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「エルダー様、これは…」
「はい、それは…」
結婚式の翌日から、私は調合室にいた。
「新婚さんなのにごめんなさいねええ」
さっきまで調合室にいたお義母様は、公務で呼ばれて残念そうに向かわれて行った。
夏が終わろうとするこのロズイエ王国では、冬に向けて流行する伝染病の対策をこの季節から始めるらしい。
ハーブは継続的に摂取してこそ効果がもたらされるので、理にかなっている。
ロズイエではちゃんとハーブティーが重要視されているのは本当だったんだ。
ロズイエではオスタシスの調合ハーブの輸入が止まってから、在庫を何とか回していたらしく、今年度はすっからかんの所に、私がやって来た。
そういうわけで、大急ぎでハーブの調合が必要というわけで、私は調合室に籠もっていた。
オスタシスではティナの癒やしの力に皆群がってしまう。ハーブはすっかり必要とされなくなっていたので、久しぶりにこんなに調合を求められて腕が鳴る。
「エルダー様、これは同じではないんですか?」
「はい、子供用に苦くないものと分けてあります」
「そんなことも出来るのですね……!」
お義母様が手配してくれた助手の皆さんとこの調合室で一日中ハーブに囲まれている。
ちなみに、この国にはお義母様の他に、ティナと同じ『聖女』がもう一人いる。第一王子のお妃様だとか。三人も聖女がいるので、皆様には名前で呼ばれている。その聖女様は、今はご出産の準備中ということで、お会い出来ていない。
幸せ!!!!
良質なロズイエのハーブを好きなように調合出来て、国民の皆様のお役に立てる!!
何て幸せなの!!
「そういえば、オリヴァー殿下が城下にハーブティーのお店を開かれたそうで」
助手の一人が、『サンブカ』のお店を話題に出して、ドキリとする。
そうだ、エミリーは上手くやっているかしら?この三日、調合室のハーブに夢中で……
「薔薇の店ではないのか?」
「それが、オスタシスからスカウトして連れて来た店らしく……」
「この国にハーブティーがもたらされるのは良いことだ!」
「そうだな、エルダー様も来てくださり、この国は安泰だ」
助手の二人が嬉しそうに話している。
うう、その店の人と私は同一人物なんです……。
とにかく一度、王宮を抜け出してお店の様子を見に行かないと……。
「エルダー様」
ハーブを調合しながら、どうしようかと考えていると、ロジャーが調合室に入ってきた。
「ロジャー! どうしたの?」
オリヴァー殿下付きの彼も忙しくしていて、結婚式以来顔を合わせていなかった。
「今日よりあなたに付くよう、殿下に言われて参りました」
「殿下が……」
大切な側近を私に寄越してくれるなんて。
オリヴァー殿下に心の中で感謝しつつ、彼の優しさに胸が締め付けられる。
「何かお困りのことはありませんか?」
「……! 実は……」
ロジャーに困ったことがないかと聞かれ、これは渡りに船だと思った私は、全てを話すことに決めた。ロジャーならきっとオリヴァー殿下にも秘密にしてくれると信用出来る。
ハーブティーの調合を切りの良い所まで済ませ、私たちは小さな庭園まで来ていた。
そこで、私がオスタシスで『サンブカ』としてお店をやっていたこと、そのお店を『ロズ』としてオリヴァー殿下がロズイエに移転させてくれた経緯を話した。
「殿下のスカウトされたお店の主があなただったとは……」
話を聞いたロジャーは、とても驚いた表情で、「こんなことがあるなんて」と呟いていた。
「私もロズのことは商人だと思っていたから、まさかこんなことになるなんて……」
へらりと笑ってロジャーを見れば、彼は眉間に皺を寄せていた。
「あの、それでね。オリヴァー殿下には気付かれず、たまにお店を見に行きたいの。ここでの調合もちゃんとこなすから……」
そう言ってロジャーに懇願すれば、彼は眉間に手を起き、考え込んでしまった。
無理を言っているよね……。仮にも殿下の妃が街に降り立つなんて。
でも、顔は知られていないし、こっそり行けないかしら?
「……殿下にはあなたがサンブカ様だと知られないように、かつあなたのお店が運営出来るようにお手伝いすれば良いということですね?」
「手伝ってくれるの?!」
考え込んでいたロジャーは顔をあげると、意外な言葉を口にした。私は思わず彼を見つめて言った。
「貴方の夢に尽力すると言ったでしょう?」
眉を下げてロジャーは笑ってみせた。
「ありがとう!!」
ロジャーの優しさに思わず泣きそうになる。
「でも殿下が取り仕切っている以上、いつまでも、というわけには……」
「わかってる。いつか私がここを出ていく時にはちゃんと伝えるつもり」
「そうですか」
ロジャーはそれだけ言うと、静かに微笑んだ。
私の我儘にロジャーをつきあわせてごめん。
でも私は一人で生きていく準備を進めないといけない。
「はい、それは…」
結婚式の翌日から、私は調合室にいた。
「新婚さんなのにごめんなさいねええ」
さっきまで調合室にいたお義母様は、公務で呼ばれて残念そうに向かわれて行った。
夏が終わろうとするこのロズイエ王国では、冬に向けて流行する伝染病の対策をこの季節から始めるらしい。
ハーブは継続的に摂取してこそ効果がもたらされるので、理にかなっている。
ロズイエではちゃんとハーブティーが重要視されているのは本当だったんだ。
ロズイエではオスタシスの調合ハーブの輸入が止まってから、在庫を何とか回していたらしく、今年度はすっからかんの所に、私がやって来た。
そういうわけで、大急ぎでハーブの調合が必要というわけで、私は調合室に籠もっていた。
オスタシスではティナの癒やしの力に皆群がってしまう。ハーブはすっかり必要とされなくなっていたので、久しぶりにこんなに調合を求められて腕が鳴る。
「エルダー様、これは同じではないんですか?」
「はい、子供用に苦くないものと分けてあります」
「そんなことも出来るのですね……!」
お義母様が手配してくれた助手の皆さんとこの調合室で一日中ハーブに囲まれている。
ちなみに、この国にはお義母様の他に、ティナと同じ『聖女』がもう一人いる。第一王子のお妃様だとか。三人も聖女がいるので、皆様には名前で呼ばれている。その聖女様は、今はご出産の準備中ということで、お会い出来ていない。
幸せ!!!!
良質なロズイエのハーブを好きなように調合出来て、国民の皆様のお役に立てる!!
何て幸せなの!!
「そういえば、オリヴァー殿下が城下にハーブティーのお店を開かれたそうで」
助手の一人が、『サンブカ』のお店を話題に出して、ドキリとする。
そうだ、エミリーは上手くやっているかしら?この三日、調合室のハーブに夢中で……
「薔薇の店ではないのか?」
「それが、オスタシスからスカウトして連れて来た店らしく……」
「この国にハーブティーがもたらされるのは良いことだ!」
「そうだな、エルダー様も来てくださり、この国は安泰だ」
助手の二人が嬉しそうに話している。
うう、その店の人と私は同一人物なんです……。
とにかく一度、王宮を抜け出してお店の様子を見に行かないと……。
「エルダー様」
ハーブを調合しながら、どうしようかと考えていると、ロジャーが調合室に入ってきた。
「ロジャー! どうしたの?」
オリヴァー殿下付きの彼も忙しくしていて、結婚式以来顔を合わせていなかった。
「今日よりあなたに付くよう、殿下に言われて参りました」
「殿下が……」
大切な側近を私に寄越してくれるなんて。
オリヴァー殿下に心の中で感謝しつつ、彼の優しさに胸が締め付けられる。
「何かお困りのことはありませんか?」
「……! 実は……」
ロジャーに困ったことがないかと聞かれ、これは渡りに船だと思った私は、全てを話すことに決めた。ロジャーならきっとオリヴァー殿下にも秘密にしてくれると信用出来る。
ハーブティーの調合を切りの良い所まで済ませ、私たちは小さな庭園まで来ていた。
そこで、私がオスタシスで『サンブカ』としてお店をやっていたこと、そのお店を『ロズ』としてオリヴァー殿下がロズイエに移転させてくれた経緯を話した。
「殿下のスカウトされたお店の主があなただったとは……」
話を聞いたロジャーは、とても驚いた表情で、「こんなことがあるなんて」と呟いていた。
「私もロズのことは商人だと思っていたから、まさかこんなことになるなんて……」
へらりと笑ってロジャーを見れば、彼は眉間に皺を寄せていた。
「あの、それでね。オリヴァー殿下には気付かれず、たまにお店を見に行きたいの。ここでの調合もちゃんとこなすから……」
そう言ってロジャーに懇願すれば、彼は眉間に手を起き、考え込んでしまった。
無理を言っているよね……。仮にも殿下の妃が街に降り立つなんて。
でも、顔は知られていないし、こっそり行けないかしら?
「……殿下にはあなたがサンブカ様だと知られないように、かつあなたのお店が運営出来るようにお手伝いすれば良いということですね?」
「手伝ってくれるの?!」
考え込んでいたロジャーは顔をあげると、意外な言葉を口にした。私は思わず彼を見つめて言った。
「貴方の夢に尽力すると言ったでしょう?」
眉を下げてロジャーは笑ってみせた。
「ありがとう!!」
ロジャーの優しさに思わず泣きそうになる。
「でも殿下が取り仕切っている以上、いつまでも、というわけには……」
「わかってる。いつか私がここを出ていく時にはちゃんと伝えるつもり」
「そうですか」
ロジャーはそれだけ言うと、静かに微笑んだ。
私の我儘にロジャーをつきあわせてごめん。
でも私は一人で生きていく準備を進めないといけない。
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