俺の名前は今日からポチです

ムーン

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おやすみ

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喉の奥を突かれても、性器を強く強く握られても、俺はその苦痛を快楽と捉える。

「ふっ、んっ……ぁ、ゆき、もっと……ぉ」

もちろん誰からのどんな苦痛でも、という訳ではない。
雪兎から与えられるものだけだ。

「んー……僕そろそろ眠いんだよね。明日も学校だし」

「そんなっ……俺、まだ」

「明日帰ってきたらたっぷりしてあげるから」

「ゆきぃ……」

雪兎は根元から手を離し、両手で俺の陰茎を握り込む。
強く、乱雑に、絞り出すように手は上に向かう。

「ひっ、ぁ、ああぁぁん!  や、ぁ、ぁあっ!」

「早く全部出してー、僕もう寝る」

「あっ、らんぼっ……ぁ、やっ、ぁああ!」

せき止められていた精液が一気に放出され、雪兎の手はそれにまみれる。
雪兎は面倒臭そうに手と俺の股間をティッシュで掃除して、俺をベッドから落としてシーツを引き剥がした。

「はぁ、はぁ……?  ユキ様……?」

雪兎は俺を無視して汚れたシーツを持って部屋を出ていく。
しばらくすると新しいシーツを持って帰ってくる。

「手錠は外してあげる、一人でお風呂入ってくれば?」

「ユキ様は?」

「僕はポチが起きる前に入ってきた」

手錠が外され、俺の手は自由になる。
雪兎は新しいシーツをベッドにかけている。

「お風呂って、どこに……」

「あー、浴場は一階だけど……狭くていいならこの部屋にあるよ、ほらそこ」

雪兎が指差した方向は俺が洗面所のだと思っていた扉。
シーツをかけ終え、雪兎は俺の首輪を外す。

「端っこはベッドの足につけとくから、お風呂上がったら自分ではめて」

「…………逃げるとか思わないんですね」

「部屋からは出られても家からは出られないよ、逃げようとしたらお仕置きだ。試してるんだよ、逃げるかどうか」

俺をペットたらしめてきた首輪が外されるのは妙な気分だ。たった数日だったのに首輪をつけている時が人生の大半を占めていたような気さえしてくる。

「……じゃあ、お風呂行ってきます」

「んー……おやふみポチぃー」

広いベッドの中心で眠る雪兎。白いシーツの上で白い彼は消えてしまう。
…………逃げる、か。逃げたところで行くところなんて何処にもない。
雪兎の顔を覗き込む──油断しきった可愛らしい寝顔がそこにはあった。先程まで俺を弄んでいたとは思えないほどに純真無垢な天使だ。

「自分を抱きたいって言ってる男の前で寝るとか、どんだけ警戒心ねぇーんだよ」

むに、と頬に人差しを沈める。
手首の赤い痣に、雪兎で遊ぼうとした気持ちが萎む。

「…………従順なペットは言われたとおり風呂に入りますよーっと。お仕置きじゃなくて、ご褒美くださいね、ご主人様」

お仕置きすると言われては襲いたい気持ちを抑えるしかない、頑張れ理性。
実際に口に出し、心の中でも言い聞かせ、俺は風呂に向かった。
そんな俺の背に赤紫色の視線が向けられていたなんて気が付かずに。
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