これこそが、ボクの人生史上最高の

金糸雀

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昨日も

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「幸せといえばね、この前懐かしいものを見つけたんだ」

2人でお腹をさすり合い、ひとしきり笑い合った後で、ミナミは思い出したようにまた、バッグの中をがそごそ。何かを探し始めた。
「高校生活は毎日が楽しくて、今振り返っても幸せなことばかりだったけれど、あのイベントは本当に心に残ってるんだ。」
そう言って、ミナミはそれらをバッグから取り出した。


不思議な形をした角。
フリルとリボン、黒耳のついたヘッドドレス。

「っ…これ。」
見た瞬間、脳裏を駆け巡ったのは煌びやかな衣装を着たカナの姿。しょんぼりして、笑って、怒って。
担ぎ上げられたボクを追いかけてきてくれた、あの日のカナが一瞬にして蘇ってきた。
ボクを必死に抱きしめてきた、あの強くて切なくなるようなハグを。



『お願い、お願いだから。あんなふうに攫われないで。』




ーーそれらの記憶はボクの心を同じくらいの強さと切なさで掴んでくる。


「よく…バッグに入ったね。」
咄嗟にそんな事を口にして、苦しさを誤魔化そうとした。
それでも顔が歪んでしまいそうになって。それらを見るふりをして慌てて俯いたから。ミナミには気付かれなかったようだ。
「案外荷物が入るんだよ。」
明るい声だ。
その声につられてボクはそろりと目線を上げた。
視線の先。角とヘッドドレスを手に、ミナミは懐かしそうに目を細めてる。
「本当は尻尾も欲しかったんだけど、あれはシマ君がものすごい情熱で欲しがったから譲ったんだよね。」




『2日。だって。』

記憶のなかの、カナが言う。


「二徹、だったっけ?」
「そう、そう2日寝ずに作ったんだよね。」
よく覚えてるね、って。ちょっと照れながら、
「ヘッドドレスも人気で、何人も欲しがったんだけどね。作った姉さんから持ち帰り厳命が出てて。譲らずに済んだ。」
ミナミのお姉さんが、その時興味のあったのがロリータファッションと呼ばれるものだったと、後から知った。
お姉さんが興味を持っていたフリルとレースとリボン。まるでお人形さんの様な格好。ミナミは、それに初めて触れ、あのクラシカルなメイド服を用意してから、すっかり魅せられてしまったよって笑って。
今ミナミが手掛けるのは、そんな世界観の洋服達。
だからより一層、彼にとってあのハロウィンは特別で。幸せの詰まった思い出なのかもしれない。

「角もこだわったんだよ。印象は薄かったみたいだけど。」
木の枝の様な色と形。でも見る角度によって、パールの様に光ってる。あの日のカナの頭についてた2本の角。
ボクは久しぶりに目にしたそれに、手を伸ばした。
「アオ君に、あげようと思って持ってきたんだ。」
そっと、それに触れたボクに、ミナミの声が届く。
「いいの?」
ぱっとミナミを見れば、優しさそうに目を細めてる。
「うん。」
他に何も言わず、ただこくりと頷いてくれたのが胸に、胸に響いた。
ボクはまた、角を見る。
この角をつけていたカナの姿をそこに見る。
カナと出会ってから一年半。それまではただのわんこにしか見えなかったカナを、初めて。
カナを初めてかっこいいと、認識したあの姿。

「ありがとう。」

思えばあの時から、ボク達は変わっていったのかもしれない。
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