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第二章
74『アンナリーナの提案』
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今、アンナリーナはザルバ、ゲルト、フランクを連れてジャマーの元を訪れていた。
「ジャマーさん、お疲れのところごめんなさい。
でも、あまりゆっくりもしていられないので」
「いや、薬師殿、わざわざありがとう。で?」
外は昨夜からまるで冬のように冷えている。そして、やはり峠では雪が降っているようだ。
「マリアさんのことで。
これから話す事は衝撃的な事も、失礼な事もあると思います。
でも、怒らないで聞いて欲しいのです」
「わかった」
ジャマーは緊張を隠せない。
「マリアさんの容態に関しては、昨日と重複すると思いますが、順番に話していくので」
「もちろん、よろしく頼む」
マリアの名を出した途端、ジャマーの顔つきが山賊の頭から一人の男のものになった。
身体を繋げた事もない夫婦……
この稀有な関係でも、男はそれでもマリアを心から愛している。
「最初に言っておきますが、私は【解析】のスキル持ちです。
だから身体の中がどうなっているかわかるんです」
ザルバがゴクリと喉を鳴らした。
「マリアさんは仮死状態で産まれてきた、と仰っていました。
本来、この時点で亡くなっていてもおかしくなかったのです。
……マリアさんのお家はかなりの豪商だったようですね。
治癒魔法で命を繋いで、静かに、静かに暮らしてきたのでしょう。
実際、こちらにきたのも静養のためだったそうですし」
ジャマーが、彼女らが魔獣に襲われていた時の事を思い出したのだろう。
眉間に皺を寄せた。
「心臓に、極々小さなものでしたが、穴が空いていました。
これに関しては塞ぐことが出来たのですが……」
アンナリーナは自らが淹れたハーブ茶を飲んで、喉を潤した。
「心臓っていうのは筋肉の組み合わせで出来ているようなものなのですが、マリアさんの心筋は回復できないほど弱っていて……出来る限りの治療はしました。
でも、限度があるのです」
この世界は、アンナリーナが前世で読んできたファンタジー小説の世界ではない、現実の世界だ。
物語と同じ、回復薬やポーション、治癒魔法があるが万能ではない。
この事はアンナリーナよりも、この世界で産まれ、暮らしてきた彼らの方がよく理解しているだろう。
「昨日も言いましたが、このままではマリアさんは……来年の春は迎えられないでしょう」
ジャマーの握りしめた拳から血が滲んだ。口許の筋肉が痙攣している。
「ジャマーさん、マリアさんのためにどれだけの覚悟があります?
あなたたち二人の問題というだけでは済まないかもしれませんよ?」
「俺は……」
「マリアさんの命を長らえる方法はあります。でも、これは私が言うのは本当に僭越なことなのです。
それでも聞いて下さいますか?」
「ぜひ、お願いしたい」
アンナリーナは一つ、大きく息を吐いた。
「この洞窟はマリアさんの身体に悪影響しか与えません。
ここは換気が出来なくて空気がこもっています。
もし、誰かが外から流感でも持って帰ってきたら……その時点でマリアさんはもう保たないでしょう」
アンナリーナはここでまたひと息入れた。
後ろの3人の様子を見ると、ザルバとゲルトは静観している。
フランクはどちらかと言うと、アンナリーナの事が心配そうだ。
「マリアさんが、いえ、あなたたちが町で暮らす事は不可能ですか?
……出来れば、真っ当な仕事について」
「それは……」
まさか話がそこまで及ぶとは思っていなかったのだろう。
ジャマーだけでなく、後ろの3人も絶句している。
「マリアさんは……それなりの規模の町で、医術師や治療魔法師、薬師などが揃ったところなら、それなりの年齢まで生きられると思います。
でも、今のままでは町では暮らせないでしょう?」
ジャマーが、うう、と唸った。
「無責任な事ばかり言ってる自覚はあります。
でも、商機がひとつあるんです。
これを上手く使えば……どさくさに紛れて?」
訝しげな目を向けられて、ひとつ咳払いする。
「デラガルサの鉱山がダンジョン化してるんですよ」
「そんな、まさか?!」
4人揃って大声をあげる。
だがアンナリーナは怯まない、むしろ落ち着いたものだ。
「私【探索】持ちですから確かですよ?
もう少しエイケナールでゆっくりしたかったのだけど、グレイストさんに薬師ってバレてるし……
ダンジョンだと知れたらあの村から出られなくなりそうだったからトンズラしてきたんです」
確かに、延々と薬を作り続ける事になるだろう。
「あの、私、身代金代わりにポーションを置いていくつもりでいます。
それで荒稼ぎ出来るんじゃないですか?」
「ポーション?!」
「下級のCポーションの回復量は600、中級のAポーションが2700、この2つならレシピが固定されているから大量生産できます。
まあ、材料の量によるけど」
「そんなものも作れるのか……」
思わず溢れたフランクの言葉。
この世界でポーションを製作できる錬金薬師は貴重だ。
「ダンジョンだと知られるのはもうすぐですよ?どうします?」
「ジャマーさん、お疲れのところごめんなさい。
でも、あまりゆっくりもしていられないので」
「いや、薬師殿、わざわざありがとう。で?」
外は昨夜からまるで冬のように冷えている。そして、やはり峠では雪が降っているようだ。
「マリアさんのことで。
これから話す事は衝撃的な事も、失礼な事もあると思います。
でも、怒らないで聞いて欲しいのです」
「わかった」
ジャマーは緊張を隠せない。
「マリアさんの容態に関しては、昨日と重複すると思いますが、順番に話していくので」
「もちろん、よろしく頼む」
マリアの名を出した途端、ジャマーの顔つきが山賊の頭から一人の男のものになった。
身体を繋げた事もない夫婦……
この稀有な関係でも、男はそれでもマリアを心から愛している。
「最初に言っておきますが、私は【解析】のスキル持ちです。
だから身体の中がどうなっているかわかるんです」
ザルバがゴクリと喉を鳴らした。
「マリアさんは仮死状態で産まれてきた、と仰っていました。
本来、この時点で亡くなっていてもおかしくなかったのです。
……マリアさんのお家はかなりの豪商だったようですね。
治癒魔法で命を繋いで、静かに、静かに暮らしてきたのでしょう。
実際、こちらにきたのも静養のためだったそうですし」
ジャマーが、彼女らが魔獣に襲われていた時の事を思い出したのだろう。
眉間に皺を寄せた。
「心臓に、極々小さなものでしたが、穴が空いていました。
これに関しては塞ぐことが出来たのですが……」
アンナリーナは自らが淹れたハーブ茶を飲んで、喉を潤した。
「心臓っていうのは筋肉の組み合わせで出来ているようなものなのですが、マリアさんの心筋は回復できないほど弱っていて……出来る限りの治療はしました。
でも、限度があるのです」
この世界は、アンナリーナが前世で読んできたファンタジー小説の世界ではない、現実の世界だ。
物語と同じ、回復薬やポーション、治癒魔法があるが万能ではない。
この事はアンナリーナよりも、この世界で産まれ、暮らしてきた彼らの方がよく理解しているだろう。
「昨日も言いましたが、このままではマリアさんは……来年の春は迎えられないでしょう」
ジャマーの握りしめた拳から血が滲んだ。口許の筋肉が痙攣している。
「ジャマーさん、マリアさんのためにどれだけの覚悟があります?
あなたたち二人の問題というだけでは済まないかもしれませんよ?」
「俺は……」
「マリアさんの命を長らえる方法はあります。でも、これは私が言うのは本当に僭越なことなのです。
それでも聞いて下さいますか?」
「ぜひ、お願いしたい」
アンナリーナは一つ、大きく息を吐いた。
「この洞窟はマリアさんの身体に悪影響しか与えません。
ここは換気が出来なくて空気がこもっています。
もし、誰かが外から流感でも持って帰ってきたら……その時点でマリアさんはもう保たないでしょう」
アンナリーナはここでまたひと息入れた。
後ろの3人の様子を見ると、ザルバとゲルトは静観している。
フランクはどちらかと言うと、アンナリーナの事が心配そうだ。
「マリアさんが、いえ、あなたたちが町で暮らす事は不可能ですか?
……出来れば、真っ当な仕事について」
「それは……」
まさか話がそこまで及ぶとは思っていなかったのだろう。
ジャマーだけでなく、後ろの3人も絶句している。
「マリアさんは……それなりの規模の町で、医術師や治療魔法師、薬師などが揃ったところなら、それなりの年齢まで生きられると思います。
でも、今のままでは町では暮らせないでしょう?」
ジャマーが、うう、と唸った。
「無責任な事ばかり言ってる自覚はあります。
でも、商機がひとつあるんです。
これを上手く使えば……どさくさに紛れて?」
訝しげな目を向けられて、ひとつ咳払いする。
「デラガルサの鉱山がダンジョン化してるんですよ」
「そんな、まさか?!」
4人揃って大声をあげる。
だがアンナリーナは怯まない、むしろ落ち着いたものだ。
「私【探索】持ちですから確かですよ?
もう少しエイケナールでゆっくりしたかったのだけど、グレイストさんに薬師ってバレてるし……
ダンジョンだと知れたらあの村から出られなくなりそうだったからトンズラしてきたんです」
確かに、延々と薬を作り続ける事になるだろう。
「あの、私、身代金代わりにポーションを置いていくつもりでいます。
それで荒稼ぎ出来るんじゃないですか?」
「ポーション?!」
「下級のCポーションの回復量は600、中級のAポーションが2700、この2つならレシピが固定されているから大量生産できます。
まあ、材料の量によるけど」
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