魔女の私と聖女と呼ばれる妹〜隣国の王子様は魔女の方がお好きみたいです?!〜

海空里和

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7.王子様の想い人は

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「オリヴァー殿下は、オスタシスとロズイエを行き来なされていました。オスタシスで出会った平民と結婚したいと言い出されたのは二年前……」
「まあ! お相手はオスタシスの方なのね!」

 私の『ロズイエ平民計画』を意気揚々とロジャーに語った後。彼は、ため息をついたかと思うと、オリヴァー殿下のことを話し出してくれた。

「陛下は、ロズイエに功績をもたらしたら許可すると条件を出されました」
「うんうん」

 王子様とのロマンスなんて、おとぎ話みたい!

 興味津々に聞いていると、ロジャーは戸惑い顔になった。

「……殿下は、一年でその功績を出し始められ、軌道に乗られたまさに今、再び陛下の許しをいただこうとしていた所でした。オスタシスにいる間に……」
「そこに私の結婚話が決まってしまったのね!」
「……そうです」

 そっか、そっか。タイミングが悪かったのね。

 話を聞いた私は納得した。

「あの……お怒りにならないんですか?」
「どうして?」

 うんうん頷いていた私に、ロジャーは恐る恐る尋ねてきた。

 ティナは許せない、と言っていたけど。

「私はハーブに携わって生きていけたら良いし、オリヴァー殿下には好きな方と幸せになって欲しいと思うわ」
「あなたは自国の王子にも婚約破棄をされたのに、何でそんなに……」

 ロジャーはそこまで言いかけて、はっと身を固くした。

「すみません…、軽率なことを言いました」
「ううん、気にしてないわ」

 俯くロジャーに私は笑いかけた。

「だから、お飾りの妃でいるより、私はロズイエの国民として生きていきたいの」
「……ロズイエの国王陛下がお許しになるかわかりませんが……。私もあなたの夢に尽力いたしましょう」
「ほんと?!」

 ロジャーは穏やかな顔のまま、唇で弧を描いた。

「でもロジャーはオリヴァー殿下付なんでしょ?良いの?」
「私も殿下には幸せになって欲しいと思っていました。そして今、私はエルダー様、貴方にも幸せになって欲しいと思ったのです」
「ロジャー……」

 今日出会ったばかりのこの人は、たった数時間、この馬車で一緒に過ごしただけで私の幸せを願ってくれている。

 何て良い人なんだろう。

 この人が仕えるオリヴァー殿下もきっと良い人に違いない。

 ロジャーも力を貸してくれれば、殿下と二人、お互いの幸せのために歩み寄れるかもしれない!

 自立への道が見えてきて、私は俄然やる気に満ち溢れていた。

「殿下は一足早くロズイエに向かわれています。エルダー様がご到着される頃には王城にいらっしゃるでしょう」
「じゃあ、皆の幸せのために、一度話し合わないとね!」
「私も間に入りましょう」

 すっかり打ち解けた私たちは、協定を結んだ。

 そうして、ロズイエ王国への五日の旅路は期待に満ちて終えたのだった。

◇◇◇

「お疲れ様でした」

 ロズイエ王国の王城にたどり着いた私は、ロジャーに導かれ、馬車を降りる。

「うわあ………!」

 ロズイエの王城はオスタシスよりも大きく、荘厳だった。何よりも私の目を引いたのが。

「素敵!! 薔薇がこんなに?!」

 馬車停めの大きな広場から見える庭園に私は胸を踊らせた。

「赤とピンクのがあるのね」
「気に入った?」

 私が薔薇に見入っていると、後ろから女の人の声が聞こえた。

 振り返ると、上品なドレスを纏い、ティアラを頭に掲げた女性が立っていた。

「王妃殿下……!」

 私の側に控えていたロジャーがすかさず跪いた。

 この国の王妃様……!つまりはオリヴァー殿下のお母様。

 私も慌てて深く礼をする。

「良いのよ、楽にして」

 優しい声の王妃様は、私の側に歩み寄ると、そっと肩を抱き、顔を上げさせてくれた。

「ありがとう、この国に来てくれて」

 優しく微笑むその顔に、思わず私は母を重ねてしまった。

 ぽーっとする私に、王妃様は優しい笑顔のまま続けた。

「私、オスタシスの王太后様とは仲良くさせていただいていたのよ」
「王太后様と……」

 私とジェム殿下の婚約を強く推して取りなしてくださったお方。

 ロズイエの王妃様と懇意にされていたなんて。

 確かに王太后様がご健在の時はロズイエとのハーブの貿易が盛んだった。

「聖女の力とハーブを調合する者。それは切っては切れない関係で、王太后様も重要視されていたのに、オスタシスが貴方のような人材を手放すなんて信じられなかったわ」

 王妃様は頬に手を当て、こちらを見た。

 聖女の力と私の力にどんな関係性があるのだろうか。

 私は自分の知らない事実に、王妃様の次の言葉を待った。

 そんな真剣な顔の私を、王妃様はふふ、といたずらっぽく笑って見た。

「ハーブを調合する者も、この国では『聖女』と呼ばれるのよ。あなたは歓迎されているわ」

 私が、聖女……?  

 側で跪いていたロジャーを振り返れば、彼は無言のまま頷いた。

 私が何故この国の王家に迎え入れられたのかを初めて理解した。

「金銭のやり取りなんかで嫁ぐ形になってしまって、気分を悪くしないでね。代わりにロズイエは、あなたを大切にするわ」

 私を真っ直ぐに見て、王妃様は微笑んだ。

 歓迎されているのは素直に嬉しい。

 でも、ロジャーの言う通り、これは離縁してもらって一国民として生きていきたい、なんて、許してもらえないかも……?!
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