魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

132『類人猿たちとの出会い』

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 地面に倒れ臥す【五つ目鹿】を見下ろし、アンナリーナはその毛皮に触れた。
 白に近いクリーム色の身体に、立派な角。
 二対の目と額に一つある、その名の元になった目、それはもう光を宿さない、青い瞳だ。
 前世にいたトナカイよりもさらに大きく、8本足のスレイプニルほどの体長があった。

「こいつは、この立派な角と毛皮が高値で取り引きされる。
 鹿系の魔獣はかなり深い森でなければ、中々見ないんだ。
 これほどのものならオークションものだな」

 テオドールが感心したように言う。

「こいつはどこからきたんだろうな?」



 しばらく森を進んで、少し拓けた土地を見つけた。

「とりあえず、ここに馬車を出して、前線基地にしようか」

 そうすると中からセトとイジが出てきた。

「主人、俺たちを連れていって欲しい」

 準備万端整えた姿で前に立たれれば、文句を言う気力も萎えてくる。
 そして、まずは偵察ということになった。

「俺にだって感じられるほど、凄まじい魔獣の気配が溢れている。
 これは相当な数だな。
 気をつけて行くんだぞ」

 テオドールが腰を屈め、肩に手をかけて視線を合わせてくる。
 アンナリーナは大きく頷いて、太い首に抱きついた。

「1人じゃないから大丈夫。
 それに、こうして飛んで行くし、危険を感じたらすぐにその場を離れるから」

「……気をつけて行ってこい」



 テオドールに見送られて、変異の中心点に急ぐアンナリーナたちの前に、すぐにそれは現れた。

 以前見た蛇穴のように悍ましいものではないが、這い出すように出現している魔獣は【大闘猿】(ジャイアントゴリラ)と呼ばれる、超危険な魔獣だ。
 中途半端に知恵を持つこの魔獣に狙われたらその時点で命運が尽きる。それが人であろうと、ものであろうとだ。
 その大闘猿が穴の中で蠢くように発生している。
 その数が増え、大闘猿の上に大闘猿が乗り上げてようやく穴から這い出してきたところだった。

「あっぶないところだったわね。
 これは【血抜き】で一気にやっちゃうよ!」

 セトが槍を、イジが大剣を構えて【血抜き】で撃ち漏らした個体を屠る為に位置取る。
 そして蹂躙は始まった。


【大闘猿】の素材は高く売れる。
 アンナリーナも以前にセトと初めて出会った時の大闘猿をギルドで換金した時、その対価にびっくりしたものだ。
 何しろその肉は食用に適さない。
 あとは毛皮や牙、爪であるが意外であったのは骨だ。
 金属に匹敵するほど頑強な大腿骨は十分に武器として使用に耐え、一部の武人の垂涎の的であるという。


「あれ? 何か毛色の違うのがいるよ」

 穴の中にびっしりと詰め込んだようになっている【猿穴】の中に、こちらに背を向けて座り込んでいる個体に目がいった。

「色違い? 亜種かな?」

 鑑定をかけてみると【黄金狒々】と出た。

「狒々かぁ、使えそうなんだけど、生け捕りにして従属させられないかな」

『主人様、狒々は狡猾な魔獣です。
 お使いになるのならアンデッドにして使役する方が安全かと。
 そしてあの黄金狒々は上位種のようです。普通の狒々もアンデッドにして、群れ単位で使役すればお役に立てると思います』

 ナビが意見を挟んできて、アンナリーナは納得する。
 そしてサファケイトでサクッと屠って穴から引き上げた。

 その、アンナリーナの頭の中でひとつのプランが出来上がりつつあった。
【類人猿のアンデッド軍団】
 大闘猿と狒々の2軍に分け、それぞれに向いた仕事を与える。
 特に狒々は木々を伝って移動できるため、広大な魔獣の森への斥候に使える。

 後から懐古した時、この時がアンナリーナが賢者に向かって進み始めた発端だった。

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