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この写真、将来の結婚アルバムに収録予定です
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女友達の恵里から「ねえ、変身写真館の無料キャンペーンに当たったの!」とテンション高めのLINEが届いた。
よくよく聞くと、撮影は男女ペアのみらしい。
「だからさ、あんた一緒に来なさいよ」
「……いや、俺は遠慮しとく」
「いいから来なさい!」
いきなりの強制イベント。どうやら彼女は自分の姿をSNSにアップして「いいね」を稼ぐ計画らしい。
僕はただの背景だ。
どうせ撮った写真もトリミングされる運命なのだろう。
「だったら別に俺じゃなくてもよくない?」
「ダメ!あんたなら遠慮なく扱えるから!」
ひどい言い草だが、どうせ他に予定もない。
仕方なくOKすることにした。
迎えた当日。写真館に到着すると、受付の女性がにこやかに出迎えた。
「カップルでのご来店ありがとうございます!」
「いや、カップルじゃなくて……」
「はいはい、照れなくて大丈夫ですよ~!」
聞く耳を持たない受付スタッフ。
僕たちは半ば強引にスタジオへと案内された。
そして始まる変身撮影。
第一弾──ゴスロリと執事。
恵里は黒と赤のフリフリのドレス。
僕は燕尾服に身を包み、「お嬢様、お手をどうぞ」なんてポーズを決める。
第二弾──姫と武士。
僕は刀を携え、恵里を守るポーズ。
「戦が終わったら、お前を迎えに行く……!」と謎のセリフを言わされる。
「ちょ、ちょっと恥ずかしいんだけど……」
「いいからキメ顔!」
第三弾──宇宙服と宇宙人。
「なぜ急にSF……?」
「いいからこの触角つけなさい!」
恵里は銀色のボディスーツ、僕はなぜか緑の宇宙人マスクを被せられた。
ポーズは「地球人に恋をした宇宙人」らしい。
「う、宇宙の彼方から君に会いにきたよ……」
「もっと感情込めなさい!」
そして撮影はどんどんエスカレートしていく。
「はい、次は手を繋いでくださいね~」
「えっ?」
「次は抱き合って!」
「ええっ?」
「はい、次はキス!」
「ちょ、ちょっと待った!!」
もはや趣旨が変わってきている。
僕は焦るが、恵里はノリノリ。
しかも僕の顎をクイッと持ち上げてくるではないか。
「ほら、ちゃんとキスしなさいよ」
「お、お前、楽しんでるだろ……?」
「まあね!」
ヤケクソになりながらも指示に従う僕。そして、ついに最終形態。
「最後は水着で撮りましょう!」
「無理無理無理無理!!」
抵抗むなしく、更衣室に押し込まれ、気がつけば僕は海パン姿、恵里はビキニ姿。
お互い視線を合わせられず、妙な空気が流れる。
「……お前、そんな格好することあるんだな」
「そっちこそ……案外筋肉あるのね」
なんか、気恥ずかしい。けれど、スタッフは容赦なく「はい、密着して!」「もっと近く!」と煽ってくる。
「せっかくだし、肩くらい組んでみる?」
「……まあ、それくらいなら」
そして撮影が終わり、写真を確認すると──
「ちょっ……トリミングできないじゃん!」
どの写真も二人の距離が近すぎて、トリミング不可能。
SNSアップ用の「恵里だけのベストショット」計画は崩れ去った。
僕はモザイク処理されてしまうかもしれない。
帰り道、僕はぼそっとつぶやいた。
「……なんか、ごめんな。俺じゃなくて、もっとイケメンのほうがよかったんじゃないか?鈴木とか。」
すると、恵里は意外にも、ふっと笑って言った。
「何言ってんの。あんたでよかったよ」
「え……?」
「だって、気を遣わなくて済むし、撮影楽しかったし……それに、ほら、結果的には悪くないでしょ?」
彼女がスマホ画面を見せる。そこには二人で並んで写る写真。
まるで結婚写真みたいだった。
「このままの流れで、本当に結婚しちゃう?」
「……それはお前次第だろ?」
そんな冗談みたいな会話をしながら、なんか甘酸っぱかった。
この日撮った写真は、しばらく経って僕たちの本当の結婚写真へとつながるのだが、それはまた今度。
よくよく聞くと、撮影は男女ペアのみらしい。
「だからさ、あんた一緒に来なさいよ」
「……いや、俺は遠慮しとく」
「いいから来なさい!」
いきなりの強制イベント。どうやら彼女は自分の姿をSNSにアップして「いいね」を稼ぐ計画らしい。
僕はただの背景だ。
どうせ撮った写真もトリミングされる運命なのだろう。
「だったら別に俺じゃなくてもよくない?」
「ダメ!あんたなら遠慮なく扱えるから!」
ひどい言い草だが、どうせ他に予定もない。
仕方なくOKすることにした。
迎えた当日。写真館に到着すると、受付の女性がにこやかに出迎えた。
「カップルでのご来店ありがとうございます!」
「いや、カップルじゃなくて……」
「はいはい、照れなくて大丈夫ですよ~!」
聞く耳を持たない受付スタッフ。
僕たちは半ば強引にスタジオへと案内された。
そして始まる変身撮影。
第一弾──ゴスロリと執事。
恵里は黒と赤のフリフリのドレス。
僕は燕尾服に身を包み、「お嬢様、お手をどうぞ」なんてポーズを決める。
第二弾──姫と武士。
僕は刀を携え、恵里を守るポーズ。
「戦が終わったら、お前を迎えに行く……!」と謎のセリフを言わされる。
「ちょ、ちょっと恥ずかしいんだけど……」
「いいからキメ顔!」
第三弾──宇宙服と宇宙人。
「なぜ急にSF……?」
「いいからこの触角つけなさい!」
恵里は銀色のボディスーツ、僕はなぜか緑の宇宙人マスクを被せられた。
ポーズは「地球人に恋をした宇宙人」らしい。
「う、宇宙の彼方から君に会いにきたよ……」
「もっと感情込めなさい!」
そして撮影はどんどんエスカレートしていく。
「はい、次は手を繋いでくださいね~」
「えっ?」
「次は抱き合って!」
「ええっ?」
「はい、次はキス!」
「ちょ、ちょっと待った!!」
もはや趣旨が変わってきている。
僕は焦るが、恵里はノリノリ。
しかも僕の顎をクイッと持ち上げてくるではないか。
「ほら、ちゃんとキスしなさいよ」
「お、お前、楽しんでるだろ……?」
「まあね!」
ヤケクソになりながらも指示に従う僕。そして、ついに最終形態。
「最後は水着で撮りましょう!」
「無理無理無理無理!!」
抵抗むなしく、更衣室に押し込まれ、気がつけば僕は海パン姿、恵里はビキニ姿。
お互い視線を合わせられず、妙な空気が流れる。
「……お前、そんな格好することあるんだな」
「そっちこそ……案外筋肉あるのね」
なんか、気恥ずかしい。けれど、スタッフは容赦なく「はい、密着して!」「もっと近く!」と煽ってくる。
「せっかくだし、肩くらい組んでみる?」
「……まあ、それくらいなら」
そして撮影が終わり、写真を確認すると──
「ちょっ……トリミングできないじゃん!」
どの写真も二人の距離が近すぎて、トリミング不可能。
SNSアップ用の「恵里だけのベストショット」計画は崩れ去った。
僕はモザイク処理されてしまうかもしれない。
帰り道、僕はぼそっとつぶやいた。
「……なんか、ごめんな。俺じゃなくて、もっとイケメンのほうがよかったんじゃないか?鈴木とか。」
すると、恵里は意外にも、ふっと笑って言った。
「何言ってんの。あんたでよかったよ」
「え……?」
「だって、気を遣わなくて済むし、撮影楽しかったし……それに、ほら、結果的には悪くないでしょ?」
彼女がスマホ画面を見せる。そこには二人で並んで写る写真。
まるで結婚写真みたいだった。
「このままの流れで、本当に結婚しちゃう?」
「……それはお前次第だろ?」
そんな冗談みたいな会話をしながら、なんか甘酸っぱかった。
この日撮った写真は、しばらく経って僕たちの本当の結婚写真へとつながるのだが、それはまた今度。
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