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得るものと失うもの
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千紘は凪の心音を聞きながら、これ以上ないくらいに目を見開いた。ついさっきまで、凪に突き放されることも考えていたのに、凪の方から一緒にいてもいいかもなんて言ってくれたのだ。
驚かないわけがなかった。
「え、凪。一緒にいてもいいって。な……俺、ちゃんと寝るって毎日……一緒にいるの、毎日?」
「何言ってんの? お前日本語変だよ」
凪は肩を揺らして笑った。動揺しているであろうことが、会話だけで伝わってくるのがおかしかった。
「だって……ねぇ、どういうこと? 本当に毎日?」
「俺、正直初めてお前にされたことは許せない」
欲しい言葉よりも先にビシッと凪に言われて、千紘は唇を震わせた。許して貰えていると思っていたわけではない。
それでも、今になって尚それを直接言われれば心にくるものがあった。
「今も許せないし、多分これからも許せない」
「うん……ごめん」
「写真使って脅したことも、思い出したら腹立つし」
「うん……」
「お前のこと、怖いと思ったこともいっぱいある……」
「わかってる……。ごめんね」
千紘は、凪の背中に回した手で凪の服をぎゅっと握った。
凪はそれを感じながら、目を伏せて言葉を続けた。
「お前にとってはいい兄ちゃんでも、俺はお前の兄ちゃん苦手だし」
「そうだと思ってた……」
「会話ができるようになるまではまだかかると思う。できれば暫く会いたくないし」
「も、もちろん! 凪が嫌な思いするなら兄ちゃんとは会わなくてもいいよ! その……兄ちゃんはちゃんと凪に謝りたいって言ってたけど……」
「え?」
今度は凪の方が目を丸くさせた。凪は未だに千草が凪を敵視していると思っていたのだ。大事な弟を傷つける存在だと牽制してくるものだと。
今回凪が連絡しないことだって、千草にしてみれば千紘を振り回しているように見えるだろうと思えた。
驚かないわけがなかった。
「え、凪。一緒にいてもいいって。な……俺、ちゃんと寝るって毎日……一緒にいるの、毎日?」
「何言ってんの? お前日本語変だよ」
凪は肩を揺らして笑った。動揺しているであろうことが、会話だけで伝わってくるのがおかしかった。
「だって……ねぇ、どういうこと? 本当に毎日?」
「俺、正直初めてお前にされたことは許せない」
欲しい言葉よりも先にビシッと凪に言われて、千紘は唇を震わせた。許して貰えていると思っていたわけではない。
それでも、今になって尚それを直接言われれば心にくるものがあった。
「今も許せないし、多分これからも許せない」
「うん……ごめん」
「写真使って脅したことも、思い出したら腹立つし」
「うん……」
「お前のこと、怖いと思ったこともいっぱいある……」
「わかってる……。ごめんね」
千紘は、凪の背中に回した手で凪の服をぎゅっと握った。
凪はそれを感じながら、目を伏せて言葉を続けた。
「お前にとってはいい兄ちゃんでも、俺はお前の兄ちゃん苦手だし」
「そうだと思ってた……」
「会話ができるようになるまではまだかかると思う。できれば暫く会いたくないし」
「も、もちろん! 凪が嫌な思いするなら兄ちゃんとは会わなくてもいいよ! その……兄ちゃんはちゃんと凪に謝りたいって言ってたけど……」
「え?」
今度は凪の方が目を丸くさせた。凪は未だに千草が凪を敵視していると思っていたのだ。大事な弟を傷つける存在だと牽制してくるものだと。
今回凪が連絡しないことだって、千草にしてみれば千紘を振り回しているように見えるだろうと思えた。
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