16 / 126
戯言
しおりを挟む
遠い國の昔話を致しましょう。
ある妃嬪が言った。
一人の姫宮がおりました。
その姫宮は、義母に疎まれ、婚期を逃してしまいました。
その姫宮は大層お悲しみになりました。
その姫宮には、彼の義母が産んだ弟がいました。歳は十近く離れた弟でした。
身体の弱い弟を助けているうちに、ふと、愛着が湧いてしまい、また、それが別の感情に変わってしまいました。それは、禁忌で御座いました。
その姫宮は、弟が位を父宮から受け継いだ日、とても裏切られた気がしたそうです。後宮に、沢山の姫君が入って来ました。
姫宮は、弟の補佐になりました。それも、弟が望んだことでした。姫宮は大層お喜びになりました。婚期を逃したことも、全て忘れられました。
姫宮は賢しいお人で、臣下に尊ばれ、愛されておりました。ですが、義母には疎んじられており、宗室の宴には、必ず招待されませんでした。
姫宮が三十路に足を踏み入れた頃でした。
寵姫が、姫宮を産みました。
弟に恋情を抱いてしまった姫宮は、とても心を痛められました。
ある時、姫宮は仰せになりました。
『私をお前の後宮に、入れて。』
姫宮は秘密裏に弟の妃になりました。ですが、それは、誰にも知られていないことでした。
姫宮は、女三の宮を産みました。
しかし、その姫は父と母を隠す為、市井に落とされてしまいました。
姫宮は剣で首を掻っ切って、自害なされました。笑っていらっしゃいました。
女一の宮は、寵姫によって、二十一になるまで、幽閉されておりました。
やっと出られ、本来の身分を取り戻した時には、やはり、婚期を逃していました。
それを、一人の青年が慰めましたのです。一の宮は、その青年に心を奪われてしまいました。
一の宮が降嫁すれば良い。ですが、その青年は、妹宮の夫君でした。
落としめられた一の宮は、遂に罪人として流されることになりました。
そして、その一の宮は最後の日、池に飛び込み、こう、仰ったのです。
『今は静かに眠りたい。』
そのまま、一の宮は流されました。
そして、彼の姫宮は、九泉で苦痛に喘いでいると。
恐ろしい話でありますわ。
「昔話は以上に御座います。」
その妃嬪は立ち上がって、背を向けて言った。
「後宮とは、恐ろしき所なり。」
ある妃嬪が言った。
一人の姫宮がおりました。
その姫宮は、義母に疎まれ、婚期を逃してしまいました。
その姫宮は大層お悲しみになりました。
その姫宮には、彼の義母が産んだ弟がいました。歳は十近く離れた弟でした。
身体の弱い弟を助けているうちに、ふと、愛着が湧いてしまい、また、それが別の感情に変わってしまいました。それは、禁忌で御座いました。
その姫宮は、弟が位を父宮から受け継いだ日、とても裏切られた気がしたそうです。後宮に、沢山の姫君が入って来ました。
姫宮は、弟の補佐になりました。それも、弟が望んだことでした。姫宮は大層お喜びになりました。婚期を逃したことも、全て忘れられました。
姫宮は賢しいお人で、臣下に尊ばれ、愛されておりました。ですが、義母には疎んじられており、宗室の宴には、必ず招待されませんでした。
姫宮が三十路に足を踏み入れた頃でした。
寵姫が、姫宮を産みました。
弟に恋情を抱いてしまった姫宮は、とても心を痛められました。
ある時、姫宮は仰せになりました。
『私をお前の後宮に、入れて。』
姫宮は秘密裏に弟の妃になりました。ですが、それは、誰にも知られていないことでした。
姫宮は、女三の宮を産みました。
しかし、その姫は父と母を隠す為、市井に落とされてしまいました。
姫宮は剣で首を掻っ切って、自害なされました。笑っていらっしゃいました。
女一の宮は、寵姫によって、二十一になるまで、幽閉されておりました。
やっと出られ、本来の身分を取り戻した時には、やはり、婚期を逃していました。
それを、一人の青年が慰めましたのです。一の宮は、その青年に心を奪われてしまいました。
一の宮が降嫁すれば良い。ですが、その青年は、妹宮の夫君でした。
落としめられた一の宮は、遂に罪人として流されることになりました。
そして、その一の宮は最後の日、池に飛び込み、こう、仰ったのです。
『今は静かに眠りたい。』
そのまま、一の宮は流されました。
そして、彼の姫宮は、九泉で苦痛に喘いでいると。
恐ろしい話でありますわ。
「昔話は以上に御座います。」
その妃嬪は立ち上がって、背を向けて言った。
「後宮とは、恐ろしき所なり。」
0
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる