転生したら女性向け恋愛小説の中でした。〜前世はオタク、恋愛経験ゼロ男のシンデレラストーリー〜

胡桃

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本編

15-1

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「……それで、僕の魔力がどうかしたの?」

 とりあえず自分で考えてもわからないので、ミハイルに尋ねてみることにする。

「これ、覚えてるか?」

 ミハイルは制服のポケットから小型の魔道具を取り出した。
 マーティンも同様に魔道具を取り出して僕に見せてくれたので、受け取って観察する。
 その魔道具には小さな石がいくつか嵌められていて、一見すると懐中時計のようであった。

「……前に僕があげた守護の魔道具だよね?」

 その魔道具の正体はすぐにわかった。
 三年ほど前――丁度、カールハインツ陛下が王位を継承したのと同時期に、父の領地で見つかった小さな洞窟内で天然の魔石が採掘できるようになったのだが、その魔石が希少な光属性のものであり、守護や癒しの効果を持っていたため、僕は採掘された魔石の中から売り物にできないような小さな欠片を集めて小型魔道具を自作することを思いついた。
 そして、試行錯誤を重ね、半年前ようやく完成したこの魔道具を二人へ渡したのだ。
 僕の趣味である魔法研究の一環として、自作魔道具の効果も知りたかったので、二人には実験に付き合ってもらっているとも言える。
 しかし――

「石の色が変わった? というか、濁ってる……?」

 僕がミハイルとマーティンに渡した魔道具に用いた魔石は全て半透明の白色であった。
 白は光属性を表しており、その魔石は光属性魔法の効果を高めると共に守護や癒しの力を持つということが判明しているが、これまでは国内に採掘できる土地がなかったため、魔石の発掘量が世界一であるスレンダール皇国からの輸入に頼るしかなく、とても希少価値が高いものとなっていた。
 それが父のお陰で国内でも採掘できるようになり、国の利益にもなるということで、王位に就いたばかりのカールハインツ陛下が評価してくれたのだと聞いている。

 (魔力量に変化はなさそう……。違う属性が混ざっているようにも見えるけど、それはあり得ないはずだし……)
 
 この世界の魔石は、石自体が含有する魔力の属性によって色が異なり、魔石の魔力含有量によって色の濃淡が変わるが、色そのものが変わるということはない。
 つまり、白い石は白いままであり、赤い石は赤いままであるということだ。
 しかし、今ミハイルたちが見せてくれた魔道具についている石は、そのほとんどが灰色に濁っており、透明度もなくなっている。
 それはまるで白い絵の具に、ほんの僅かに黒い絵の具を混ぜたような色合いをしていた。
 更によく見れば細かいヒビが入っていて、今にも砕けてしまいそうである。
 一つの石に複数の属性魔力が含まれていることはなく、人工的に他属性の魔力を注入しようとしても弾かれてしまうので、異なる属性の魔力が入っているということは考えられないのだが、この石には他属性の魔力が混ざっているように見えるのが気に掛かった。

 (でも、黒色の属性魔法なんて聞いたことがないし……)
 
 属性を表す色は、赤は火、青は水、風は緑――といった風に、一目でその属性がわかるようになっているのだが、黒色の属性魔法があるとは聞いたことがない。
 一般的に黒と言えば闇の色ではあるが、この世界で闇属性を表す色は紫であった。

「……どういうこと?」

 不思議に思ってミハイルの顔を見れば、眉をひそめられた。

「お前にわからないことが俺たちにわかるはずないだろ。……確信を持って言えるのは、一ヶ月半前、エリオットが倒れた日から、この石の変色が始まったことくらいだ。だから俺たちは、この石がお前の魔力の状態に応じて変化しているのかと思っていた」

「え? その魔石と僕の魔力に繋がりはないよ? シュヴェリエ侯爵に見つかると怒られるから、本当に小さな屑石くずいしばかり集めて作ったけど、その中でも特に強い魔力を持つ石だけを使ったから、魔力の補充もしていないし……」

 この魔道具は、古の神器“聖なる神の祈り”のように、広範囲に強力な結界を張るような効果を持っているわけではないので、魔力の補充は年に一度すれば良い程度である。
 そして、精々、所有者の身に危険が及んだ際に、それを跳ね返す程度の効果しか持たず、屑石だけではそれが限度であったのだ。

「……マールグリット伯爵領の資源なのに、シュヴェリエ侯爵が怒るのか?」

 ミハイルの疑問は尤もだと思いつつ、小さく頷いた。

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