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1.ラスボス城へのやっかいな来客者

別荘?いえ、魔王城です

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 ラ・フォア王国へ行き、聖女マツリカへ宣戦布告し聖典を一度使えないようにし、隠れ家へ帰ってくるとルカの魔力が器を壊してしまいそうなほど溢れていた。

 これは大変だと、恥ずかしかったがさっきルカにされたようにお互いの舌を絡めてルカの魔力を私の方に移した。
 確かにこれは強大な力だ…と少ししたらすぐ離して魔力を解放した。その間も苦しいのか私の胸元を開き契約紋に彼は舌を這わせた。

「やっ、ちょっと……」

 魔力の移動の手段でされていることなのだが、無理やり破られたドレスから見える胸元に虚な目のルカが舌を這わしているのは…なんというか…

「刺激が強い!!」

 ルカの舌や私の胸元に契約紋があるので、それを介して魔力の移動をするのが効率がいいのどろう。
 恥ずかしいが、ペロペロ舐められている方が楽だし魔力の回転も早い気がした。

「犬に舐められていると思うことにしよう…ルカはワンチャン…ルカはワンチャン」

「犬じゃない」

 ルカはいつの間にかいつもの姿に戻っていた。何故か私のはだけた胸元をじーっと見つめていた。

「…ごめんな。女の子なのにこんなのつけちゃって」

 ルカは申し訳なさそうに頭を下げていた。

「…いいよ。だってルカが契約してくれないと私死んでたから。それにこの模様!カッコよくない?刺青って怖いから出来なかったけど契約の証もなかなかカッコよくて気に入ってるんだ!」

「シェリアが能天気で良かった」

 なんとも失礼なことを言われたがとりあえずは大きな心で流しておいた。

 舐められていることに気を取られて気づかなかったがいつのまにか辺りが暗くなっていた。

 窓を開けて外を見ると夜のようでこの別荘辺りを一定の距離を囲んで空間がぐにゃりと歪んでいた。
 周りはコウモリがたくさん飛んでいて、カラスもたくさんいた。
 低級の魔物ももしかしたら集まっているかもしれない。
 しかし、あのアネモネの花畑は守られていた。

「魔王城のようだ」

 私は不安感などなくむしろワクワクしていた。本格的に悪役になったのだと。
 こうなったからには楽しまなければ。

 ここから外へ出入り出来るのか空間の歪みに手を入れてみると出入りは出来そうだった。

「すごいことになってんね」

 ルカがやってきた。この前買った服はボロボロになったので前の軍服をまた着ていた。

「魔王城みたいでちょっと興奮してる…!ここは問題なく出入りできそう」

「…ちょっと出てみる」

 ルカは空間の歪みを通って外へ出た。すると外から大きな声が聞こえた。


「ルカ!探したんだよ!お前みたいなゴミカスでも戦場では役に立つんだからさ、早く帰ってきて次は北の方に行って…。何これ」

「ノエ、うるさい。てか俺はもう帝国には帰ることはない」

「はぁ?なにそれ…ちょ、またそこに帰るの…へぶっ」

 ルカだけ空間の歪みから戻ってきた。先程の声の人はきっと通れなかったんだろう。かわいそうな音がしていた。

「やっぱり闇属性がないと入れないのか…。逆に聖女は一定の数値を持ってるから入れそうだな…」

 ルカは明らかに知り合いそうな人をガン無視して、この空間の歪みの考察を始めていた。

「あの、いいの?外の人」

「え?居た?何もなかったけど…」

「いるって!ものすごくいる!!そこのお嬢さん、そこのクソ男に話があるからそこ通してくれないかな?」

 とりあえず私が外に出てみると白髪短髪黄金目のルカにそっくりの男性が立っていた。

「もしや、シェリア嬢?」

「そうです。貴方様は?」

 これはもしかしてラ・フォア王国側の人間だったかと思ったがルカの知り合いなので違うだろう。
 着ている服も上等で気品があるのでオルタ・モンドラゴン帝国の貴族以上の身分の人だろう。
 と、いうかルカと対等に話している時点で王子だと気づくべきだった。

 彼は美しい笑みを浮かべて私の足元に膝まずいた。


「初めまして、麗しのシェリア嬢。僕はノエ・オルタ・モンドラゴンと申します。君の婚約者候補に上がっていたけど、つい先日の君の大暴れでなしになったよ」

 やはりそうだった…。私は手を取られるとキスを落とされた。何故か挨拶の仕方はラ・フォア王国式だった。

「あの、私ユグドラシル出身なのでそのような挨拶じゃなくても怒りませんよ?」

 ラ・フォア王国は女性が強い国だ。と、いうか紳士的な男性もおおいのだ。紳士、淑女であれという感じ。

「あれ?国は関係なく、そうするとほとんどの女性が喜んだからやったんだけど…」

「もういいだろ。うるさいノエ、もう帰れ。二度と来るな」

 私の対応があまりにも遅かったのか痺れを切らしたルカが迎えにきた。
 ルカは私の手を取って引っ張って空間の歪みを抜けた。
 と、思ったら反対の手をノエさんが握ったままだったからかノエさんを招き入れてしまった。


「ラッキー!お邪魔しまーす」

 どうやら闇属性を持つ人と繋がっていれば入れそうだ。微妙にセキュリティ面でゆるいのは私たちクオリティなのかもしれないな…。






「まーじで、魔王城だね」

 ルカは帰れと怒っていたが帰らないと頑にそこを動かなかったノエさんの根性に負けて、とりあえずは城に一旦入ってもらい話をすることにした。

 ノエさんは帝国では珍しく光の魔法系統の力がほのかに感じられた。

 そして魔力の扱いもうまそうだ。多分光属性の人がここに入るとデバフがかかり体がしんどいはずなのにケロリとしていた。

「もしかして、帝国の王族は魔法使える人が多いんですか?」

 基本的には魔法が使える人は魔法国へ引っ越すことが多い。何故なら差別を受けることが多いからだ。
 派遣された魔法使いと結婚する人もいるが、だいたいは魔法国へと移住してきている。

 なので、微量でも魔力を感じるのは不思議だった。

「うーん?……あ、そうか。君はルカをドラゴンを覚醒させて契約したのか。それなら話する」

 話が長くなりそうだったのでとりあえず客間へ通した。
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