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体だけでも

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 千紘の指が動くと、それに合わせるかのように凪の声も高く漏れる。吐息を激しくつきながら、時折大きく息を吸い込む。乱れた呼吸が一層興奮を駆り立てた。

 ずっと快感がまとわりついて、それでもそれ以上の気持ちよさがあるのなら、この程度の快感で終わりたくない。そんなふうに思った凪は、無意識の内に腕を伸ばし、指先で空を切る。

「凪、どうした?」

 余裕のなさそうな凪に、千紘は顔を覗き込むようにして尋ねた。必死に喘ぐ凪の唇の間から、チロリと赤い舌が見えて思わず喉を鳴らした。
 どうしたのかと聞いておきながら、欲に負けた千紘は、かぷりと唇ごと頬張るようにして唇を重ねた。
 唇を舌でなぞり、舌を絡める。唾液同士が混ざりあって、官能的な音がした。一方的に千紘から口内を攻めていたはずが、向こう側から押し返される感覚を抱き、千紘は一瞬眉を上げた。

 凪の唇が上下に動き、千紘の舌先を挟み込んだ。凪からも積極的な絡みを感じて、千紘は体中がぶわっと熱くなる。奥底から何かが沸き上がってくる。
 興奮を超えて、本能が勝る。初めて凪を抱いた時のように、もう制御ができないほどに凪を求めた。

 ただ、頭の片隅には凪の嫌がることはしない。その約束が残っている。しかし、そんな時に限って凪の両腕が千紘の首の後ろに回って、凪の方に引き寄せられるものだから、嫌がってるなどという都合の悪い解釈はどこかに追いやられてしまった。
 千紘の中に残ったのは、凪を欲する黒い感情と、純粋に好きだという愛情だけ。

 凪のことが好きだと感じるほどに、その彼が自分を求めていることが伝わってきて、それだけで射精してしまいそうなほどに歓喜した。

「はっ、はっ……」

 少し離れた唇から、凪の息遣いを感じる。唇に熱が触れるだけで千紘はゾワゾワと快感に震えた。
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