ムズキュン注意報!7分で恋のドキドキ完結

もっくん

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ボクサー旦那は影武者です

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女一人暮らしを始めた私、咲織さおり
防犯対策はバッチリ!
のはずだった。

実は、私は過去にストーカー被害に遭ったことがある。
幸い大きな被害を受けたわけでは無いがかなり面倒な思いをした。
結局引っ越した。

その経験から、男性に対して警戒心が強くなり、必要以上に距離を取るようになってしまった。
つきあう男性はこっちで選べばいい。
だからこそ、今回も完璧な防犯対策を施したつもりだった。

映写装置を使って、窓のカーテンにシャドウボクシングをする男性のシルエットを投写。
ベランダにはディスカウントストアで適当に買ったボクサーのトランクスとガウン、ついでにチャンピオンベルトを吊るしておいた。
玄関にも有名チャンピオンっぽい人のステッカー。ボクシングには詳しくないけど。
完璧な設定。
これで変な男が寄りつくことはない。
そう、安心しきっていた。
しかし

 ピンポーン


宅配頼んでないけど誰? 
緊張しながらドアの覗き穴を覗くと、そこには細マッチョの若い男性が立っていた。
爽やかな笑顔と落ち着いた表情。
やばい、意識高い系のセールスマンか?

「すみません、突然。でもどうしてもお話ししたくて!」
 「……宗教なら結構です」
 「違います! 俺、向かいのマンションに住んでるんですけど、あなたの旦那さん?
いや、あのシャドウボクシングのフォームに惚れました!」
 ……は?
「いや、あのシルエットの旦那さん、相当な腕前ですよね? 俺、ボクサー志望なんです! ぜひ弟子入りさせてください!」
その場でシャドウボクシングを始める男性。

まさか適当に準備した防犯対策が別の形で影響を。

「いやいや、充分強そうですし……」
「いやいやいや! あんな見事なフォーム、初めて見ました! ぜひ教えてください!」
……これはこれでめんどくさい! 

「突然すみません。お部屋に上がるのは失礼なので、ここで待ちます」
その言葉に、私は驚いた。
こんなに押しが強そうなのに、意外と礼儀正しい。

「いや……さすがにそれは悪いし……まあ、入って」
玄関までシャドウボクシングされたら余計面倒だ。
仕方なく家に上げて、お茶を出す。

「ご主人、帰りが遅いんですか?」
「う、うん……。ま、待ってても帰ってこなかったら諦めてね?」
豪太と名乗る彼は、思ったより実直で、誠実そうな雰囲気を持っていた。

部屋を見渡し、ピンクのカーテンやぬいぐるみ、テーブルの上の花を見て、
「へえ、ご主人、男らしくて強いのに趣味はめちゃくちゃ可愛いんですね!」
架空のボクサー旦那に勝手にほっこりしている。
すると

 ピンポーン


またボクサー?
不機嫌にドアを開けると、目出し帽の男が立っていた。

「黙って金を出せ、このアマ!」
……え?強盗?防犯の意味ないじゃん!

心臓が凍りつく。そのまま足が動かない。

手に刃物らしきものを持って押し入ってくる。
やばい…。


だが次の瞬間——

 バシュッ!

豪太の鋭いパンチが炸裂し、強盗がスローモーションのように倒れる。
1発KOだ!

「……うお、マジか」
呆然とする私。

豪太が冷静に対応して110番通報。
警察が駆けつけ、事情聴取が始まる。
強盗は眼を覚ましたところで手錠を掛けられて連行されていった。

「怪我はないですか? 盗られたものは?」
「い、いえ、大丈夫です」 
「ええと、お二人はご夫婦?」
「い、いえ、違います!」
またまた面倒な状況に…

「旦那さんは別にいます!このあと旦那さんが帰ってくるんですよね? 凄腕ボクサーなんですよ。」
豪太が嬉々として答えている。

「いえ……その……実は……」
もう無理だ。つじつまが合わない。
仕方なく、全てを白状した。

「えええ~ボクシングをコーチして貰おうと思ったのに!」
肩を落とす豪太。

「まあ、でもこれだけ頼りになるボディガードがいれば安心ですね。これ以上邪魔してもいけませんのでこれで。」
妙に気を遣ってくれる警察官たちは帰っていった。


静かになった部屋。なんとなく気まずい。
「……あの」
私は意を決して、豪太の方を見た。
豪太と一緒なら警戒心なくこれからやっていけそうな気がした。

「よかったら、その…私の彼氏になってくれない?」
「え!?マジですか?」
こうして、なりゆきで私は豪太と付き合うことになった。

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