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「よく来たな」
私は、あのまま王妃様に連れられて謁見の間にやって来て、国王陛下に挨拶をしている。
王妃様同様、優しい顔を向けてくれ、歓迎されているのが伝わる。
「……すでに耳に入っていると思うが、我が愚息のことだ」
もしかして、と思うのと同時に、陛下は険しい顔で続けた。
「隣国の平民と一緒になりたいと言い出してな……。無理だと思っていた条件を成してみせた」
はい。知っています。道中、ロジャーから聞きました。
「しかし、そなたとの約束が先だ。私は認めるつもりは無い。この国は一夫一妻制だし、王家の者が愛人を持つという下品なこともしない。安心しなさい」
「は、はあ……」
「聖女を迎えられたのは王家として喜ばしいこと! 安心してこの国で生きていきなさい!」
ガハハ、と陛下は笑った。
『聖女』と言われることに、未だにピンと来ない私は、作り笑いで応えた。
しかし、困った。
やはり国王陛下は認めるつもりは無いらしい。
この国を思ってのことだし、大金を払ってまで私を迎えたのだ。聖女らしい私を市井に放り出す真似はしないだろう。
オリヴァー殿下も、王家の人間としてこの結婚を受け入れるのが正しいのだろう。
でも、私はそんなのは嫌だ。
いつか好きになってもらえるように、なんておこがましい考えだ。それが、好きな相手がいる人ならなおさら。
これは、殿下とちゃんと計画を立てないと。
私がそんなことを考えていると、陛下からは非情な言葉が降り注いだ。
「明日、結婚式を執り行う。それまで、我が愚息は部屋に閉じ込めておくように。良いな、ロジャー」
私の後ろに控えていたロジャーが、「はっ」と返事をするのが聞こえた。
どうやら、結婚式までオリヴァー殿下とはお会い出来ないらしい。
陛下との謁見を終えた私は、すぐにある所に案内されることになった。
「わあ……」
通された部屋には、ずらりとハーブの瓶が並んでいた。
私のお店の倍はある広さに、思わず目を瞬く。
色とりどりのハーブを一つ一つ見ていくと、どれも品質の良いもの。流石ロズイエ。
私が目を輝かせて見て歩いていると、王妃様が顔をのぞかせた。
「ふふ。薔薇に続いて、気に入った?」
「はい!」
大好きなハーブに囲まれた私は興奮して返事をする。
「ここは、あなたのために作らせた調合室よ。依頼をもちろんこなして欲しいけど、好きに使ってね?」
「私の……調合室……」
こんな立派な?!
王妃様の言葉に、信じられない!と目を瞬いていると、ふわりと私の頬に、王妃様の手が添えられた。
「オリヴァーは悪い子ではないのよ。ただ、真っ直ぐすぎるというか……」
王妃様は私のことを気にしてくれているようだった。
とってもありがたい!!
いえ、私は気にしてません!
……そんなことを言えるわけもなく。
私はにっこりと王妃様に無言で返した。
「ふふ。あなたとオリヴァーは気が合うと思うのだけどね」
またいたずらっぽく王妃様は笑うと、「またね」と言って、その場を去って行った。
王妃様の余韻を辿り、しばらくぽーっとしていた私は、はっと我に返る。
「ロジャー、あなたはオリヴァー殿下とはお会い出来るのよね?」
「はい」
そうだ!明日の結婚式までに、殿下に私の意思を伝えないと!
「手紙を書くから、届けてくれる?」
「かしこまりました」
私はこの国に歓迎されて嬉しいし、役に立ちたい。
でも、それとオリヴァー殿下の幸せを犠牲にするのとは違うと思う。
だから私は私の出来ることをしたい。
そう思った私は、ロジャーに手紙を託すことにした。
『初めましてオリヴァー殿下
私は、あなたと想い人が結ばれるようにお祈りしております。国同士の取引な以上、私との結婚は致し方ないとは思いますが、私はあなたにその犠牲になって欲しくないと思っています。しばらくはお飾りの妃として私も努めます。殿下も愛していない妻などお嫌でしょうが、形だけですのでどうかご容赦ください。いつか、真実の相手との結婚が認められた時には、私は身を引くつもりでいます。むしろ、引かせてください。私は一国民として、この国で生きていきたいのです。聖女としての責務があるならばもちろん果たします。だからどうか、その時が来たらご助力をお願いいたします。 エルダー・ジンセン』
私は、あのまま王妃様に連れられて謁見の間にやって来て、国王陛下に挨拶をしている。
王妃様同様、優しい顔を向けてくれ、歓迎されているのが伝わる。
「……すでに耳に入っていると思うが、我が愚息のことだ」
もしかして、と思うのと同時に、陛下は険しい顔で続けた。
「隣国の平民と一緒になりたいと言い出してな……。無理だと思っていた条件を成してみせた」
はい。知っています。道中、ロジャーから聞きました。
「しかし、そなたとの約束が先だ。私は認めるつもりは無い。この国は一夫一妻制だし、王家の者が愛人を持つという下品なこともしない。安心しなさい」
「は、はあ……」
「聖女を迎えられたのは王家として喜ばしいこと! 安心してこの国で生きていきなさい!」
ガハハ、と陛下は笑った。
『聖女』と言われることに、未だにピンと来ない私は、作り笑いで応えた。
しかし、困った。
やはり国王陛下は認めるつもりは無いらしい。
この国を思ってのことだし、大金を払ってまで私を迎えたのだ。聖女らしい私を市井に放り出す真似はしないだろう。
オリヴァー殿下も、王家の人間としてこの結婚を受け入れるのが正しいのだろう。
でも、私はそんなのは嫌だ。
いつか好きになってもらえるように、なんておこがましい考えだ。それが、好きな相手がいる人ならなおさら。
これは、殿下とちゃんと計画を立てないと。
私がそんなことを考えていると、陛下からは非情な言葉が降り注いだ。
「明日、結婚式を執り行う。それまで、我が愚息は部屋に閉じ込めておくように。良いな、ロジャー」
私の後ろに控えていたロジャーが、「はっ」と返事をするのが聞こえた。
どうやら、結婚式までオリヴァー殿下とはお会い出来ないらしい。
陛下との謁見を終えた私は、すぐにある所に案内されることになった。
「わあ……」
通された部屋には、ずらりとハーブの瓶が並んでいた。
私のお店の倍はある広さに、思わず目を瞬く。
色とりどりのハーブを一つ一つ見ていくと、どれも品質の良いもの。流石ロズイエ。
私が目を輝かせて見て歩いていると、王妃様が顔をのぞかせた。
「ふふ。薔薇に続いて、気に入った?」
「はい!」
大好きなハーブに囲まれた私は興奮して返事をする。
「ここは、あなたのために作らせた調合室よ。依頼をもちろんこなして欲しいけど、好きに使ってね?」
「私の……調合室……」
こんな立派な?!
王妃様の言葉に、信じられない!と目を瞬いていると、ふわりと私の頬に、王妃様の手が添えられた。
「オリヴァーは悪い子ではないのよ。ただ、真っ直ぐすぎるというか……」
王妃様は私のことを気にしてくれているようだった。
とってもありがたい!!
いえ、私は気にしてません!
……そんなことを言えるわけもなく。
私はにっこりと王妃様に無言で返した。
「ふふ。あなたとオリヴァーは気が合うと思うのだけどね」
またいたずらっぽく王妃様は笑うと、「またね」と言って、その場を去って行った。
王妃様の余韻を辿り、しばらくぽーっとしていた私は、はっと我に返る。
「ロジャー、あなたはオリヴァー殿下とはお会い出来るのよね?」
「はい」
そうだ!明日の結婚式までに、殿下に私の意思を伝えないと!
「手紙を書くから、届けてくれる?」
「かしこまりました」
私はこの国に歓迎されて嬉しいし、役に立ちたい。
でも、それとオリヴァー殿下の幸せを犠牲にするのとは違うと思う。
だから私は私の出来ることをしたい。
そう思った私は、ロジャーに手紙を託すことにした。
『初めましてオリヴァー殿下
私は、あなたと想い人が結ばれるようにお祈りしております。国同士の取引な以上、私との結婚は致し方ないとは思いますが、私はあなたにその犠牲になって欲しくないと思っています。しばらくはお飾りの妃として私も努めます。殿下も愛していない妻などお嫌でしょうが、形だけですのでどうかご容赦ください。いつか、真実の相手との結婚が認められた時には、私は身を引くつもりでいます。むしろ、引かせてください。私は一国民として、この国で生きていきたいのです。聖女としての責務があるならばもちろん果たします。だからどうか、その時が来たらご助力をお願いいたします。 エルダー・ジンセン』
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