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ラブコメ主人公、今日もギリギリの試練です
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僕の家は大学の同級生たちの溜まり場になっている。誰かしらがふらっと訪れては適当にくつろぎ、雑談し、時には泊まっていく。
青春の舞台だ。
そんな中、今日は富美香が遊びに来た。
彼女は軽い生地のふわっとしたスカートを履いていて、その姿が妙に可愛らしい。
正直に言うと、僕は富美香のことが好きだ。
気の強いところもあるけど、時々見せる無防備な表情がたまらなく愛おしい。
そう、無防備さが。
「昨日さ、動画観てたら止まんなくなってさー、寝不足~」
そう言いながら、彼女は床に寝転がった。
「おいおい、そんなところで寝るなよ。すぐにみんな来るぞ?」
しかし、返事はない。
彼女は秒速で眠りの世界に落ちていた。横向きにS字の形になり、規則正しい寝息を立てている。
「すぅ…すぅ…すぅ…」
なんて無防備な……。そしてやっぱりかわええ…。
ふと目を向けると、スカートの裾が微妙にめくれ、お尻側のパンツがちらりと見えていた。
サーモンピンク…か…。
僕は思わず視線をフォーカスする。
見てはいけない、見てはいけない、と思いながらも、目が離せない。
しかし、次の瞬間、冷静になった。
このあと、他の男メンバーが授業前に来るじゃないか!?
このままでは富美香のパンツがみんなに見られてしまう。それは僕にとっても由々しき問題だ。
せっかく僕だけが見れたのに、他の男に見られるのは許せない!
いや、そうじゃない。富美香の名誉のためだ!
僕は富美香を起こさず、そっとスカートを元の位置に戻す作戦に出た。
スカートの裾を親指と人差し指で慎重につまみ、ゆっくりと持つ。
しかし、その瞬間。
「んん~…むにゃ…」
富美香が寝返りを打った。
やばい!この状態でバレたら僕がわざわざスカートをめくっていたと誤解される!
さらに悪いことに、寝返りの勢いでスカートがさらに捲れてしまい、お尻側だけでなく前側まで見えそうになってしまった。
意外に布面積が狭いな…。
スリル満点すぎる。
そのとき、僕の目覚まし時計が目に入った。
やばい! あと1分でアラームが鳴る設定になっている!
登校準備の時間を早めに設定してたんだ、過去の僕!
急いで止めないと大音量で鳴り響き、富美香が目を覚ましてしまう。
しかし、いまスカートを戻す手を放したら、太ももにパサッと触れて彼女を起こしてしまうかもしれない。
僕は苦肉の策で、足の指でスカートの裾をつまんだまま、体をギリギリ伸ばして目覚まし時計を止めることに成功した。
だが、次なるピンチが訪れる。
テーブルの上のマラカスが落ちそう。
棚の上のペンが転がりそう。
スタンドライトが倒れそう。
僕はそれぞれに手足を伸ばし、アクロバティックな体勢で対応する。
完全にツイスターゲームのようになっていた。
ラブコメ小説の主人公ってここまでしないといけないのかよ。
しかしさらなるピンチが、そのときスマホの着信音が鳴りはじめた。
ピロ…
「やばっ!」
反射的に右手でスマホを取って止めたが、その瞬間スカートをつまんでいた足からスルリと布が滑り落ちる。
「しまっ……!」
富美香がまた寝返りを打った。
「むにゃ…」
起きてしまう!!
僕はとっさにスカートをくわえた。いや、なにやってんだ僕!?
右手にはスマホ。
左手にはマラカス。
足でライトとペンを押さえ、
口にはスカート。
完全に変態である。
「やべぇ……」
そんな中、指で挟んでいたマラカスが今にも落ちそうになった。
握力が…もうダメだ……!
万事休す。
僕はイチかバチかの賭けに出た。
すべての物を放り投げ、スカートを手放し、富美香を思い切り抱き寄せた。
「地震だ!!!」
ガターン!
勢いでテーブルがひっくり返り、部屋中に物が散乱する。
富美香は驚いて目を覚ました。
「な、なに!? 地震!?」
僕は覆いかぶさるように彼女を守る体勢になっていた。
「大丈夫か!? 」
富美香は呆然としたあと、しばらく僕を見つめ、やがて顔を赤らめた。
「……守ってくれたのね。ありがとう……」
彼女はそっと目を閉じた。
キス……する流れ?
僕はゆっくりと顔を近づけた。
だが、その瞬間
「おーい!来たぞー!」
ドアが開き、他の男メンバーたちが入ってきた。
「……え?」
密着したふたり、散乱した部屋、覆いかぶさる僕。
「え、おまえらなにしてんの?」
全員が騒然とする。
富美香は涙目でみんなを見つめながら、震える声で言った。
「今の……大地震から守ってくれたの……私、死んでたかも……みんなは大丈夫だったの?」
「いやー直下型だったな!」
「地震?なに言ってんだお前ら?」
全員が首をかしげた。
僕は適当に場を取り繕うしかなかった。
「まあまあ、みんな生き残れてよかったよ!大学行こうぜ!さあさあ!」
こうして、僕の人生で最もスリリングで、そしてたぶん最もラッキーな一日は幕を閉じた。
青春の舞台だ。
そんな中、今日は富美香が遊びに来た。
彼女は軽い生地のふわっとしたスカートを履いていて、その姿が妙に可愛らしい。
正直に言うと、僕は富美香のことが好きだ。
気の強いところもあるけど、時々見せる無防備な表情がたまらなく愛おしい。
そう、無防備さが。
「昨日さ、動画観てたら止まんなくなってさー、寝不足~」
そう言いながら、彼女は床に寝転がった。
「おいおい、そんなところで寝るなよ。すぐにみんな来るぞ?」
しかし、返事はない。
彼女は秒速で眠りの世界に落ちていた。横向きにS字の形になり、規則正しい寝息を立てている。
「すぅ…すぅ…すぅ…」
なんて無防備な……。そしてやっぱりかわええ…。
ふと目を向けると、スカートの裾が微妙にめくれ、お尻側のパンツがちらりと見えていた。
サーモンピンク…か…。
僕は思わず視線をフォーカスする。
見てはいけない、見てはいけない、と思いながらも、目が離せない。
しかし、次の瞬間、冷静になった。
このあと、他の男メンバーが授業前に来るじゃないか!?
このままでは富美香のパンツがみんなに見られてしまう。それは僕にとっても由々しき問題だ。
せっかく僕だけが見れたのに、他の男に見られるのは許せない!
いや、そうじゃない。富美香の名誉のためだ!
僕は富美香を起こさず、そっとスカートを元の位置に戻す作戦に出た。
スカートの裾を親指と人差し指で慎重につまみ、ゆっくりと持つ。
しかし、その瞬間。
「んん~…むにゃ…」
富美香が寝返りを打った。
やばい!この状態でバレたら僕がわざわざスカートをめくっていたと誤解される!
さらに悪いことに、寝返りの勢いでスカートがさらに捲れてしまい、お尻側だけでなく前側まで見えそうになってしまった。
意外に布面積が狭いな…。
スリル満点すぎる。
そのとき、僕の目覚まし時計が目に入った。
やばい! あと1分でアラームが鳴る設定になっている!
登校準備の時間を早めに設定してたんだ、過去の僕!
急いで止めないと大音量で鳴り響き、富美香が目を覚ましてしまう。
しかし、いまスカートを戻す手を放したら、太ももにパサッと触れて彼女を起こしてしまうかもしれない。
僕は苦肉の策で、足の指でスカートの裾をつまんだまま、体をギリギリ伸ばして目覚まし時計を止めることに成功した。
だが、次なるピンチが訪れる。
テーブルの上のマラカスが落ちそう。
棚の上のペンが転がりそう。
スタンドライトが倒れそう。
僕はそれぞれに手足を伸ばし、アクロバティックな体勢で対応する。
完全にツイスターゲームのようになっていた。
ラブコメ小説の主人公ってここまでしないといけないのかよ。
しかしさらなるピンチが、そのときスマホの着信音が鳴りはじめた。
ピロ…
「やばっ!」
反射的に右手でスマホを取って止めたが、その瞬間スカートをつまんでいた足からスルリと布が滑り落ちる。
「しまっ……!」
富美香がまた寝返りを打った。
「むにゃ…」
起きてしまう!!
僕はとっさにスカートをくわえた。いや、なにやってんだ僕!?
右手にはスマホ。
左手にはマラカス。
足でライトとペンを押さえ、
口にはスカート。
完全に変態である。
「やべぇ……」
そんな中、指で挟んでいたマラカスが今にも落ちそうになった。
握力が…もうダメだ……!
万事休す。
僕はイチかバチかの賭けに出た。
すべての物を放り投げ、スカートを手放し、富美香を思い切り抱き寄せた。
「地震だ!!!」
ガターン!
勢いでテーブルがひっくり返り、部屋中に物が散乱する。
富美香は驚いて目を覚ました。
「な、なに!? 地震!?」
僕は覆いかぶさるように彼女を守る体勢になっていた。
「大丈夫か!? 」
富美香は呆然としたあと、しばらく僕を見つめ、やがて顔を赤らめた。
「……守ってくれたのね。ありがとう……」
彼女はそっと目を閉じた。
キス……する流れ?
僕はゆっくりと顔を近づけた。
だが、その瞬間
「おーい!来たぞー!」
ドアが開き、他の男メンバーたちが入ってきた。
「……え?」
密着したふたり、散乱した部屋、覆いかぶさる僕。
「え、おまえらなにしてんの?」
全員が騒然とする。
富美香は涙目でみんなを見つめながら、震える声で言った。
「今の……大地震から守ってくれたの……私、死んでたかも……みんなは大丈夫だったの?」
「いやー直下型だったな!」
「地震?なに言ってんだお前ら?」
全員が首をかしげた。
僕は適当に場を取り繕うしかなかった。
「まあまあ、みんな生き残れてよかったよ!大学行こうぜ!さあさあ!」
こうして、僕の人生で最もスリリングで、そしてたぶん最もラッキーな一日は幕を閉じた。
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