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第二章
35『肉屋襲撃!』
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フランクを引き連れ向かったのは、もちろん肉屋。
すでに商いは始まっていて、奥では忙しく立ち動いているのが見える。
「おはよーございます! ごめんください!!」
恰幅のよい、女将と思われる女性がエプロンで手を拭きながら、奥から現れた。
「はーい、お客さんかい? お嬢ちゃん、お使いかい?」
女将の、アンナリーナを見る目は優しい。
一方、アンナリーナの目はすでにぶら下がっているベーコンやハム、ソーセージに向けられていた。
「すみません。この加工品の味見ってできます?」
女将は相好を崩した。
彼女はこのようにはっきりと味見を申し出てくる客が好きだ。
「もちろんだよ。
ひと通り切ってみるね」
差し出された皿には数種のベーコンやハム、そして遅れて出てきた皿には茹でたてのソーセージが並んでいた。
その芳しい匂いにうっとりとする。
当然、フランクの分もあって彼は早速口に運んでいた。
アンナリーナはまずハムから口にする。
あっさりとした口当たりと程よい塩加減、肉質によるのか並べられた順番に味わいが深くなる。
ハムをすべて味見し終わったあと、バッグから水筒を取り出し、口内を濯ぐようにして飲み下す。
そこで女将が目を細めた。
次はベーコンである。
……これは絶品だった。
おそらく森猪を使ったものだろう、程よく脂の落ちたバラ肉は、燻されたチップ……アンナリーナにはよくわからないが、の香りが堪らない。
「ああ……カリカリに炒めて、とろっとろの目玉焼きと一緒にパンにのせて……くーっ、堪らない!」
アンナリーナが、その見かけによらず通だと知った女将は、2人に椅子を薦める。
そして奥の職人に主人を読んで来るように言うと、自分も席に着いた。
アンナリーナはまた口を濯ぎ、次のソーセージに向かっていた。
この時彼女は、先に味の濃いベーコンを食した事を、少々不思議に思っていた。
だが、ソーセージを一口齧った途端、その思いは覆される。
「何これすごい」
シャッキリとした食感、溢れる肉汁。
高価な胡椒は使われていないが、塩と何種類かのハーブが工夫されて使われていて、それはアンナリーナの好みにぴったりだった。
ベーコンの強い風味に負けない、いや完全に勝っているソーセージ。
最後に出てきたソーセージの、その意図にアンナリーナは脱帽する。
「女将さん、どうもご馳走様でした。
……今、いただいたハムとベーコンとソーセージ、どの位買わせてもらえますか?」
「え?」
さすがに女将も想像していなかったのだろう。
すぐには、言われた意味を理解出来ないようだ。
そこにフランクが助け舟を出す。
「女将さん、この嬢ちゃんはアイテムボックス持ちなんだ。
これから乗り合い馬車で旅をするんだが、食材を調達するつもりなんだよ」
これは、肉屋側にも思っても見ない好事だ。
実は最近、この先のデラガルサ鉱山の掘削量が減っていて、その補給地であるここエイケナールの景気が格段に悪くなっていた。
一番に打撃を受けるのは鉱山の町に食料を供給していた食料品店である。
この肉屋も売り上げの減少に頭を抱えていた。
そこに現れたアンナリーナである。
「こちらに差し支えない量で、売って頂きたいです。
特にソーセージは絶品です!」
目をキラキラ輝かせて、グイグイ押して来るアンナリーナに、女将もタジタジだ。
「一体何の騒ぎだぁ?」
そこにここの主人であり加工品を製造しているイゴルが姿を現し、この後、この肉屋が開店して以来の繁忙を迎える事になる。
すでに商いは始まっていて、奥では忙しく立ち動いているのが見える。
「おはよーございます! ごめんください!!」
恰幅のよい、女将と思われる女性がエプロンで手を拭きながら、奥から現れた。
「はーい、お客さんかい? お嬢ちゃん、お使いかい?」
女将の、アンナリーナを見る目は優しい。
一方、アンナリーナの目はすでにぶら下がっているベーコンやハム、ソーセージに向けられていた。
「すみません。この加工品の味見ってできます?」
女将は相好を崩した。
彼女はこのようにはっきりと味見を申し出てくる客が好きだ。
「もちろんだよ。
ひと通り切ってみるね」
差し出された皿には数種のベーコンやハム、そして遅れて出てきた皿には茹でたてのソーセージが並んでいた。
その芳しい匂いにうっとりとする。
当然、フランクの分もあって彼は早速口に運んでいた。
アンナリーナはまずハムから口にする。
あっさりとした口当たりと程よい塩加減、肉質によるのか並べられた順番に味わいが深くなる。
ハムをすべて味見し終わったあと、バッグから水筒を取り出し、口内を濯ぐようにして飲み下す。
そこで女将が目を細めた。
次はベーコンである。
……これは絶品だった。
おそらく森猪を使ったものだろう、程よく脂の落ちたバラ肉は、燻されたチップ……アンナリーナにはよくわからないが、の香りが堪らない。
「ああ……カリカリに炒めて、とろっとろの目玉焼きと一緒にパンにのせて……くーっ、堪らない!」
アンナリーナが、その見かけによらず通だと知った女将は、2人に椅子を薦める。
そして奥の職人に主人を読んで来るように言うと、自分も席に着いた。
アンナリーナはまた口を濯ぎ、次のソーセージに向かっていた。
この時彼女は、先に味の濃いベーコンを食した事を、少々不思議に思っていた。
だが、ソーセージを一口齧った途端、その思いは覆される。
「何これすごい」
シャッキリとした食感、溢れる肉汁。
高価な胡椒は使われていないが、塩と何種類かのハーブが工夫されて使われていて、それはアンナリーナの好みにぴったりだった。
ベーコンの強い風味に負けない、いや完全に勝っているソーセージ。
最後に出てきたソーセージの、その意図にアンナリーナは脱帽する。
「女将さん、どうもご馳走様でした。
……今、いただいたハムとベーコンとソーセージ、どの位買わせてもらえますか?」
「え?」
さすがに女将も想像していなかったのだろう。
すぐには、言われた意味を理解出来ないようだ。
そこにフランクが助け舟を出す。
「女将さん、この嬢ちゃんはアイテムボックス持ちなんだ。
これから乗り合い馬車で旅をするんだが、食材を調達するつもりなんだよ」
これは、肉屋側にも思っても見ない好事だ。
実は最近、この先のデラガルサ鉱山の掘削量が減っていて、その補給地であるここエイケナールの景気が格段に悪くなっていた。
一番に打撃を受けるのは鉱山の町に食料を供給していた食料品店である。
この肉屋も売り上げの減少に頭を抱えていた。
そこに現れたアンナリーナである。
「こちらに差し支えない量で、売って頂きたいです。
特にソーセージは絶品です!」
目をキラキラ輝かせて、グイグイ押して来るアンナリーナに、女将もタジタジだ。
「一体何の騒ぎだぁ?」
そこにここの主人であり加工品を製造しているイゴルが姿を現し、この後、この肉屋が開店して以来の繁忙を迎える事になる。
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