407 / 577
第四章
167『アンナリーナなりの考察』
しおりを挟む
「ひょっとして……見込み違いなのかしら」
「リーナ?」
テオドールは訝しげだ。
「時を置かずして起きた2件の襲撃……私たちを含め、皆が同一犯の仕業だと思っていたけれど、根本的に間違っていたのかも。
襲撃犯が別なのなら痕跡も違って当たり前だよね?
ひょっとしたら最初の乗り合い馬車の方は、犯人が人間ですらないかもしれない」
「魔獣の仕業だって言うのか?」
「巨大な飛行型の魔獣なら一切の痕跡を残さず、襲撃を終える事ができる。
飛べる魔獣なら国のひとつやふたつ、越えて来るんじゃないかな」
今まで考察すらしてこなかった可能性に、男たちは固まった。
テオドールだけが頷いている。
「出立するまでにシャルメンタルさんの耳に入れといた方がいいね。
多分だけど、今までは盗賊の襲撃の痕跡しか探してなかったと思うの。
それが魔獣なら探し方も違って来ると思うし」
「確かに、馬車ごといなくなったのなら、人の脚では行けないような森の奥は探さないわな」
ダマスクが納得したように頷くと、冒険者たちは顔色を悪くする。
「そんな魔獣がウロウロしてるんじゃ、いつまで経っても故郷に戻れない……それだけじゃない、そいつは今日にでもこの町を襲って来るかもしれないんだ」
言われてみればその通りである。
アンナリーナは思案を巡らせ、まずシャルメンタルに手紙を書く事にした。
その日の夕刻、先ほど市場で別れた面々とは、酒場での夕食を約束している。
それまでの間に買い物を済ませたアンナリーナたちは件の串焼き屋に足を運んだ。
「嬢ちゃん、さっきは済まなかったなあ。
あれからも売れに売れて結局20本しか残りがないんだ」
「じゃあ、それを。
明日もお邪魔させてもらうので、よろしく」
実はこの急な繁盛は、アンナリーナの注文の為に串焼きを大量に焼き始めたところ、その食欲をそそる匂いにつられて集まった客たちから、その後も口コミで広まり大繁盛となったわけである。そして、それを知らぬのはアンナリーナたちだけであった。
「では、乾杯」
エールの入った杯を掲げ、乾杯の音頭を取ったが、テオドール以外の男たちは顔色が冴えない。
「乗り合い馬車の運行は今のところ無理。馬車と馬は準備出来るが護衛がな、こうなったからには十分な実力を持つ冒険者をそれなりの数雇わない事には許可が下りない。
今のところ南向きは俺たちしかいないし、今ギルドに護衛の依頼を出しているんだが……思わしくないな」
「護衛か……」
テオドールが意味ありげな眼差しを向けてくるなか、アンナリーナは、ダマスクに話しかけた。
「ダマスクさん、私たちは元々王都経由で隣国に行き、そこから船に乗って大陸に渡ろうとしていたんです」
「ワラニア大陸にかい?」
ダマスクが驚いた表情を浮かべた。
「この大陸の西側にある、かなり遠いそうですがその大陸だと思います」
「それは……船旅でも相当かかるそうだが、採取のためかい?」
彼にはアンナリーナが貴重な薬草の採取の為に各国を回っていると話である。
「ええ、そんなんです。
でも、この度の事件で王都方面は通行止め、だから私たちは南のアシードから船が出ていないか、南下するつもりだったんです」
「確かにアシードからも船は出ている。ただ、それほど頻繁ではないぞ?」
「それで十分です。
では、その依頼、私たちがお引き受けしましょうか」
「本当かい?だが、数がなあ」
どうやら乗り合い馬車の組合は頭数を揃えることにこだわっているようだ。
「うちにはあと2人……いや2頭? C級冒険者がいますけど」
「う~ん、まだ足りないなぁ」
「話に割り込んで済まない。
その依頼、俺たちにも受けさせてもらえないだろうか」
そこにはアンナリーナには見知った顔、バルトリを始めジルたちがいた。
「リーナ?」
テオドールは訝しげだ。
「時を置かずして起きた2件の襲撃……私たちを含め、皆が同一犯の仕業だと思っていたけれど、根本的に間違っていたのかも。
襲撃犯が別なのなら痕跡も違って当たり前だよね?
ひょっとしたら最初の乗り合い馬車の方は、犯人が人間ですらないかもしれない」
「魔獣の仕業だって言うのか?」
「巨大な飛行型の魔獣なら一切の痕跡を残さず、襲撃を終える事ができる。
飛べる魔獣なら国のひとつやふたつ、越えて来るんじゃないかな」
今まで考察すらしてこなかった可能性に、男たちは固まった。
テオドールだけが頷いている。
「出立するまでにシャルメンタルさんの耳に入れといた方がいいね。
多分だけど、今までは盗賊の襲撃の痕跡しか探してなかったと思うの。
それが魔獣なら探し方も違って来ると思うし」
「確かに、馬車ごといなくなったのなら、人の脚では行けないような森の奥は探さないわな」
ダマスクが納得したように頷くと、冒険者たちは顔色を悪くする。
「そんな魔獣がウロウロしてるんじゃ、いつまで経っても故郷に戻れない……それだけじゃない、そいつは今日にでもこの町を襲って来るかもしれないんだ」
言われてみればその通りである。
アンナリーナは思案を巡らせ、まずシャルメンタルに手紙を書く事にした。
その日の夕刻、先ほど市場で別れた面々とは、酒場での夕食を約束している。
それまでの間に買い物を済ませたアンナリーナたちは件の串焼き屋に足を運んだ。
「嬢ちゃん、さっきは済まなかったなあ。
あれからも売れに売れて結局20本しか残りがないんだ」
「じゃあ、それを。
明日もお邪魔させてもらうので、よろしく」
実はこの急な繁盛は、アンナリーナの注文の為に串焼きを大量に焼き始めたところ、その食欲をそそる匂いにつられて集まった客たちから、その後も口コミで広まり大繁盛となったわけである。そして、それを知らぬのはアンナリーナたちだけであった。
「では、乾杯」
エールの入った杯を掲げ、乾杯の音頭を取ったが、テオドール以外の男たちは顔色が冴えない。
「乗り合い馬車の運行は今のところ無理。馬車と馬は準備出来るが護衛がな、こうなったからには十分な実力を持つ冒険者をそれなりの数雇わない事には許可が下りない。
今のところ南向きは俺たちしかいないし、今ギルドに護衛の依頼を出しているんだが……思わしくないな」
「護衛か……」
テオドールが意味ありげな眼差しを向けてくるなか、アンナリーナは、ダマスクに話しかけた。
「ダマスクさん、私たちは元々王都経由で隣国に行き、そこから船に乗って大陸に渡ろうとしていたんです」
「ワラニア大陸にかい?」
ダマスクが驚いた表情を浮かべた。
「この大陸の西側にある、かなり遠いそうですがその大陸だと思います」
「それは……船旅でも相当かかるそうだが、採取のためかい?」
彼にはアンナリーナが貴重な薬草の採取の為に各国を回っていると話である。
「ええ、そんなんです。
でも、この度の事件で王都方面は通行止め、だから私たちは南のアシードから船が出ていないか、南下するつもりだったんです」
「確かにアシードからも船は出ている。ただ、それほど頻繁ではないぞ?」
「それで十分です。
では、その依頼、私たちがお引き受けしましょうか」
「本当かい?だが、数がなあ」
どうやら乗り合い馬車の組合は頭数を揃えることにこだわっているようだ。
「うちにはあと2人……いや2頭? C級冒険者がいますけど」
「う~ん、まだ足りないなぁ」
「話に割り込んで済まない。
その依頼、俺たちにも受けさせてもらえないだろうか」
そこにはアンナリーナには見知った顔、バルトリを始めジルたちがいた。
4
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
留学してたら、愚昧がやらかした件。
庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。
R−15は基本です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる