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第四章
193『ネロの願い』
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「なあ、リーナ。
少し気になる事があるんだが」
最早、単純作業と化した討伐をしていたアンナリーナに、テオドールが話しかける。
「なぁに、熊さん」
「ふと思ったんだが、この “ 湧き ”はこの階層だけなんだろうか」
それは最初から懸念していたことだ。
アンナリーナはテオドールの話の続きを待った。
「これがスタンピートに近いものだとして、あいつらは階層を越える事が出来るとしたら……
階層を上がってくるだけでなく、下りてくることもありえるんじゃないかと」
「!」
アンナリーナは自分たちの後ろの階段に、防壁を作って背後を守る事にした。
もし、気づかないままに後ろから襲われていたら、と背筋が寒くなる。
「ありがとう、熊さん。
そこまで思ってもみなかったよ。
反対に私は上の様子を見に行った方がいいかもしれないと思ってた」
「ああ、俺もそれを考えた。
だが、おそらくヘンリクスたちは3階層で足止めを食ってるだろうから、危険は少ないと思うんだ」
「わかった、では全力でこの階の魔獣を殲滅しよう」
そこにネロが声をかけてきた。
「主人殿、出来ましたらこのたびの骸、幾らかこのネロに下げ渡し願いたい」
「新しい【死者の軍団】を作るのね?
いいよ、いくらでも持って行って。
じゃあ、なるべくきれいなのがいいよね?」
「いえ、もちろんきれいな骸も必要ですが、出来ればそれなりの、迫力ある姿のものもいただきたい」
「オッケー、オッケー。
そっちの方は熊さんたちがちょうどいい具合のを生産してくれているからね。とりあえず全部持って帰るから、あとは好きにして?」
「ありがとうございます。
このネロ、主人殿の期待に全力でお応えします」
これでネロの、敬愛する主人のための最強軍団への道に一歩近づくことになる。
5階層の “ 湧き ”は丸2日かけて、ようやく収まった。
途中、アンナリーナだけが短い仮眠を取ったが、その間もテオドールと従魔たちが存分に働いてくれた。
もちろん “ 素材 ”となった魔獣たちの成れの果てもしっかりと回収され、ようやく6階層への階段へとたどり着く。
アンナリーナは全員に外的要因から身を守るための結界……バリアを張って階段を進んでいった。
「どうやら、この階での “ 湧き ”はなかったようね」
そう言ったアンナリーナは、6階層で慎重に【探査】をかけて索敵していた。
だが、魔獣の数は多い。
アンナリーナの脳内マップには赤い点が多数表示されており、まるで侵入者を待ち受けているようだ。
「……先行しているパーティは見当たらないわね」
「もう、下に降りたのかもしれないし、そうでないかもしれない」
「うん、そうだね。
私たちもそんな風に思われているかもだから、一度地上に戻ろうか」
このたびの、あの “ 湧き ”の報告もしなければならない。
アンナリーナは5階層の目立たない場所に転移点を置いて、来た道を引き返していった。
少し気になる事があるんだが」
最早、単純作業と化した討伐をしていたアンナリーナに、テオドールが話しかける。
「なぁに、熊さん」
「ふと思ったんだが、この “ 湧き ”はこの階層だけなんだろうか」
それは最初から懸念していたことだ。
アンナリーナはテオドールの話の続きを待った。
「これがスタンピートに近いものだとして、あいつらは階層を越える事が出来るとしたら……
階層を上がってくるだけでなく、下りてくることもありえるんじゃないかと」
「!」
アンナリーナは自分たちの後ろの階段に、防壁を作って背後を守る事にした。
もし、気づかないままに後ろから襲われていたら、と背筋が寒くなる。
「ありがとう、熊さん。
そこまで思ってもみなかったよ。
反対に私は上の様子を見に行った方がいいかもしれないと思ってた」
「ああ、俺もそれを考えた。
だが、おそらくヘンリクスたちは3階層で足止めを食ってるだろうから、危険は少ないと思うんだ」
「わかった、では全力でこの階の魔獣を殲滅しよう」
そこにネロが声をかけてきた。
「主人殿、出来ましたらこのたびの骸、幾らかこのネロに下げ渡し願いたい」
「新しい【死者の軍団】を作るのね?
いいよ、いくらでも持って行って。
じゃあ、なるべくきれいなのがいいよね?」
「いえ、もちろんきれいな骸も必要ですが、出来ればそれなりの、迫力ある姿のものもいただきたい」
「オッケー、オッケー。
そっちの方は熊さんたちがちょうどいい具合のを生産してくれているからね。とりあえず全部持って帰るから、あとは好きにして?」
「ありがとうございます。
このネロ、主人殿の期待に全力でお応えします」
これでネロの、敬愛する主人のための最強軍団への道に一歩近づくことになる。
5階層の “ 湧き ”は丸2日かけて、ようやく収まった。
途中、アンナリーナだけが短い仮眠を取ったが、その間もテオドールと従魔たちが存分に働いてくれた。
もちろん “ 素材 ”となった魔獣たちの成れの果てもしっかりと回収され、ようやく6階層への階段へとたどり着く。
アンナリーナは全員に外的要因から身を守るための結界……バリアを張って階段を進んでいった。
「どうやら、この階での “ 湧き ”はなかったようね」
そう言ったアンナリーナは、6階層で慎重に【探査】をかけて索敵していた。
だが、魔獣の数は多い。
アンナリーナの脳内マップには赤い点が多数表示されており、まるで侵入者を待ち受けているようだ。
「……先行しているパーティは見当たらないわね」
「もう、下に降りたのかもしれないし、そうでないかもしれない」
「うん、そうだね。
私たちもそんな風に思われているかもだから、一度地上に戻ろうか」
このたびの、あの “ 湧き ”の報告もしなければならない。
アンナリーナは5階層の目立たない場所に転移点を置いて、来た道を引き返していった。
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