魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

175『アンナリーナの移動型住居仕様馬車』

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 隊商組には見慣れた、アンナリーナの移動型住居とも言える馬車を目の前にして、対した乗り合い馬車組は驚愕している。
 そしてその上、中から出てきたドラゴニュートとオーガを見て腰を抜かさんばかりに驚いていた。

「早く中に入って!出発します!」


 隊商組も初めて入った馬車の中は、見た目より広々していて、真ん中を壁で仕切られている。
 壁のこちら側はテーブルを挟んで進行方向と反進行方向を向いた長椅子があった。

「うん、そうだね……
 ここには全員が座れないから、バルトリさんとあとの人はこちらへ」

 アンナリーナがドアを開けて奥の部屋に招き入れる。
 バルトリを始め、隊商組の冒険者たちが目を瞠った。

「リーナ殿、これは一体……」

「私の【空間魔法】作った部屋だよ。
 ちょうどいいから、昨夜からの事を説明します。そっちにいる人たちもこちらに来てくれるかな」

 アンソニーとアラーニェが現れて、ひとりひとりに紅茶を淹れて渡していく。
 男たちの目はアラーニェに向いたが、彼女の本性を知っているものと、そうでないものとの温度差は激しい。

「少し窮屈だけど掛けて下さい。
 えーっと、どこから話したらいいかな」

 あまり自分が探査系の魔法を使う事を知らせたくないのだが、この場合しょうがない。

「昨夜、村に入って感じた違和感は、時間を追うごとに確信に変わり、私は一晩、まんじりとして過ごしました」

「嬢ちゃん?」

 御者ダマスクが、アンナリーナの次の言葉を待っている。
 冒険者の中には何となく感じるものもいるようだ。

「あの……隊商の人たちを襲った犯人だとは断定できませんが、あの村には私たちに悪意を持つものが、それも多数いました。監視もされていたんです」

 特に隊商組が息を呑み、殺気すら漂う。

「おそらく馬車に細工したのも、その連中でしょう。
 朝になって、おそらく意図したものではなかったのでしょうけど、私が結界を解いた後に細工したんでしょうね。
 連中は今頃、嬉々として後を追って来てるんじゃないでしょうか」

「嬢ちゃん、その……そいつらを捕まえてないのか?」

 至極まっとうな質問だ。

「今現在、どれほどの村人が盗賊団に関わっているのかわからないので、私は一行の無事を優先しました」

 盗賊団の捕獲はアルファ・ケンタウリの憲兵隊に任せるべきだろう。
 ただ今回の件で、これからも村は避けた方がいいとアンナリーナは決心した。

「それと、村の奥に裏街道が走っているようです。
 ダマスクさん、ご存知でした?」

 ダマスクは慌ててかぶりを振る。

「そんなのは聞いたこともない。
 なぁ、嬢ちゃん、それは本当か?」

「私も昨夜気づきました。
 今も私たちを挟み打ちにしようとしているのかずいぶんと飛ばしてますよ。
 ……もう、追い抜きましたが」

 あちらはアンナリーナたちが馬車を変えた事を知る由もない。


「しかしこの馬車はまったく揺れないな」

 そして馬車の中とは思えない内装にも感心しきりだ。

「何も聞かないでいてくれれば、嬉しいです」

 アンナリーナは唇を尖らせている。



 しばらく走らせた馬車が突然止まる。
 そしてアンナリーナは、今皆がいる居間から奥のドアへと消えていった。
 実は先ほど、セトから念話で馬たちの様子を伝えられていた。
 やはり、補助があるとはいえエピオルスのハイペースについて行けなくなっているらしい。
【空間魔法】で簡易な厩舎を作ったアンナリーナは外に向かって昇降口を開け、馬たちを収容してからセトに出発を宣言した。

「熊さん、馬さんたちの世話をお願い」

 馬という足手まといがなくなったエピオルスたちは、さらに速度を上げて、追っ手との距離を引き離した。

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