魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第二章

34『出発中止と冒険者のいろいろ』

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アンナリーナは、その特殊な生い立ちといわゆる転生者であったゆえ、この世界の常識にあまりにも疎かった。
 生まれ育ちが辺境なのも、それに拍車をかけていた。

 彼女は、この世界における調味料や甘味の位置付けを知らなかったのだ。
 アンナリーナにとって塩や胡椒は、あるから使う、いくらでも手に入るもの。砂糖や蜂蜜もそう。
 特に蜂蜜は、森に入ればいくらでも手に入るものであって、惜しむものでもない。
 その蜂を退治するのが、一般では大変だという事を理解していなかった。


「お昼は何にしようかな~」

 少々調子外れのメロディに乗せて、生活魔法【洗浄】を使い、食器を綺麗にしていくアンナリーナは、これもまた一般では行われない事だとは知らない。

「えと、嬢ちゃん。
 それは他の人間の前ではしない方がいいなぁ」

「そうなの?!」

 びっくりする、無頓着なアンナリーナ。
 それでも彼らの食器を受け取って【洗浄】するのはやめない。



「えっとね、これから買い物する時間ってあるかな?」

 テントを片付け、フランクたちが焚き火の始末をしているのを尻目に、アンナリーナはザルバが急に立ち上がったのに気づいた。

「?」

 一羽の鷹がこちらに向かって急降下してくる。
 一瞬身構えたが、ザルバが指笛を鳴らして手を差し伸べるさまに、これが前世で言うところの【伝書鳩】のようなものだと思いついた。
 ……鳩ではなく、鷹であったが。

「こんなところで【鷹】って、あんまり良い事じゃなさそうだな。
 嬢ちゃん、ちょっと待っててくれ」

 あっという間に降りてきた【鷹】の足には書管が取り付けられていて、ザルバがそれを器用に取り外す。
 取り出した紙を見た彼はサッと顔色を変えた。

「嬢ちゃん!
 今日の出発は中止だ!!
 俺はこれからギルドに行かなくちゃならなくなった。
 ……フランク、嬢ちゃんに付いてろ。
 離れるんじゃないぞ!」

 最後は走り出しながら、ザルバはギルド出張所の宿屋に向かい、それにはゲルトが付き随う。

「ねえ、何なの?」

 フランクを見上げると、顔をしかめている。

「わからねぇ……俺らもギルドに行くぞ」

 いきなり抱き上げられたアンナリーナは、荷物よろしく運ばれていった。


 この世界、長距離通信用に【交信水晶】がある。
 魔道具のメカニズムについては、アンナリーナはまったくの素人なので、この際深く追求しない。
 今、それを使ってザルバが相手をがなり立てていた。

「どうしたのかしら」

 邪魔にならないように隅の方に寄り、2人は聞き耳を立てている。

「デラガルサのギルドと、と言うか乗り合い馬車の組合の奴と話しているようだ。
 ……どうやら俺たちの便の1つ後の乗り合い馬車が魔獣に襲われたらしい。
 ただ、乗客や馬車自体に被害はなく、酷え……護衛の連中がやられたようだ。
 場所的にこっちの方が近いから、ここで護衛を仕立て直し、うちと一緒にいくだとぉ!」

「フランクさん」

 いきなり語尾を荒げたフランクに、アンナリーナは何も理解できずに面食らう。

「嬢ちゃん、こっち来い」

 さりげなく外に誘導され、また抱き上げられると、そのままフランクに運ばれていった。
 無難に馬車のところまで戻るようだ。

「フランクさん……」

「そうだな……嬢ちゃん、リーナは知らないよなぁ」

「?」

 馬車の昇降口にアンナリーナを座らせ、自分はその前に立って話し出す。

「あのな、俺たち冒険者って言う連中は色々いてな。
 それぞれ専門ってのがあるわけよ。
 俺やゲルトは護衛専門。魔獣も人にも対応出来、何より優先されるのは雇い主の安全だ。ここまではわかるな?
 だが、ここのギルドにたむろしている連中は魔獣討伐専門で、何よりレベルが低い。そんな連中が護衛する馬車が一台増えてみろ?」

「フランクさんたちが大変!」

「これは上からの命令みたいだから断れない。
 ……7日間、何もなければいいが」

 そこでアンナリーナははたと思い至る。

「じゃあ、今日はもう出発しないのよね?」

「そうだな」

 フランクは訝しげにアンナリーナを見ている。

「じゃあ、お買い物に付き合ってくれる?それから採取したいものがあるから森にも行くから」

 話がぐるりと回って、最初に戻ってきた。
 相変わらずブレないアンナリーナだ。

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