魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

文字の大きさ
469 / 577
第四章

229『初接触』

しおりを挟む
【ブエルネギア大陸】旧魔族国、魔人領ドゥンケルス。
 魔人領に多々ある衛星都市のひとつだ。
 この大陸では本当の意味での王国や帝国というものは絶えて久しい。
 厳密に言えば国王や帝王と呼ばれる者たちがいないわけではない。
 だが政は完全に民主化され、今の王たちは単に国の象徴となっていた。

 そのドゥンケルスの町に入る正門である南門には、この町に入るための関所があった。
 ここには多数の兵が配置され、日々通行者の検問と入町料の徴収が行われていた。


 ようやく門の前に並ぶ行列の最後尾に着いたアンナリーナは、その巨大な門を見上げてびっくりしていた。
 これは、この大陸には巨人族もいて、この国の建物は彼らのために大振りに出来ているためだ。確かに目の前の馬車もかなり大きい。

「こんにちは」

 ようやく順番が回ってきたアンナリーナが、笑顔で挨拶する。
 するとペアで対応していた兵士たちが、一瞬困惑したように顔をしかめた。そして一人が番所のような部屋に入っていく。
 そしてすぐに別のペアが出てきて、アンナリーナの後ろに並んでいた者たちへの対応を始める。
 アンナリーナは手招きされて列から外れた。


「ようこそお嬢さん。
 お嬢さんは “ 異邦人 ”だね?
 同行者はいないの?」

 兵士に連れていかれた部屋の中には、兵士たちよりいくらか年上の男が待っていて、アンナリーナに座るように勧めると自分も座った。
 そして、いくらか訛りのある大陸共通語で話しかけてきた。

「あの……私」

 口籠るアンナリーナを見て、訳ありと判断した男は優しく話しを続けた。

「お嬢さんはこの大陸の住人ではないね?
 この言葉を話すのはあちらの大陸の人間だ。しかし珍しいね。
 この町に “ 異邦人 ”がやってくるのは、かなり珍しい事なんだよ?」

「あの、私……乗っていた船が沈没して……備え付けられていたボートに乗って脱出したんです。
 それから何日か経って砂浜に上陸して、それから歩いてここに来ました」

「何?! 船が沈没?!
 それは一体いつの事だ?」

 男の顔つきが変わった。
 アンナリーナの肩を掴んで揺さぶらんばかりだ。

「わかり……ません。
 海に何日いたのか、わからないのです。上陸してからは5日?そのくらいです」

 男に指図された兵士が慌てて部屋を出て行く。質問は続いた。

「お嬢さんはずっとひとり?
 同行者は?」

「3人、一緒でした。
 でもここに来るまでにはぐれてしまって」

 それだけで男は察した。
 どのような道筋をたどってここまで来たのか、その行程の間にひとり、またひとりと削れて行きながらこの少女を守ったのだろう。
 男は、力尽きただろう、この少女の同行者の冥福を祈った。

「それでも。
 よく無事にたどり着いたね。
 ようこそドゥンケルスへ。
 私はこの関所を束ねているエンドルティーノ。
 少し休憩して、お嬢さんの詳しい話を聞こうか」

 どうやら、つつがなく潜り込めたようだ。
 アンナリーナはしめしめと内心でほくそ笑んだ。

「はい、ありがとうございます」

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。  玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。  エリーゼ=アルセリア。  目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。 「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」 「……なぜ、ですか……?」  声が震える。  彼女の問いに、王子は冷然と答えた。 「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」 「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」 「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」  広間にざわめきが広がる。  ──すべて、仕組まれていたのだ。 「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」  必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。 「黙れ!」  シャルルの一喝が、広間に響き渡る。 「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」  広間は、再び深い静寂に沈んだ。 「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」  王子は、無慈悲に言葉を重ねた。 「国外追放を命じる」  その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。 「そ、そんな……!」  桃色の髪が広間に広がる。  必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。 「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」  シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。  まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。  なぜ。  なぜ、こんなことに──。  エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。  彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。  それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。 兵士たちが進み出る。  無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。 「離して、ください……っ」  必死に抵抗するも、力は弱い。。  誰も助けない。エリーゼは、見た。  カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。  ──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。  重い扉が開かれる。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

処理中です...