魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第二章

38『サンドイッチと角砂糖』

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上機嫌のアンナリーナが、乱立する木々を避けられるギリギリのスピードで【飛行】していた。

「ふんふん、ふーん♪」

 相変わらず調子外れのメロディでアニメソングを口ずさんでいる。
 そして山を越え、村に近い森の中に、条件に合う場所を見つけツリーハウスを出した。

「ちょっと村に近すぎるかもしれないけど、どうせ【結界】で遮られているから見えないもんね」

 木立の間から森と村を隔てる柵が見える。

「さて、肉屋さんの様子を見ていこうかな」


 イゴル精肉店はてんてこ舞いの忙しさだった。
 その張本人のアンナリーナは、請われるままに肉の追加を……これは解体してブロック肉になっているオークである……を提供した。

「次はザルバさんを回収しに行こうかな……フランク連れてなきゃうるさいかな」


 そんな考えは杞憂だった。

 ザルバはギルド出張所で、未だ頭を抱えていた。
 傍にいるゲルトと目が合い、目配せされる。
 アンナリーナはサッと近づいた。

「ザルバさん、少し休んだ方がいいですよ……馬車の方に昼食を用意したので、一緒に食べましょう」

 “ 食事 ”というところでザルバの身体がピクリと動いた。
 そこでゲルトが身体を支えて立ち上がらせ、有無を言わせず連れ出す。
 そんな彼が我に返り、通常に戻ったのは彼の馬車が見えてくる頃だった。

「嬢ちゃん、フランクはどうした?」

「あそこで夕食の準備をしてもらってるよ。
 フランク、ありがとうーっ!」

 手を振ると振り返す。
 与えておいた仕事はあらかた終わっているようだ。

「ザルバさん、美味しい食事を摂って、気分をリセットしよ?
 そんなままだと倒れちゃうよ?」

 これ以上、頭に血が昇ると拙い。
 心臓の発作もあり得るので、アンナリーナはザルバをできる限りリラックスさせようと思っていた。
 敷物を敷き、アイテムバッグから出すと見せかけて、インベントリから籐の椅子を取り出す。

「ザルバさん、ここに座って。
 ちょっと上着は寛げた方がいいね。
 あ、靴は脱いでね?
 ゲルトさん、胸許を開けてあげて。
 フランクは……
 先にトサカ鳥を回収するわね」

 テキパキと差配する。
 フランクなど呼び捨てで、最早下僕のようだ。

「手づかみで食べるからきれいにするね【洗浄】」

 丸太を組み合わせて作ったテーブルに次々と出されていく皿には、見たこともない白いパンがのっていた。

「嬢ちゃん、これは?」

「サンドイッチって言ってね。
 いろんな具が挟んであるの。
 昨日のお昼に食べたロールサンドもサンドイッチの仲間だよ」

 木製の取り皿に適当に取り分けてザルバに渡す。
 柔らかなローストビーフとからしマヨネーズのサンドイッチは彼の好みに合うはずだ。

「ゲルトさんとフランクはそのへんに適当に座って、食べて。
 たくさんあるから遠慮なくどうぞ」

 テーブルにのせた水差しの中は、潤沢に魔力を注いだ魔力水だ。
 おそらくこれだけで、多少の体調不良なら治るだろう。多分。
 ……今回のサンドイッチは、パンの用意がいささか邪魔くさかったので【異世界買物】で、サンドイッチ用にスライスされた食パンを買い込み、からしバターやからしマヨネーズ、マヨネーズにケチャップまで使い、色々な具を挟んで作ってきた。
 柔らかいパンなのでヘタは切っていない。

「ザルバさん、暖かい飲み物がよかったら出すよ?
 コンソメスープがいいかな?
 それとも甘いめのお紅茶がいい?」

 また “ 甘い ”という所で身体がピクリと動いた。わかりやすい御仁である。
 アンナリーナは笑いながら、アイテムバッグからティーセットを取り出す。
 飲み頃の状態でしまわれていたそれを、ポットからティーカップに注ぎ、砂糖を添えて出した。

「お砂糖は普通は一個かな。
 甘いのがよければ好きなだけどうぞ」

 角砂糖とは未知との遭遇だった3人はおっかなびっくり摘んでいる。
 意を決してティーカップに一個、入れたザルバは慌てて口を付けた。

「お匙で混ぜなきゃ溶けないよ。
 ね?こうするの」

 音を立てずに華奢なスプーンで、琥珀色の液体を混ぜる。
 また口を付けたザルバはもう1つ砂糖を入れて混ぜ、次に口を付けた時は何とも幸せ一杯……という表情を浮かべていた。
 甘いものは心を安らがせ、疲労を回復させてくれる。
 サンドイッチとともにするにはいささか邪道かもしれないが、アフタヌーンティーの事もある。

「今日は色々な種類のサンドイッチを作ってきたからたくさん食べてね?
 この、ベーコンと卵焼きのサンドもおすすめだよ」

 次から次へと皿を差し出すアンナリーナが、3人には女神に見えた。

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