467 / 577
第四章
227『マチルダとトラサルディ』
しおりを挟む
うつらうつらしていたアンナリーナが目を覚ましたのは、マチルダが寝室に入ってきたからだった。
「マチルダさん……」
「リーナ様、大変でしたね。
さあ、これを飲んで、またお休みになって下さい」
差し出された盆にのっていたのはガラスのコップ。
すぐにアンナリーナは、その中身に気づいた。
「蜂蜜レモン水……」
「しばらくまともな食事を摂っておられないと聞きました。
召しあがれるようなら、お粥をお持ちしますが……どうなさいます?」
「ありがとう。
では、いただくわ」
ドアの外で気配がする。
さほど待たずにアンソニーが現れて、上体を起こしたアンナリーナの前に、前世の映画で見た、ベッドの上で朝食を摂るためのミニテーブルが置かれた。
そこには白地にピンクのウサギの柄の1人用の土鍋と、揃いのとんすい、そしてレンゲが置かれていた。
アンソニーが恭しく蓋を取ると白い湯気が上がり、中から黄色い柔らかそうな食べ物が姿を現した。
「わあ!」
「玉子のおじやでございます。
熱いので気をつけて召し上がって下さい」
鰹だしと薄口醤油と塩の味つけ。
ご飯は一度炊飯したものを使った。
あと【異世界買物】で購入したブランド玉子。
アンナリーナの目の前でマチルダが取り分けてくれる。
それにふうふうと息を吹きかけて、スプーンで少しだけすくって口にした。
「美味しい」
優しい味の玉子おじや。
それをアンナリーナはすばらしい食欲を発揮して平らげていく。
「食欲があって本当にようございました」
アンソニーとマチルダが嬉しそうだ。
「今日はぜひ聞いていただきたい事柄があって参りました」
今アンナリーナの前に跪いているのは、スケルトンのトラサルディだ。
「はい、何でしょう?」
「まずはご報告を。
先日、テオドール殿とイジ殿から、ポーション販売の引き継ぎを受けました。
つつがなく取り引きを終えたのですが……リーナ様、これまではずいぶんとどんぶり勘定だったのですね。
ちゃんとした帳簿が見当たらないのですが、今までどうなさっていたのでしょうか?」
トラサルディは生前、商家の店主だった。
その彼にしたらここの経営は耐えられないものだったのだろう。
「リーナ様、この部門をすべて任せていただけませんでしょうか?」
骸骨のオーラが燃えている。
どうやらトラサルディの商人魂に火をつけてしまったようだ。
「う、うん、構わないよ。
いえ、よろしくお願いします」
眼窩だけの目にじろりと睨まれて、アンナリーナは飛び上がった。
ポーション類の販売は、最初はボランティアのようなつもりで始めたのだが、アンナリーナの作るポーションも薬も評判が良くて、特にポーションはその高い効果に、ギルドなどでは入荷すると取り合いになると言う。
「もう少し販路を広げようと考えています。リーナ様、こんな状態ではもったいないですよ」
そう言って差し出したのは、アンナリーナが今販売している商品の一覧表。
すでにそこには注文数が書き込まれている。
「ひゃい、お任せします」
「リーナ様、出来ますれば次のお出かけの前に、こちらの商品の補充をよろしくお願いします」
骸骨の、本来ないはずの表情が怖い。
アンナリーナはコクコク頷きながら、このスケルトンには絶対に逆らわないで居ようと、強く思ったのだ。
「マチルダさん……」
「リーナ様、大変でしたね。
さあ、これを飲んで、またお休みになって下さい」
差し出された盆にのっていたのはガラスのコップ。
すぐにアンナリーナは、その中身に気づいた。
「蜂蜜レモン水……」
「しばらくまともな食事を摂っておられないと聞きました。
召しあがれるようなら、お粥をお持ちしますが……どうなさいます?」
「ありがとう。
では、いただくわ」
ドアの外で気配がする。
さほど待たずにアンソニーが現れて、上体を起こしたアンナリーナの前に、前世の映画で見た、ベッドの上で朝食を摂るためのミニテーブルが置かれた。
そこには白地にピンクのウサギの柄の1人用の土鍋と、揃いのとんすい、そしてレンゲが置かれていた。
アンソニーが恭しく蓋を取ると白い湯気が上がり、中から黄色い柔らかそうな食べ物が姿を現した。
「わあ!」
「玉子のおじやでございます。
熱いので気をつけて召し上がって下さい」
鰹だしと薄口醤油と塩の味つけ。
ご飯は一度炊飯したものを使った。
あと【異世界買物】で購入したブランド玉子。
アンナリーナの目の前でマチルダが取り分けてくれる。
それにふうふうと息を吹きかけて、スプーンで少しだけすくって口にした。
「美味しい」
優しい味の玉子おじや。
それをアンナリーナはすばらしい食欲を発揮して平らげていく。
「食欲があって本当にようございました」
アンソニーとマチルダが嬉しそうだ。
「今日はぜひ聞いていただきたい事柄があって参りました」
今アンナリーナの前に跪いているのは、スケルトンのトラサルディだ。
「はい、何でしょう?」
「まずはご報告を。
先日、テオドール殿とイジ殿から、ポーション販売の引き継ぎを受けました。
つつがなく取り引きを終えたのですが……リーナ様、これまではずいぶんとどんぶり勘定だったのですね。
ちゃんとした帳簿が見当たらないのですが、今までどうなさっていたのでしょうか?」
トラサルディは生前、商家の店主だった。
その彼にしたらここの経営は耐えられないものだったのだろう。
「リーナ様、この部門をすべて任せていただけませんでしょうか?」
骸骨のオーラが燃えている。
どうやらトラサルディの商人魂に火をつけてしまったようだ。
「う、うん、構わないよ。
いえ、よろしくお願いします」
眼窩だけの目にじろりと睨まれて、アンナリーナは飛び上がった。
ポーション類の販売は、最初はボランティアのようなつもりで始めたのだが、アンナリーナの作るポーションも薬も評判が良くて、特にポーションはその高い効果に、ギルドなどでは入荷すると取り合いになると言う。
「もう少し販路を広げようと考えています。リーナ様、こんな状態ではもったいないですよ」
そう言って差し出したのは、アンナリーナが今販売している商品の一覧表。
すでにそこには注文数が書き込まれている。
「ひゃい、お任せします」
「リーナ様、出来ますれば次のお出かけの前に、こちらの商品の補充をよろしくお願いします」
骸骨の、本来ないはずの表情が怖い。
アンナリーナはコクコク頷きながら、このスケルトンには絶対に逆らわないで居ようと、強く思ったのだ。
5
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの
山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。
玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。
エリーゼ=アルセリア。
目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。
「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」
「……なぜ、ですか……?」
声が震える。
彼女の問いに、王子は冷然と答えた。
「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」
「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」
「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」
広間にざわめきが広がる。
──すべて、仕組まれていたのだ。
「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」
必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。
「黙れ!」
シャルルの一喝が、広間に響き渡る。
「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」
広間は、再び深い静寂に沈んだ。
「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」
王子は、無慈悲に言葉を重ねた。
「国外追放を命じる」
その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。
「そ、そんな……!」
桃色の髪が広間に広がる。
必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。
「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」
シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。
まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。
なぜ。
なぜ、こんなことに──。
エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。
彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。
それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。
兵士たちが進み出る。
無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。
「離して、ください……っ」
必死に抵抗するも、力は弱い。。
誰も助けない。エリーゼは、見た。
カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。
──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。
重い扉が開かれる。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる