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第一章
翔子と家族
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ショウが日本茶を淹れ、それぞれが腰を落ち着かせたところで
「じゃあ、僕は店開けなきゃいけないから帰るけど……」
「あっ、そうなんですね。ショウさん、色々とありがとうございました」
「いいえ。じゃあじいちゃん、カケル。翔子さんの事よろしく。それからカケル、何か分かった事があったら後で僕にも教えて」
そう言ってショウは店に帰って行った。
お茶を一口含んだ後、神主がゆっくりと話し始めた。
「さて、先程翔子さんに家族の話を聞いたのは【天神】と言う苗字を聞いたからで……。実は歴史を遡るとこの白蛇神社に仕えていた巫女の中に【天神】性を名乗る者がいたのです。なので、翔子さんにご家族の事をお聞きしたのですが……、話しにくい事ですかな?」
「いえ、別に話しにくいと言う事はありません。この街に引っ越してくる前、私は祖母と二人で暮らしていました。私が生まれる前に祖父は亡くなっていて、私の両親も私が小学校に上がる前に事故で亡くなっています。祖母が私を引き取って育ててくれたのですが、その祖母も私が高校二年生の時に亡くなってしまって……。
高校を卒業するまでは祖母と暮らした家で過ごしていましたが、やっぱり祖母のいない家は広すぎて……、楽しい思い出がいっぱい詰まっている分、私一人で暮らすのが辛くなって、それで高校を卒業すると同時に引越しようって決めたんです。祖母と住んでいた家は遠い親戚の方が管理をしてくれるそうなので、帰りたいときには帰れるし……」
時々、つっかえながらも淡々と話す翔子。
「さっき知らないって答えたのも、自分の家族のルーツを知らないからなんです。祖母からもこの土地の話って特に聞いた事はないし……」
ふいにカケルは翔子の頭に手を置き、ポンポンと優しくなでながら
「よく頑張ってきたね」
とクシャっと笑いながら
「ところで、なんで引越先をこの街にしたの?」
と翔子に優しく聞いた。
「あっ、それはここ、駅前に有名な大型書店があるじゃないですか。
私、本が大好きなのであの本屋さんに通える所に住みたくてこの街に来ました」
と嬉しそうに話す翔子。
「ハハッ。本当に本が好きなんだね。じゃあ、行きたい学校があってこの街に来た訳ではないんだね。ひょっとして、就職先があの本屋さん?」
とカケルが聞くと、
「そっか!就職先!その手があったかぁ……。本屋さんは本を買う所と思い込んでいて、お仕事をする場所なんて考えてませんでした」
「えぇっ?普通、真っ先に思いつきそうだけど……。じゃあ、どうやって生活していくの?」
と質問するカケルに
「暫くは祖母が蓄えてくれていたお金があるので、それを頼りに……。生活が落ち着いたらバイトをしようかと考えています」
と翔子は答えた。
「じゃあ、僕は店開けなきゃいけないから帰るけど……」
「あっ、そうなんですね。ショウさん、色々とありがとうございました」
「いいえ。じゃあじいちゃん、カケル。翔子さんの事よろしく。それからカケル、何か分かった事があったら後で僕にも教えて」
そう言ってショウは店に帰って行った。
お茶を一口含んだ後、神主がゆっくりと話し始めた。
「さて、先程翔子さんに家族の話を聞いたのは【天神】と言う苗字を聞いたからで……。実は歴史を遡るとこの白蛇神社に仕えていた巫女の中に【天神】性を名乗る者がいたのです。なので、翔子さんにご家族の事をお聞きしたのですが……、話しにくい事ですかな?」
「いえ、別に話しにくいと言う事はありません。この街に引っ越してくる前、私は祖母と二人で暮らしていました。私が生まれる前に祖父は亡くなっていて、私の両親も私が小学校に上がる前に事故で亡くなっています。祖母が私を引き取って育ててくれたのですが、その祖母も私が高校二年生の時に亡くなってしまって……。
高校を卒業するまでは祖母と暮らした家で過ごしていましたが、やっぱり祖母のいない家は広すぎて……、楽しい思い出がいっぱい詰まっている分、私一人で暮らすのが辛くなって、それで高校を卒業すると同時に引越しようって決めたんです。祖母と住んでいた家は遠い親戚の方が管理をしてくれるそうなので、帰りたいときには帰れるし……」
時々、つっかえながらも淡々と話す翔子。
「さっき知らないって答えたのも、自分の家族のルーツを知らないからなんです。祖母からもこの土地の話って特に聞いた事はないし……」
ふいにカケルは翔子の頭に手を置き、ポンポンと優しくなでながら
「よく頑張ってきたね」
とクシャっと笑いながら
「ところで、なんで引越先をこの街にしたの?」
と翔子に優しく聞いた。
「あっ、それはここ、駅前に有名な大型書店があるじゃないですか。
私、本が大好きなのであの本屋さんに通える所に住みたくてこの街に来ました」
と嬉しそうに話す翔子。
「ハハッ。本当に本が好きなんだね。じゃあ、行きたい学校があってこの街に来た訳ではないんだね。ひょっとして、就職先があの本屋さん?」
とカケルが聞くと、
「そっか!就職先!その手があったかぁ……。本屋さんは本を買う所と思い込んでいて、お仕事をする場所なんて考えてませんでした」
「えぇっ?普通、真っ先に思いつきそうだけど……。じゃあ、どうやって生活していくの?」
と質問するカケルに
「暫くは祖母が蓄えてくれていたお金があるので、それを頼りに……。生活が落ち着いたらバイトをしようかと考えています」
と翔子は答えた。
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