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番外編〜アオイの恋〜
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「え、今はそんな大きな建物が建ってるの?! 都会、凄いわ!」
アオイとマリー様は故郷の思い出話に花を咲かせていた。二人とも、すごく楽しそう。
「それで、何でマリー様はトマトを作ってんの? 王妃様なんでしょ?」
すっかり打ち解けたアオイがマリー様に気さくに話しかける。
「だって、息子二人はもう立派になって私が世話を焼くこともないし、聖女業も引退したでしょ? アシュに王位を譲るまではアレンも公務で忙しいし」
「つまり、暇だと?」
「ああー、これでも王妃としての公務はあるのよ? ただ、聖女やってた頃より時間があるから、せっかくなら夢だった家庭菜園でもやろうかなーって」
マリー様は少女に戻ったかのように瞳をイキイキとさせて、アオイと話していた。
お元気そうで良かった。
王妃宮に入られてからは、公式以外でお顔を合わせることは無かった。私も魔物討伐で忙しくしていたし、こんな風にお話し出来るのは久しぶりだった。
「ところで、ステラちゃーん、アシュとの結婚生活はどう??」
ぶっ!!
アオイと話していたマリー様が突然私に話を振ったので、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになる。
危ない、危ない。
「ど、どうとは……?」
「あの子、ステラちゃんにメロメロでしょ~? 重くなーい? 仲良くやってるー?」
「め、めろめろ……」
マリー様から中々パンチの効いた言葉が飛び出て、私は赤くなる。
「もーー、この二人はバカップルですよ!!」
「ばかっぷる……」
今度はアオイから呆れたように言葉が出る。
「アシュリー様にメロメロなのは私の方なので…」
赤い頬を押さえながら、二人に照れながらも伝えれば、優しく微笑まれてしまった。
「二人が幸せなら良かったわ」
穏やかに笑うマリー様に、私はジーンとしてしまう。
「……二人みたいな関係、羨ましい」
アオイがポツリと溢した。
アオイには「自分を愛してくれる人なんていない」、と心の奥で思っている節がある。
明るい彼女は決して言葉にはしないけど、一緒にいる私は、そう感じてしまった。
昨日の合コンだって、本当はアオイの望みじゃない。空虚な気持ちを埋めるかのように、彼女は明るく、見つからないと思っている『運命の人』を探している。
……アオイには幸せになって欲しい。
でも、アオイ自身が自分の幸せを信じてあげないと、前に進めない気がする。
昨日の神官は、若い顔ぶればかりだった。
アオイには、歳上の男の人が良いと思うんだよね。大きな愛で彼女を包み込んでくれるような人。
「アオイちゃんは本当はレオのお嫁さんになるはずだったのよね」
アオイのことを考えていると、マリー様が申し訳なさそうな顔で呟いた。
「本当は、レオノアがアオイちゃんを待ってなきゃいけなかった。ごめんなさい……」
「マリー様……」
深々と頭を下げるマリー様。場はシン、としてしまった。
「ステラちゃんも、不安にさせてごめんね?」
「いえ……アシュリー様から、マリー様のおかげで私が婚約者でいられたと聞いています」
そう。私は騎士団長のお父様の娘、という肩書はあるものの、レオノア様が去った当時は婚約者の座も危うかったらしい。
それを抑えてくれていたのが、マリー様。そこから魔物討伐の功績で徐々に味方を増やしていけたのだとか。
アシュリー様にその話を聞いた時には、ゾッとした。だからマリー様には本当に感謝している。
「……一番はステラちゃんが頑張ったからよ?」
私の言葉にマリー様は眉を下げながら微笑まれた。
「そもそもアシュリー様のお兄さんはどうして出て行っちゃったの?」
躊躇なくアオイがマリー様に尋ねた。
レオノア様は聖女召喚に反対だったと、アシュリー様からは聞いた。
でも確かに、何で皇太子の座を譲ってまで出ていかれたのだろうか。
「……あの子は優しすぎるのよね」
マリー様が困ったように微笑んだ。
「当時の私はね、よくホームシックになって泣いていたの。もちろん、アレンといて幸せだったのよ。でも、そんな簡単なことじゃなくてね……」
マリー様は召喚された当時の心境を語ってくれた。
マリー様のお話に、聖女召喚によって一人の女性の人生を奪ってしまう、という事実が、より具体的になって重くのしかかる。
「レオは小さいながらにそんな私を見ていたのよね。アシュリーが生まれた頃には、すっかり吹っ切れてたのよ? アレンがめいいっぱい愛してくれたからね」
暗い顔をしていた私に、マリー様は茶目っ気たっぷりにウインクをした。
気遣わせないように、と明るく振る舞うマリー様はお優しい方だ。
「それで、聖女召喚に反対するレオ派と教会で、険悪になっちゃって。責任感じたのと、自分が降りれば聖女召喚は出来ないと踏んだんでしょうねえ、アシュにはステラちゃんがいたから」
アシュリー様も確か、そのようなことを言っていた。
私が魔物を一掃してしまうと…。うう……。
「でもそうはいかなかったのよねえ……、後はあなたたちの知る通りよ。レオノアの身勝手さで本当にごめんなさい」
マリー様は私たちを見ると、再び深々と頭を下げた。
アオイとマリー様は故郷の思い出話に花を咲かせていた。二人とも、すごく楽しそう。
「それで、何でマリー様はトマトを作ってんの? 王妃様なんでしょ?」
すっかり打ち解けたアオイがマリー様に気さくに話しかける。
「だって、息子二人はもう立派になって私が世話を焼くこともないし、聖女業も引退したでしょ? アシュに王位を譲るまではアレンも公務で忙しいし」
「つまり、暇だと?」
「ああー、これでも王妃としての公務はあるのよ? ただ、聖女やってた頃より時間があるから、せっかくなら夢だった家庭菜園でもやろうかなーって」
マリー様は少女に戻ったかのように瞳をイキイキとさせて、アオイと話していた。
お元気そうで良かった。
王妃宮に入られてからは、公式以外でお顔を合わせることは無かった。私も魔物討伐で忙しくしていたし、こんな風にお話し出来るのは久しぶりだった。
「ところで、ステラちゃーん、アシュとの結婚生活はどう??」
ぶっ!!
アオイと話していたマリー様が突然私に話を振ったので、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになる。
危ない、危ない。
「ど、どうとは……?」
「あの子、ステラちゃんにメロメロでしょ~? 重くなーい? 仲良くやってるー?」
「め、めろめろ……」
マリー様から中々パンチの効いた言葉が飛び出て、私は赤くなる。
「もーー、この二人はバカップルですよ!!」
「ばかっぷる……」
今度はアオイから呆れたように言葉が出る。
「アシュリー様にメロメロなのは私の方なので…」
赤い頬を押さえながら、二人に照れながらも伝えれば、優しく微笑まれてしまった。
「二人が幸せなら良かったわ」
穏やかに笑うマリー様に、私はジーンとしてしまう。
「……二人みたいな関係、羨ましい」
アオイがポツリと溢した。
アオイには「自分を愛してくれる人なんていない」、と心の奥で思っている節がある。
明るい彼女は決して言葉にはしないけど、一緒にいる私は、そう感じてしまった。
昨日の合コンだって、本当はアオイの望みじゃない。空虚な気持ちを埋めるかのように、彼女は明るく、見つからないと思っている『運命の人』を探している。
……アオイには幸せになって欲しい。
でも、アオイ自身が自分の幸せを信じてあげないと、前に進めない気がする。
昨日の神官は、若い顔ぶればかりだった。
アオイには、歳上の男の人が良いと思うんだよね。大きな愛で彼女を包み込んでくれるような人。
「アオイちゃんは本当はレオのお嫁さんになるはずだったのよね」
アオイのことを考えていると、マリー様が申し訳なさそうな顔で呟いた。
「本当は、レオノアがアオイちゃんを待ってなきゃいけなかった。ごめんなさい……」
「マリー様……」
深々と頭を下げるマリー様。場はシン、としてしまった。
「ステラちゃんも、不安にさせてごめんね?」
「いえ……アシュリー様から、マリー様のおかげで私が婚約者でいられたと聞いています」
そう。私は騎士団長のお父様の娘、という肩書はあるものの、レオノア様が去った当時は婚約者の座も危うかったらしい。
それを抑えてくれていたのが、マリー様。そこから魔物討伐の功績で徐々に味方を増やしていけたのだとか。
アシュリー様にその話を聞いた時には、ゾッとした。だからマリー様には本当に感謝している。
「……一番はステラちゃんが頑張ったからよ?」
私の言葉にマリー様は眉を下げながら微笑まれた。
「そもそもアシュリー様のお兄さんはどうして出て行っちゃったの?」
躊躇なくアオイがマリー様に尋ねた。
レオノア様は聖女召喚に反対だったと、アシュリー様からは聞いた。
でも確かに、何で皇太子の座を譲ってまで出ていかれたのだろうか。
「……あの子は優しすぎるのよね」
マリー様が困ったように微笑んだ。
「当時の私はね、よくホームシックになって泣いていたの。もちろん、アレンといて幸せだったのよ。でも、そんな簡単なことじゃなくてね……」
マリー様は召喚された当時の心境を語ってくれた。
マリー様のお話に、聖女召喚によって一人の女性の人生を奪ってしまう、という事実が、より具体的になって重くのしかかる。
「レオは小さいながらにそんな私を見ていたのよね。アシュリーが生まれた頃には、すっかり吹っ切れてたのよ? アレンがめいいっぱい愛してくれたからね」
暗い顔をしていた私に、マリー様は茶目っ気たっぷりにウインクをした。
気遣わせないように、と明るく振る舞うマリー様はお優しい方だ。
「それで、聖女召喚に反対するレオ派と教会で、険悪になっちゃって。責任感じたのと、自分が降りれば聖女召喚は出来ないと踏んだんでしょうねえ、アシュにはステラちゃんがいたから」
アシュリー様も確か、そのようなことを言っていた。
私が魔物を一掃してしまうと…。うう……。
「でもそうはいかなかったのよねえ……、後はあなたたちの知る通りよ。レオノアの身勝手さで本当にごめんなさい」
マリー様は私たちを見ると、再び深々と頭を下げた。
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