俺の名前は今日からポチです

ムーン

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さんかん、よん

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重ねたトイレットペーパーで亀頭を包み、先走りの汁で下着が濡れるのを防ぐ。既に少し濡れていたけれど、これ以上大きなシミにはしたくないし、スラックスまで漏れたらと思うと対処しない訳にはいかなかった。

「じゃあ、お兄ちゃん。次も頑張るから見ててね!」

「あぁ、頑張れ。ちゃんと見てるからな」

席に戻る雪兎を見送り、腰の前で組んだ手にかけたジャケットで勃起を隠す。亀頭を包んだトイレットペーパーがズレそうな気がして歩幅が小さくなった。

「もし、すいません……あなた、若神子家の方ですか?」
「子供は息子が一人と聞いていましたが……」
「…………似てませんね」

極道映画に出ていそうな保護者達に話しかけられる。雪兎が発表していた時も何か話していたし、雪兎や雪風はやはり話題に上がりやすいのだろう。
しかしどう答えればいいのだろう、従兄弟と言って誤魔化すか正直に養子だと言うか……困るな。

「ぁー…………えっと、従兄弟でして。仲は良いんですけど、顔は似てないですよね」

「あぁ、従兄弟……なるほど」
「分家が幾つかあると聞いたことがありますね」
「…………どこかで見た顔と思ったけれど、勘違いか」

下腹の熱が気になって会話に集中できない。それでも何とか愛想笑いはしていられた。チャイムが鳴ると保護者達も教卓の方を向き、俺もそちらを向いた。

「……っ、ふ…………はぁっ……」

太腿に被せたジャケットの下に手を入れ、スラックスの上から股間をぐりぐりと刺激する。この授業は発言が盛んで良い意味で騒がしい、多少息を荒くしていても気付かれないだろう。

「んっ……く、ぅっ……!」

陰茎の先端をスラックスの上から掴んでいた手に熱が伝わる。教室で、数十人がいる部屋で、射精してしまった。その罪悪感、背徳感は凄まじく、それによる比例する興奮も大きく、射精を終えたばかりの陰茎はまだまだ硬く次の刺激を待っている。

「……っ、ん、んっ……ぅ……」

その授業中、俺は性器を弄り続けた。
チャイムが鳴り、生徒達が礼をし、ようやく俺に正気が戻り「自慰を覚えたての中坊みたいな真似をしてしまったな」と恥ずかしい気持ちを思い出した。
ポケットに入れている携帯端末が震え、取り出して見てみれば雪兎からメッセージが届いていた。

『次美術で準備先にしなきゃだから先にトイレ行ってて』

「…………了解、っと」

美術室に移動という訳ではないらしい。
俺は一人小走りでトイレに向かい、先にトイレットペーパーを捨てておこうと考えた。しかし個室に入る寸前、男の声に呼び止められた。

「君!」

「なんです?」

振り返ってみればヤク……違う、同じ教室に居た保護者達の一人だ。

「いや、君の顔に見覚えがあってね。さっきちょっと調べてみたんだよ」

男は自分の携帯端末を突き出した。表示されていたのは去年のニュースだ、高一不登校の男が人を殴り倒したという事件のニュース。

「……事故の件で記者に追いかけ回されて、鬱陶しくなって殴った」

「へぇ、で? その古い事件が何か?」

「とぼける気か? 君だろう?」

「……何言ってるんですか、他人の空似ですよ」

まずいな……どうする? 誤魔化せるか? やはり俺はまだ外に出るべきではなかった、変装くらいはすべきだったのだ。

「若神子家が犯罪者を引き取っているとはな。事故で君は両親を失っているし、更に調べてみたが、君の親戚の工場は若神子グループから多額の支援金を受け取っているそうじゃないか。不自然だ、若神子があんな工場気にするはずがない」

大して仲良くはなかったし改めて会いたいとも思わない程度の親戚だけれど、バカにされると腹が立つ。薬のせいで常に興奮状態なんだ、あまり苛立たせないで欲しい。

「……まさかとは思うが、君……買われたのか?」

勘のいい大人は嫌いだ……なんてふざけてる場合じゃない。勘が良過ぎるだろう、どう調べたら支援を受けた会社が分かるんだ、どう推理したら真実を当てられるんだ、これだから実力のある金持ちは!

「何も言わないってことはそうなんだな」

薬で頭がぼうっとして返事が思いつかない。とりあえず首を横に振ってはみたが、男がそれを信用するはずもない。

「……これはとんでもないスクープだな、若神子家では金で養子を取るのか。しかし何故だ? 雪兎君は優秀だし健康だ、予備の必要は……うぅん? まぁそれはいい、金で買っただけで十分なスクープだ」

男は携帯端末をポケットに戻し、ゆっくりと俺に近付いた。

「このスクープ、広めて欲しくはないよな?」

「…………当たり前でしょ、デマなんだから」

「なら、一つ条件を飲んでもらおうか」

男の笑顔に嫌なものを感じつつ、聞くだけ聞こうと頷いた。
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