俺の名前は今日からポチです

ムーン

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ふで、いち

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目を閉じて快楽に身を震わせていると、不意にオモチャの振動が止まる。雑に搾乳器と貞操帯を外され、俺は目を開けた。

「ただいま、ポチ。寝てた?」

目の前には赤紫色の美しい瞳があった。口枷を外され、口の周りに垂らしていた唾液を舌で拭われ、拙い言葉で返事をする。

「……ねて、な……ぃ」

「疲れたでしょ、眠い?  お腹空いた?」

「りょう……ほ…………ぁ、けど」

「だけど?」

今は外されているが、貞操帯は陰茎の根元を縛ってていて、後ろに入れられていたバイブも弱い所には当たらなかった。

「イかせて……」

「えー?  昨日散々雪風にしてもらったんじゃないの?」

「ユキ様ぁ……おれ、ユキ様に……してほしい。ダメ?」

「ふふっ……そーんなとろけた顔しちゃって、して大丈夫?  まぁ、僕もそのつもりで用意してたけど」

雪兎は通学用の鞄から細長い桐の箱を取り出し、その中身を俺に見せた。どうやら新品の絵筆らしい。

「今日、美術の時間あってさぁ、筆古くなってたから買い替えたんだけど、今日は鉛筆画だったんだよねー。あははっ。だからさ、この筆はポチ用にしようかなって。今度絵の具使う時にまた買えばいいしね」

柔らかく揃いのいい筆の先が俺の頬に触れる。それだけで擽ったく、俺は顔を逸らした。

「……俺用って何ですか」

「そのままの意味だよ?」

雪兎は俺の髪を耳にかけさせ、耳の裏を筆でなぞった。

「……っ!?」

「いつも激しいのばっかりだからね、たまには優しくしてあげるよ」

耳たぶを通り、ゆっくりと耳の内側を撫でていく。

「やっ……ぁ、ふぁあっ……」

「どう?  新鮮でしょ」

少し奥でこしょこしょと素早く動かす。耳の内側を毛が擦る音が響いてくる。

「ん……ぅぅぅ……」

「気持ちいい?」

「くすぐったい……です」

筆はまた耳の内側をゆっくりとなぞり、耳の中から出て行った。

「……下見てごらん?」

「…………これ、は……その、さっきまで……色々付けられてたから、で……」

俺の陰茎は大きく反り返り、びくびくと脈打っていた。おそらく、もう少しの刺激があれば──そう、その筆で、耳にしたように触れてくれたら……

「へぇ?  ここ筆でして欲しいのかなーって思ったけど、違うんだ。さっきのが残ってただけかぁ。じゃ、別のとこするね」

「……え?  ま、待ってください。嫌です、俺……早く、早く出したいんです、もどかしくって、おかしくなっちゃいます。ユキ様、お願いします、意地悪しないでくださいよっ……」

「……ねぇ、ポチ。そのお願いに効果あると思ってる?」

そう言いながら俺の首筋に筆を這わせる。離れたと思えば、尖った先端が痣をつつく。

「そんな涙目で、可愛い声で、年上のくせに様付けで敬語使ってさぁ……意地悪しないで?  あははっ、ごめんねポチ。無理」

出っ張った鎖骨をつぅとなぞり、窪みで先端をくるくると回す。

「無理だよ……そんな可愛い顔されたら、もっと意地悪したくなっちゃうよ。もしかしてそっちが狙い?  だったら本当に上手だね」

そう話す雪兎の目は据わっていた。その視線は当然俺に注がれていて、今更ながらこの痴態を見られていると思うと羞恥で顔が熱くなった。

「ちが、うぅ……ぅん、ぁぁ……」

「ふふふっ……いい顔、いい声。次はどこがいいのかなー?」

羞恥ともどかしさに焦がされながらも、俺はどこか安堵していた。
昨日雪兎は本当に怒っていて、傷付いていた。だから今日笑顔が見られて、俺で愉しんでくれていて、本当に良かった。
この可愛らしい生き物に屈服させられる悦びは、どんなものにも勝る。これだけは失う訳にはいかない。
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