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19. 相変わらずお好きなようです

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 その声を聞いた瞬間、びくっと飛び上がってしまった。今日はどんなサプライズが待っているのだろうか。

 ジョーの声を聞くなり、

「じゃあ、私はそろそろおいとましますね」

ケーキ屋の奥さんは帰ってしまうし、

「アンちゃん。私、消毒薬作ってくるね!」

ソフィアさんは奥へと引っ込もうとする。
 そういう気遣いはいらないし……ジョーと二人きりになると、またときめいてしまう。私は確実に、ジョーへと引き込まれているのだ。
 だけどジョーは、

「ソフィアさん」

意外にも、消えてしまいそうなソフィアさんに声をかけたのだ。その、手に持っている小包をぐっと前に出しながら。

「アンとケーキを食べようと買ってきた。もちろん、あなたの分も。
 もしよければ、少し休憩とかどうか?」

「じょ、ジョセフ様……どうもありがとうございます……」

 ソフィアさんはびっくりして苦笑いなんてしている。それに、ケーキってまさか……

「どうやら、俺はアンと結婚する運命のようだ」

 そう言ってジョーが包みを開けると、さきほどケーキ屋の奥さんからいただいたものと全く同じケーキが、三つ入っている。……三つなのだ。ジョーも居座る気満々なのだ。

「あの……それならちょうど同じものがあって……」

 いただいたケーキを指差すと、ジョーは嬉しそうに目を輝かせた。

「そうなのか。君ももうすでに買っていたのか……」

 甘い声で嬉しそうに言われ、そっと手に触れられる。そしてお決まりのように、手にチュッと口付けされる。いちいちドキドキしてしまう私は、いつまで経ってもジョーの甘さに慣れない。
 実際、ジョーと私が結婚なんて出来るはずもないのに。

 こんな甘い態度で接せらると、私もますますはまってしまうから、必死で抵抗する私。

「あっ!私、お皿とフォークを取ってきます!」

 ぱたぱたと二階へ食器を取りに上がる私は、真っ赤で少し震えている。叶わぬ恋なのに、思わせぶりな態度はやめて欲しい。私は、どんどんジョーにはまっていくから。

 私が二階に上がっている間、ジョーとソフィアさんは話をしていた。ソフィアさんによると、以前のジョーはこんなにも親しげに話をしなかったらしいのだが。


「相変わらず、お好きですね」

「あぁ。何としてもアンは手に入れたいから」

「でも……とても言い辛いのですが……アンちゃんは、ジョセフ様が冗談を言っていらっしゃると勘違いしています」

「それなら、もっとアンに迫らないといけないようだな」
 
 こんな話の内容を、私が知るはずもなかった。こうやって、ジョーの求愛はどんどんエスカレートしていくのだった。

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