猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

文字の大きさ
88 / 89
ロング帝国 ルーク

31話

しおりを挟む



「んんー、なんか眠くなってきた……」

プリンを食べ終えたハルは、伸びをしてからまた机に突っ伏した。

〔ハル、寝るのは良いんだけど、明日シキ振る時に使うのにホルダー作っとく?〕
「あっ!忘れてた……。お願いしていい?」
〔もちろん。刀用のホルダーだけ貸して。やっとくから寝る準備してな。あとで確認してもらうから。〕
「はーい。」

ハルは、突っ伏していた体勢から起き出し、腰に付けているホルダーを外した。

「刀はー?」
〔シキと一緒にそこ置いといて。入れた時に当たらないかとか確認したいから。〕
「わかったー」

刀とシキもホルダーの近くに置いた。

寝る時用にと神域に居る時に作ってくれた服に着替えたハルは、脱いだ服を綺麗に畳んで服だけにクリーンを掛けた。

「よし」

寝る準備を終わらせたハルは、ベッドに座ってアキの作業を見ていた。


アキは、ホルダーを見ながら考えていた。

(うーん、刀を通す輪っかの下にもう1つ輪っかを付けると重くなりそうだよな……。輪っかの横に輪っかを付けるか?でも、ハルの重心がズレるか……?両側に輪っかを付けて……、いや、銃のホルダーも脇に付けてるんだから両側はやっぱり邪魔か…………、うーん……。やっぱり輪っかの横に輪っかを付けるか。)

アキは、インベントリからブラックベアーの皮とシルバースパイダーの糸を出して縫い付けていった。

〔うーん……〕
「アキちゃん?」
〔あ、ハル、とりあえず付けてみたから付けて少し動いてみて。動きずらそうだったら言って。調整するから。〕
「わかった」

ハルは、ベッドから降りてズボンだけ履き替えてホルダーを腰に巻いてみた。

「うーん、」
〔どうした?〕
「あ、いや」
〔言って。修正するから。〕
「うん。少し動きずらいかも。」
〔そっか〕
「あと、」
〔ん?〕
「右側にホルダー付けてたんだけど、左側に付けて右手で抜く方が抜きやすいかも……?」
〔あー、ハル右利きだもんね。ずっと使いずらかった?〕
「ううん、そんな事ないんだけど、」
〔そっか…………、背負うんだとリュックが邪魔になるもんね……。どうしようかな……〕
「ん?左側に付けるんじゃダメなの?」
〔あ、いや別に良いんだけど、左脇に銃入れてるでしょ。どっちも左側じゃ邪魔じゃない?〕
「あー、…………あ、じゃあ、銃を腰の後ろ側に持ってきて刀を左側に持ってくるのはどう?」
〔あー、それなら良いかも。銃のホルダーも貸して。直す。〕
「はい。お願いします。」
〔うん〕

方向性が決まったからなのかそれからアキは、無言で調整などをして直した。

〔ふぅ、ハルお待たせ。付けてみて。〕
「うん。」

ハルは結局森の中を歩いてた時に着ていた黒い服に着替えた。

〔なんでその服なの?〕
「え、冒険者として森に行く時はこの格好かなって思って。ならこれを着た状態で付けて動いた方が分かるかと思って。」
〔なるほど〕

ハルが机の近くに立った為、机に新しく作ったベルトと修正したホルダーを置いた。

「これ?」
〔うん。〕
「どう付けるの?」
〔そのズボンだと、腰の所に等間隔に輪っかが着いてるでしょ。〕

アキに言われて良く確認すると、腰を囲うように7ヶ所に輪っかが付いていた。

「ん?……あ、ほんとだ。知らなかった。」
〔そこにこのベルトって言うんだけど、この長い皮を入れて。〕
「えっと、どっちから?」
〔ハル、時計の文字盤思い浮かべて。〕
「うん?うん。」
〔ハルのおへそが12時だとすると、1時の所から金具が無い方から入れて。〕
「うん、入れたよ。」
〔そしたら、2時と4時の位置の輪っかにもそのまま通して。〕
「うん、背中の方見えないけど入ってる?」
〔うん。大丈夫。ちゃんと入ってるよ。
そこまで入れてから銃のホルダー、ベルトに通せるように輪っか付けたから取ってがハルの手の方に向くように入れて。〕
「う、うーん……、で、出来ないー」
〔大丈夫。ちゃんと入ったよ。〕
「え、ほんと?」
〔うん。触ってみな。落とさないようにね。〕

ハルは、通しているベルトの先を左手でしっかりと持ちながら右手で触ってみた。

「あ、ほんとだちゃんと入ってる。」
〔それなら取りやすいでしょ?〕
「うん。」
〔そしたら、6時の位置にベルトの先入れて。〕
「え、そうすると銃のホルダー取れなくなっちゃうよ。」
〔だから動いても大丈夫でしょ。外す時は、ベルトを抜けば一緒に取れるから〕
「んー…………、あ、なるほど、わかった。」
〔良かった。で、そのまま8時の位置を通してから、この刀用のホルダーを通して。〕
「うん。」

自分の視界に入ってきたからなのか、さっきよりスムーズに入れることが出来た。

〔で、10時と11時の位置の輪っかを通して最後に金具に輪っかと針みたいの付いてるでしょ。〕
「うん。」
〔まず、輪っかに通して〕
「うん。」
〔キツ過ぎず緩すぎないようにキュッてして。〕
「キュッ、こんな感じ?」
〔お腹苦しくない?〕
「うん。大丈夫。」
〔なら、皮に何個か穴を開けてあるからその穴に針みたいの通して〕
「ううーん、こう、かな……?」
〔うん。いい感じ。邪魔な部分は、輪っかに通しちゃっていいよ。〕
「うーん、しょっと。……出来た?」
〔うん。どお?刀とシキ挿して少し動いてみて〕

ワタワタしながらなんとかベルトを通した。
ホルダーに刀とシキを挿して軽く動いてみた。

「うん。結構動きやすい。明日、試してみて馴染むといい感じかも。」
〔ほっ、なら良かった……。じゃあ、二度手間になっちゃったけど、また寝る準備して。〕
「うん。アキちゃん、ワガママ聞いてくれてありがとう。」
〔いえいえ、こちらこそ何回も着替えさせちゃってごめんね。〕
「ううん。大丈夫。でも、明日一人で付けられなさそうだから手伝って?」
〔もちろん。〕

ハルはまた寝る準備をするとアキを抱っこしてベッドに入り、眠りについた。

「アキちゃん、おやすみ……」
〔おやすみ。〕


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊
ファンタジー
魔力不足でお城が崩れる!? 貴族が足りなくて領地が回らない!? ――そんなギリギリすぎる領地を任された転生令嬢。 現代知識と少しの魔法で次々と改革を進めるけれど、 なぜか周囲を巻き込みながら大騒動に発展していく。 「領地再建」も「恋」も、予想外の展開ばかり!? 没落領地から始まる、波乱と笑いのファンタジー開幕! ※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...