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第一章
黒竜王
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『おい、ライアン!お前何してる!? 』
その声が、頭の中に流れ込んでくる。それは聞き慣れたクリフさんの声だった。
『申し訳ありません、クリフォード様』
ライアンさんは謝り、黒竜様の前に舞い降り頭を低く垂れる。そして私が彼から降りると、ぱっと人間の姿に戻った。
『あぁ……なんかマジでぶっ飛ばしたい』
ご乱心の黒竜様は、やはり傷つき血を流している。黒竜様はクリフさんだと分かったのに、私はその傷ついた身体に抱きついていた。
黒竜様に触れた瞬間、温かい気持ちがどっと溢れてくる。早く治してあげたいと思う。
『エマ、俺に触れるのが嫌だろう?
無理しなくてもいい』
いつもはあんなにベタベタ触れてくるくせに、こういう時だけ狼狽える彼が、愛しくさえ思う。
「何言ってるんですか」
私はぎゅっと抱きしめる身体に力を入れる。きっと傷はもう治っているだろう。だが、その身体に触れていると心地よく、いつまでも抱きついていたいとさえ思える。私は目を閉じてその温かさに酔い、いつまでも黒い竜に身を委ねていた。
いつまでそうしていたのだろうか。辺りが騒がしくなっていることに気付き、はっとする。慌てて周りを見回すと、私はなんと城の人々に囲まれていた。
人々は驚いた顔で私と黒竜様を見ており、私は慌てて黒竜様から身を離した。こんな時なのに、黒竜様から離れるのが酷く名残惜しく感じる。
「陛下。いつも一人で敵に立ち向かって、無理をされすぎです」
黒い服の騎士たちが、黒竜様に向かって頭を下げる。
「私たちも竜人族の一員です。私たちの力も頼ってください!! 」
(ちょっと待って。今、陛下って言ったよね……)
クリフさんが黒竜様だということだけでも衝撃的だが、……陛下!? 街の人々が噂をする竜王陛下は、まさかクリフさんだったのだろうか。
クリフさんが黒竜国の国王であるのならば……私は、クリフさんを軽くあしらったり、拒絶したり、国王に対して信じられない態度を取っていたことに気付く。体をゾゾーッと寒気が走った。
騎士の言葉を聞き、黒竜様はぱっと黒い光に包まれる。次の瞬間、そこには見慣れたクリフさんが立っていた。だが、明らかに苛立って、取り囲んだ騎士たちを睨んでいる。
「お前ら、さっきから喧嘩売っているのか」
その瞬間、騎士たちはははーっと跪く。それを見て、本当に陛下なのだと思い知る。クリフさんと会うのは決まって私の家の中だった。そのため、城の人々が彼に普段どのような態度を取っているのかも知らなかったのだ。
(どう考えても私、失礼すぎたよね)
どうすればいいのか分からない私は、騎士たちと同じように跪く。すると、クリフさんはぎょっとした顔をする。そして、思いっきり怒りの込められた瞳で騎士たちを睨んだ。
「お前らのせいで、エマが変なマネをし始めた。
どう責任を取ってもらおうか」
「も、申し訳ございません、陛下!! 」
頭を低く垂れたまま、大声で謝る騎士たち。もちろん、そのなかにはライアンさんの姿だってある。
クリフさんは彼らを見て、大きなため息をついた。そして、諦めたように告げた。
「もういい、下がれ」
すると、彼らはピシッと背を伸ばし、逃げるように去っていった。
まるでコントのような滑稽にも思われたやり取り。だが、騎士たちは本気でクリフさんを敬い、本気でクリフさんを恐れているのだ。私が思っていたよりもずっと、クリフさんは偉大ですごい人だったのだ。
人がいなくなった王城の広場で、私はクリフさんを見上げる。いつもと変わらない黒髪に、深い青い瞳。首元には、私がプレゼントしたスカーフを巻いている。
彼はいつもの優しい瞳で私を見、いつもと同じ甘い声で話す。今までの怒りが嘘であったかのように。
「エマには話さないといけないと思っていた。
だが、俺に対する警戒心が強いから、少しずつ近付こうと思っていたんだ」
何も言えない私は、黙っていつも通りのクリフさんを見上げる。いつもと何ら変わりないクリフさんなのに、胸がドキドキと悲鳴を上げる。
彼は切なげに私を見て、そっと頬に触れる。彼が触れた瞬間、心地よい温もりが襲いかかる。
「エマは俺には何も話してくれないけど、黒竜には心を開いてくれていた。
それが嬉しくて、俺はエマに近付いていた」
そんなに悲しい顔で、私を見ないで欲しい。クリフさんが悲しい顔をするのが、なぜか酷く辛い。
「俺は所詮、エマを騙していた悪い男なんだ。
エマを裏切った、ユウキとかいう男と変わらない……」
チャラ男だと思っていたのに。私のことなんて深く考えず、波長が合うという理由だけで落とそうとしていたはずなのに。なのに、どうしてこうも私のことを考え、自分を責めているのだろう。
私は、クリフさんのことを、誤解していたのかもしれない。誤解して、クリフさんを傷つけていたのかもしれない。
その声が、頭の中に流れ込んでくる。それは聞き慣れたクリフさんの声だった。
『申し訳ありません、クリフォード様』
ライアンさんは謝り、黒竜様の前に舞い降り頭を低く垂れる。そして私が彼から降りると、ぱっと人間の姿に戻った。
『あぁ……なんかマジでぶっ飛ばしたい』
ご乱心の黒竜様は、やはり傷つき血を流している。黒竜様はクリフさんだと分かったのに、私はその傷ついた身体に抱きついていた。
黒竜様に触れた瞬間、温かい気持ちがどっと溢れてくる。早く治してあげたいと思う。
『エマ、俺に触れるのが嫌だろう?
無理しなくてもいい』
いつもはあんなにベタベタ触れてくるくせに、こういう時だけ狼狽える彼が、愛しくさえ思う。
「何言ってるんですか」
私はぎゅっと抱きしめる身体に力を入れる。きっと傷はもう治っているだろう。だが、その身体に触れていると心地よく、いつまでも抱きついていたいとさえ思える。私は目を閉じてその温かさに酔い、いつまでも黒い竜に身を委ねていた。
いつまでそうしていたのだろうか。辺りが騒がしくなっていることに気付き、はっとする。慌てて周りを見回すと、私はなんと城の人々に囲まれていた。
人々は驚いた顔で私と黒竜様を見ており、私は慌てて黒竜様から身を離した。こんな時なのに、黒竜様から離れるのが酷く名残惜しく感じる。
「陛下。いつも一人で敵に立ち向かって、無理をされすぎです」
黒い服の騎士たちが、黒竜様に向かって頭を下げる。
「私たちも竜人族の一員です。私たちの力も頼ってください!! 」
(ちょっと待って。今、陛下って言ったよね……)
クリフさんが黒竜様だということだけでも衝撃的だが、……陛下!? 街の人々が噂をする竜王陛下は、まさかクリフさんだったのだろうか。
クリフさんが黒竜国の国王であるのならば……私は、クリフさんを軽くあしらったり、拒絶したり、国王に対して信じられない態度を取っていたことに気付く。体をゾゾーッと寒気が走った。
騎士の言葉を聞き、黒竜様はぱっと黒い光に包まれる。次の瞬間、そこには見慣れたクリフさんが立っていた。だが、明らかに苛立って、取り囲んだ騎士たちを睨んでいる。
「お前ら、さっきから喧嘩売っているのか」
その瞬間、騎士たちはははーっと跪く。それを見て、本当に陛下なのだと思い知る。クリフさんと会うのは決まって私の家の中だった。そのため、城の人々が彼に普段どのような態度を取っているのかも知らなかったのだ。
(どう考えても私、失礼すぎたよね)
どうすればいいのか分からない私は、騎士たちと同じように跪く。すると、クリフさんはぎょっとした顔をする。そして、思いっきり怒りの込められた瞳で騎士たちを睨んだ。
「お前らのせいで、エマが変なマネをし始めた。
どう責任を取ってもらおうか」
「も、申し訳ございません、陛下!! 」
頭を低く垂れたまま、大声で謝る騎士たち。もちろん、そのなかにはライアンさんの姿だってある。
クリフさんは彼らを見て、大きなため息をついた。そして、諦めたように告げた。
「もういい、下がれ」
すると、彼らはピシッと背を伸ばし、逃げるように去っていった。
まるでコントのような滑稽にも思われたやり取り。だが、騎士たちは本気でクリフさんを敬い、本気でクリフさんを恐れているのだ。私が思っていたよりもずっと、クリフさんは偉大ですごい人だったのだ。
人がいなくなった王城の広場で、私はクリフさんを見上げる。いつもと変わらない黒髪に、深い青い瞳。首元には、私がプレゼントしたスカーフを巻いている。
彼はいつもの優しい瞳で私を見、いつもと同じ甘い声で話す。今までの怒りが嘘であったかのように。
「エマには話さないといけないと思っていた。
だが、俺に対する警戒心が強いから、少しずつ近付こうと思っていたんだ」
何も言えない私は、黙っていつも通りのクリフさんを見上げる。いつもと何ら変わりないクリフさんなのに、胸がドキドキと悲鳴を上げる。
彼は切なげに私を見て、そっと頬に触れる。彼が触れた瞬間、心地よい温もりが襲いかかる。
「エマは俺には何も話してくれないけど、黒竜には心を開いてくれていた。
それが嬉しくて、俺はエマに近付いていた」
そんなに悲しい顔で、私を見ないで欲しい。クリフさんが悲しい顔をするのが、なぜか酷く辛い。
「俺は所詮、エマを騙していた悪い男なんだ。
エマを裏切った、ユウキとかいう男と変わらない……」
チャラ男だと思っていたのに。私のことなんて深く考えず、波長が合うという理由だけで落とそうとしていたはずなのに。なのに、どうしてこうも私のことを考え、自分を責めているのだろう。
私は、クリフさんのことを、誤解していたのかもしれない。誤解して、クリフさんを傷つけていたのかもしれない。
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