"「フ…ゴ……(クラァァ)」
「少し黙れ!考え事しんてんだよ!!」

 全く、騒がしいクマだ………クマ?

「えっ!?」
“「(ドスンッ)………」“

 クマが…全長3メートルくらいのクマが横たわっていた。

 ……おかしいな。この辺にはクマどころか、獣すら居なかったはずだけど。

 ……たまたま?

 いや、1年近く見かけなかったのに今日に限ってというのは不自然か。

 ……現実逃避はやめよう。まず、現況の整理だ。

 昨日、カイルと接触してから、周囲も自身も色々と変化している。

 体が引くぐらい軽いし、気分もすこぶる良い。

 なんか、病み上がりでふわふわとしているみたいだ。

 いわゆる無敵感って奴だろうか?

 そして……こんなクマを瞬殺出来る程の怪力に目覚め……目覚めたって言って良いのか?このクマが弱いとかじゃなくて?

「って……あれ?もしかして、これって…………お肉確保?」

 熊肉って、確か食えるよな?

 ツキノワグマとかヒグマも食べられるらしいし。

 ……食べた事ないけど。

「……よし!」

 取り敢えず、持って帰ろう。

「(ヒョイッ)……あぁ、やっぱり軽いな。」

 熊を担ぎ、家へ運ぶ。今となっては棚ぼた展開だ。ありがたいな。

“「グォォォッ!!」"
「………」

 棚ぼた………?

ー1時間後

「さて……どうしたもんか?」

 しっかり焼く?炙る?煮込むのも良いな。刺身はどうだろう?葉っぱで包んで蒸し焼きとか?……よだれが止まらないな。

 まあ、とりあえずブロックに切り分けて……………

「………(ガシッ)」

 料理するのも、まどろっこしいな。

「(ビリビリビリッ)」

 おぉ、案外簡単に剥けるもんだな。

「……(ジュルリ)」

 まぁ、新鮮だし、馬刺しと同じだよな?

「(ガッ)」

 齧り付く。

「…(グイッ)!(ブチチッ)」

 予想通り、食い千切れた。

「(バクッ)……(モグモグモグ)………」

 思ったより、血生臭くないな。新鮮だからか?

「(モグモグモグ……ゴクンッ)」

 案外いけるな。生の熊肉。けど…

「………」

 ………やばいなこれは。

 人間として相当やばい。

「(ガツガツガツガツガツガツガツガツガツ)」

 美味すぎる。止まらない。

 何だこれ。焼いたり煮込んだりするのが蛇足に感じるくらい美味い。

 文明の利器に頼る気が起こらなくなるから、文化人として危ない気がする。

「(ゴクリッ)……ケポッ……」

 とかなんとかしてる間に、熊肉を完食した。

 そもそもわたしって、こんなに大食漢だったっけ?

「…………」

 あれだけ大量の肉を食ったのに、まだまだ食べられそうだ。

 そもそも、あの大量の肉は、私の腹の何処に消えたんだよ。

 当初は、あの熊肉を保存食にしようと考えていた。

 まさか全部食べ切るとは思わなかったよ。

 ただ、しばらく肉に困る事は無さそうだ。

「(ガチャッ)」

 何故なら……

〈(デンッ)〉

「………圧巻だな。」

 扉の前には屍の山。

 帰りの道中でこの熊を狙って襲いかかって来た獣達だ。

 全て一撃で仕留められた。

 だから、熊の1匹くらい食べ切っても問題ない。

 そして不思議な事に、熊を狙っていた獣達もこの家の近辺まで来ると引き返していった。

 現に、こうして大量の肉が放置されていても、近寄って来ようともしない。

「……忌避剤でも撒いてあるのか?」

 こうして見てみると、色んな奴が居るな。

 猪や鼠、蛇にトカゲ、こいつは…野鶏か?どっかで見た様な鳥も居るな。

 そして…そのどれもこれもが………もれなく全てデカい。

 1m越えの大物ばかりで、私より小さな獲物が居ないな。

「………さて、始めるか。」

 保存を考えて、干物か燻製にした方が良いな。

 これから忙しくなる。



ー数時間後

「……ふぅ。終わった。」

 勢い余って干物小屋と燻製小屋も作った。

 簡素な作りだけど、雨ざらしにならないだけ十分だろう。

 近くに木が沢山あって良かったな。素手でも簡単に折れる木だから、耐久性が少し不安だけど。

 とりあえず、小屋ごと燻製してそのまま貯蔵庫にした。

 今日はもう寝よう。

“「(チョンチョン)」“
「……ん?」
“「(プルンッ)」“
「よぉ、プヨ。どうした?」
“「(ツイツイッ)」“

 包帯の切れ端をついばんでいる。

「……あぁ、そうだ。包帯を取り替えないとな。」

 昨日は包帯を撒き直さずに直ぐに寝たからな。……寝れなかったけど。

 さっさと取り替えてしまおう。

 洗面台へと向かう。

 それにしてもあいつ、この姿を見ても全然普通に対応してくれてたな。

「(シュルルル)……ま、そういうこともあるか。」

 それより、今日は何だか……いつもよりベタつくな。

 しっかり洗っとかないと。

「(バシャバシャバシャッ)」

 せめて、包帯の下がもう少しまともなら情報収集も……って、あれ?手触りが……違う?

「(パチッ)?」

 鏡を見た。

「(ポタ…ポタ…)…………は?」

 そして……余計にわからなくなった。

「(ペタペタペタ……)」

 顔の傷が、綺麗に塞がっていた。

「(バサッ……シュルシュルシュル…)」

 衣服と包帯を取り、全身の傷も見てみる。

「っ!!」

 流石に縫合した傷跡は残っているが、血が滲んでいる感じはない。

 肌の色は、若干白いが…まぁ以前よりは健康的に見える。

 それどころか、体の内と外の不調が無くなっていた。

 あの人の薬でも、出来て不調を抑える所までだった。

 今は意識が充分に覚醒している。している筈だ。

 だが………昨日から、あまりにも現実離れした出来事が重なっている。

 昨日は少年が暴漢を瞬殺して、質問されて、抱きつかれて、突き飛ばして……

 今日は森でクマに襲われて、クマを瞬殺して、その肉を喰らって、小屋を建てて捌きまくって……

 何より、現在も独特の浮遊感が続いていて、どうにも現実味を感じない。

「………」

 なるほど。多分、これ夢だ。

 例の少年と出会った辺りから夢なのかもしれないな。

「よし、寝よう。」

 こういう場合は、寝たら覚める。

 さっさと寝て目を覚そう。
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