シンデレラ公子番外編

ギルディス乱入

「なんと間の良いことか……いや……悪いのか。ある意味、悪意を感じるな」

エドガーはそう言うと「僕はいない。入って来るな」と扉に向かって返答した。

それを返事とギルディスがバンと扉を開いて入って来る。

真っ赤な燃えるような髪に金色の瞳。

室内へ入ると誰もいない事を確認するや、つかつかとエドガーへ詰め寄った。

「昨夜のアレはどういう事ですか」

ダンと大きな音を立ててエドガーの机に身を乗り出すギルディス。

「僕はいないと言ったんだがな」
嘆息たんそくするエドガーにギルディスは「居留守を使うな」と軽く抗議する。

丁度机を挟んだエドガー側の、それもエドガーの下で書類を取ろうとしているハロルドに気付く事なく顔を近付けるギルディス。

「それに、昨夜の……とは、ごめんギルディス。昨日は結構お酒が入っていて良く覚えていないんだよ」

エドガーは立ち上がると困ったようなジェスチャーをする。

まるで、ハロルドを隠すようなエドガーの行動にハロルドは名乗り出るタイミングを逸した。

そんなエドガーの肩を掴んだギルディスは不穏な笑みを称える。

「こんな事をしておいて『はい。忘れました』ですむかよ！！」

ギシリと音を立ててギルディスは机に片膝を着くとエドガーをグイッと自身へ寄せて口付けた。

クチュ。

そう口付けた。

ピチャピチャ。

それも、ディープなやつだ。

信じられない物を見たようにハロルドは机の下から二人を見上げている。

冷淡な瞳でギルディスを見つめるエドガーとは対照的に、ギルディスは熱い吐息を吐く。

カチャカチャと何かを外す音が響く。

すると、何故か妻の裸を見た瞬間に萎えてしまった息子が起き上がる。

『嘘だろう～！！』

二重の意味でハロルドは驚愕したのだった。