8 / 24
少年が英雄譚を歩み始めるまでの物語。
違和感(二)
しおりを挟む
窮鼠猫を噛むとはまさにこの事だろう。
ワータイガーは、自分より圧倒的弱いヒロに反撃されたことが余程腹立たしかったらしい。
「グガアアアアアア!!!」
雄叫びを上げると、真っ直ぐヒロへと突っ込んできた。
しかし、彼は、それを容易に避けた。全身が痛み、指先だけでも動くかどうかという身体でだ。
——どうなってるんだ?!
困惑したのはワータイガーよりもヒロ自身だった。
ワータイガーは、困惑をかき消すかのように荒々しく右腕を横薙ぎに降り、彼へ攻撃した。だが、またしても彼は、これを軽々と躱した。
ワータイガーの動きがコマ撮りのようにゆっくりと見えるのだ。そして、力が溢れる。
彼がワータイガーの背中側へ回り込み、拳を叩き込む。
「ッ?!」
ワータイガーは、海老反りになり吹き飛んび、悲痛の声を上げた。
力が圧倒的に増していることは、一目瞭然だ。
飛びそうな意識が痛みによって引き止められる。
ヒロは、クラクラする頭で必死に思考する。
——今まで歯が立たなかった奴が一撃で吹き飛んだ。まさか……加護?!
ヒロがそう思い、全身に視線を巡らせた。しかし、何の変化も見られなかった。
神々が使用する地上の住民では読むことが不可能な文字。
それらが身体の周囲に出現し、虹彩が発光する。これが加護を使用した時に目に見える変化だ。
このことから彼は、現在加護を発動しているわけではないようだ。しかし、実際彼は、今までよりも遥かに強くなっている。
彼は、一旦考えることを止め、ワータイガーが吹き飛んだ方へ視線を戻すと、何やら息を吸い込んでいた。
そして、彼がその意図に気づいた時には手遅れだった。
「グルアアアアアア!!!」
——咆哮?!
ワータイガーの怒号が耳に届いた瞬間、ヒロの動きは、停止した。いや、停止させられた。
怒り任せの雄叫びではなかった。自分が被食者であることを本能的に悟らせ、恐怖させるものだった。
「……クッ……動かない」
ヒロは、膝が笑い立っていることが出来なくなり、膝を着いた。
彼の目前でワータイガーは、前足を地面に付け、完全に野生本来の姿を取り戻していた。確実に彼を仕留めるつもりらしい。
彼は、焦った。しかし、何も出来ない。
いくら力が増し、攻撃を躱せたとしても奴の攻撃を1度でも喰らえば死ぬかもしれない。
ワータイガーは、音も立てずに駆け出し、瞬く間に彼の側まで来た。そして、その鋭い牙で彼の首筋に食らいついた。
「ああああ!!!」
鮮烈な痛みと死への恐怖にヒロは、再び絶叫した。
——ここで終わりか
ヒロが諦め、目を閉じた時だった。
一瞬、熱を感じたかと思うと、ワータイガーは灰となり跡形もなく消えた。彼は、力なく前へと倒れ込んだ。
「おい、ルーシー!!治癒魔法、早く!!」
「わかっている……だが、この怪我では」
「いいから早くしろ!!」
「ええい」
——ガルドさん……そんなわけないか。彼がエリア1にいる筈ない
ヒロは、ガルドの怒声と女性の声が聞こえた気がした。しかし、声の主が誰かを確かめることなく、彼は、意識を失った。
ワータイガーは、自分より圧倒的弱いヒロに反撃されたことが余程腹立たしかったらしい。
「グガアアアアアア!!!」
雄叫びを上げると、真っ直ぐヒロへと突っ込んできた。
しかし、彼は、それを容易に避けた。全身が痛み、指先だけでも動くかどうかという身体でだ。
——どうなってるんだ?!
困惑したのはワータイガーよりもヒロ自身だった。
ワータイガーは、困惑をかき消すかのように荒々しく右腕を横薙ぎに降り、彼へ攻撃した。だが、またしても彼は、これを軽々と躱した。
ワータイガーの動きがコマ撮りのようにゆっくりと見えるのだ。そして、力が溢れる。
彼がワータイガーの背中側へ回り込み、拳を叩き込む。
「ッ?!」
ワータイガーは、海老反りになり吹き飛んび、悲痛の声を上げた。
力が圧倒的に増していることは、一目瞭然だ。
飛びそうな意識が痛みによって引き止められる。
ヒロは、クラクラする頭で必死に思考する。
——今まで歯が立たなかった奴が一撃で吹き飛んだ。まさか……加護?!
ヒロがそう思い、全身に視線を巡らせた。しかし、何の変化も見られなかった。
神々が使用する地上の住民では読むことが不可能な文字。
それらが身体の周囲に出現し、虹彩が発光する。これが加護を使用した時に目に見える変化だ。
このことから彼は、現在加護を発動しているわけではないようだ。しかし、実際彼は、今までよりも遥かに強くなっている。
彼は、一旦考えることを止め、ワータイガーが吹き飛んだ方へ視線を戻すと、何やら息を吸い込んでいた。
そして、彼がその意図に気づいた時には手遅れだった。
「グルアアアアアア!!!」
——咆哮?!
ワータイガーの怒号が耳に届いた瞬間、ヒロの動きは、停止した。いや、停止させられた。
怒り任せの雄叫びではなかった。自分が被食者であることを本能的に悟らせ、恐怖させるものだった。
「……クッ……動かない」
ヒロは、膝が笑い立っていることが出来なくなり、膝を着いた。
彼の目前でワータイガーは、前足を地面に付け、完全に野生本来の姿を取り戻していた。確実に彼を仕留めるつもりらしい。
彼は、焦った。しかし、何も出来ない。
いくら力が増し、攻撃を躱せたとしても奴の攻撃を1度でも喰らえば死ぬかもしれない。
ワータイガーは、音も立てずに駆け出し、瞬く間に彼の側まで来た。そして、その鋭い牙で彼の首筋に食らいついた。
「ああああ!!!」
鮮烈な痛みと死への恐怖にヒロは、再び絶叫した。
——ここで終わりか
ヒロが諦め、目を閉じた時だった。
一瞬、熱を感じたかと思うと、ワータイガーは灰となり跡形もなく消えた。彼は、力なく前へと倒れ込んだ。
「おい、ルーシー!!治癒魔法、早く!!」
「わかっている……だが、この怪我では」
「いいから早くしろ!!」
「ええい」
——ガルドさん……そんなわけないか。彼がエリア1にいる筈ない
ヒロは、ガルドの怒声と女性の声が聞こえた気がした。しかし、声の主が誰かを確かめることなく、彼は、意識を失った。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる