シンデレラ公子番外編

麻生空

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食事を前に

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期待


不安


二つの相反する気持ちのまま、私はエドガー殿下の部屋へ向かう。

大人の男が5人は横並びに歩けるような廊下を堂々と歩けば、時折若い女官とすれ違う。

女官は私に気付くと直ぐに廊下の端の方へと外れ軽く会釈する。
その時の何かを期待するかのような眼差し。


声を掛けて欲しいと言う気持ちがヒシヒシと伝わって来る。

本当にうんざりだ。

相手から声を掛けられないだけまだ今はましなのかもしれない。

結婚式の案内を出す前までは、それこそ日がな一日すれ違う女官達に声を掛けられたものだ。

まるで獲物を狙う猛禽類のような目で。

つかつかと進むこと30分。

やっとエドガー殿下の寝室前まで来た。

扉の前では近衛騎士が一人見張りに立っている。

「やぁ、こんばんは。殿下は中に?」

そう声を掛ければ

「はい。ハロルド様ですね。お話は伺っております。どうぞ中へ」

若い近衛騎士は殿下に伺いもたてずに私を中へ招き入れた。

「殿下。失礼します」
 扉の前で一礼してからゆっくりと入室する。

一瞬芳しい匂いにお腹が鳴りそうになった。

「やぁ、ハロルド。夕食を準備して待っていたよ」

エドガー殿下はそう言うと私を自身の向かいの席へと促す。

「失礼します」

再び私は軽く会釈をし、エドガー殿下の向かいの席に腰を下ろした。

「ジョン。後は事前に話した通りに」

エドガー殿下は先程の近衛騎士にニコリとそう言うと

「畏まりました」

ジョンと呼ばれた騎士は深々と敬礼し扉を閉めた。

一瞬で二人きりになった自分達。

目の前の食事を前にゴクリと喉が鳴った。

「さて、食事にしようか」


エドガー殿下はそう言うと今着ていた上着を脱ぎ空いている椅子の背もたれに掛けた。

白いブラウスからはなんとなく体のラインがうっすらと見える。

「はい。殿下」

思わず見とれてしまった私は、一拍置いてから返事をした。

あぁ。
本当に美味しそうだ。

そう思い生唾を飲み込んだ。
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