無口な騎士は思い込み娘がお好き

白野佑奈

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辺境地にて10

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 その翌日。

 お城の皆様に見送られ、私とアレクは王都に向け出発した。

 ……といっても、来た道をひきかえしたわけではない。使ったのは何とアレクの転移魔導。

 目を閉じる間もない一瞬の移動。

 え?アレク、こんな事もできたの?というか、だったらあの一週間は何だったの?と問い詰めると、アレクはしれっと「為人を知る為だった」と白状した。

 なるほど。結婚することは決まっていても、相手を知らない以上そう言う時間は必要よね。

 少々複雑ながらも、一人で頷いていると、すぐ近くから声がかかった。

「大丈夫か、この子。想定以上に丸め込まれやすいんだが」

 振り返り、改めて見ると、到着した場所は、どうやら誰かの執務室だったようだ。

 部屋の装飾は豪華だけど、資料のたくさん積まれた大きな机に、壁を覆いつくす本たち。それらに囲まれた空間に、これまたとんでもない美形がいる。

 黄金の髪、蒼穹の瞳。精巧なビスクドールみたいに綺麗な顔だけど、どこか冷たさを感じるアレクの美貌とは趣が違う。どこまでも華やかな美貌だ。けれど。

 ニコニコと人好きするような笑顔。その笑顔に、強烈な違和感を覚える。

 笑ってはいるのだけど、その裏で人を値踏みするみたいな。更に相手の心の汚い部分を見て嗤っている、そんな感じ。

 会った事はないけれど、きっと悪魔が笑ったらこんな感じになるんじゃないかしら?

 失礼かもしれないけど、素直にそう思う。

 そんな事を思っていると、その人は一瞬笑みを消して私を見、それから先ほどまでと違う笑みを浮かべた。表面上の笑みではない、人間的な心からの笑み。

「へえ……。噂には聞いていたけど。なるほどね。気に入ったよ、エルーシア嬢」
「へ?」

 私の名前を知っている?

 どうして?と思い見返すと、彼は面白いおもちゃでも見るような目で私を眺め、口を開いた。

「酷いなぁ。前に一度会っているだろう?」

 前に一度会っている?こんな胡散臭い美形に?

 首を傾げる私に、見かねたアレクが横から口を挟んできた。

「エルーシア。第一王子……ラファエル殿下だ」
「え?」

 私の驚きに、第一王子が呆れた声を上げる。

「デビューの時に挨拶してくれたじゃないか」

 確かに数か月前のデビューの時に王族への挨拶はしたけれど、直視するのは恐れ多いので彼らの靴の爪先しかみていない。

 改めて彼の姿を見る。

 確かに街の土産物売り場でよく見る顔だ。王族の絵姿とかって、地方から来た観光客によく売れるから、常に店頭にあるのよ。だけど、まさか絵と実物がこんなに乖離しているとは思わなかった。表面の綺麗さは似ているけれど、滲み出る内面がまるで違う。

 と思った所で、殿下が爆笑する。

「……まさか、心を読んだ、とか」

 あまりにバッチリなタイミングだったので、思わず自分の胸を両手で押さえて恐る恐る尋ねると、殿下は笑ったままで手をひらひらと振った。

「違う、違う。単純にわかりやすいってだけだよ。いいね、君本当にいいね!アレクが羨ましいなぁ」
「殿下」
「ああ、大丈夫だアレク。そんなに殺気を駄々洩れにしないで。私が愛しているのはアウルだけだから。この子はペットみたいでかわいいってだけだよ」

 ペットって……。大概失礼だな。

 自分だってアレクの事をフランクに似ていると思っていた事を、思いっきり棚の上に置いて剥れる。というか、この殿下、アレクの殺気を読み取るなんて、どこもかしこも普通じゃないわね。

「警戒しなくていいよ。私は懐にいれた者には甘い男だからね。それにしても、いいなぁ。ホント、毛を逆立てる子猫みたいな子だね」

 はあ?猫ですってぇ?

 思わず目をひん剥いてしまった私に、殿下は尚も爆笑を続ける。

「殿下」
「悪い、アレク。でも、こうして二人して現れたって事は、上手くいったってことだろう?私の目に狂いはなかったな」
「………」

 アレクが嫌そうな顔で黙秘する。

 そう言えば、辺境伯が今回のお見合い企画は第一王子殿下が主導していたと言っていた。

「言っただろう?エルーシア嬢は君の理想に近いって」

 理想?アレクの理想って何なんだろう?というか、王子はアレクに断言できるほど、私の事を知るはずないんだけど。今がほぼ初対面なんだし。

 なのに、彼の言葉にアレクがあっさりと頷いた。

「そのものでした」

 彼の答えに第一王子は瞬間黙り、それから嬉しそうに破顔した。

「そう!それは良かった!」

 何をしても完ぺきな私は、仲人の素質まであったんだな。

 悦に入りながら笑うその表情に、最初に笑顔の影に見えたものはない。どうやら、本人が言うように、懐に入れた者には甘い人のようだ。

 それはそれでいいのだけれど。

「殿下、一つ伺ってもよろしいですか?」
「うん?何だい子猫ちゃん」

 猫じゃないってば!

 だがここで噛みついても、永久機関に放り込まれるだけだ。

 私は言いたい文句を奥歯で噛み殺し、先を続けた。

「何故、アレクの相手に私を選んだのですか?」

 アレクほどの人なら、他にも適任者はいたはずだ。なのに、何故彼は私を選んだのか。

 私の質問に、殿下は一度眉を上げ、ニンマリと笑う。

「言っただろう?君がアレクの理想通りの娘だったからだよ」

 だから、どこをどう判断してそうなったのか?

 答えになっていない答えに、不満を覚えると、殿下の指が私の唇を摘まんだ。

「唇突き出しても可愛いだけだよ。って、アレク!殺気を駄々洩れさせるな!」

 すぐに指が離れたから、そちらを見ると、殿下の言葉通り殺気に塗れたアレクが、悪鬼のような顔でこちらを見ている。凄い。一流の剣士ともなると、剣が無くても視線だけで相手を殺せそうね。

「全くもう。剣以外興味のなかった男は、恋をしても一点集中だな」

 洒落も通じないなんて、情けない。

 やれやれと首を横に振り、殿下は私から離れて肩を竦める。

 それから彼は自分の机の角に腰を下ろし、改めて私を見た。

「まあ、アレクにとっての理想っていうのは嘘じゃないけど、理由は他にもあるよ」

 そう言って彼は「隣国の事を知っているか?」と私に尋ねた。

 この国にとって隣国と呼ばれる国は複数あるけれど、すぐに彼の言う国がどこだかはわかる。

 狭い海を挟んだ向こう側にある島国。

 二年前、国王が代替わりし若い国王が誕生したその国は、以降我が国に何度も争いをしかけてくるようになった。

 それに対処しているのが、ローレイン。彼の国に最も近い領だ。

 何度も仕掛けられても、全面戦争に発展しないのは、辺境伯引き入る軍勢が小競り合いの内に戦争の火種を消しているから。

「今のローレインは、歴代最高の布陣と呼ばれているからね」

 史上最高の策士と名高い辺境伯と、並外れた魔力と武力を持つ三人の子供たち。そして、かつて英雄と呼ばれた老騎士。

 しかし、そのローレインにも問題はある。それが跡取り問題。

「長男のレオナールは魔導の天才でね。魔導の研究に固執するあまり、後を継ぎたくないんだそうな。……私もその方がいいと思っている」

 彼の能力は領主として領土を守る事ではなく。余すことなく魔導の為、引いては国の為にあったほうがいい。

「でも、それを次男……つまりアレクは認めてくれないんだ」
「俺は剣士だから」
「それはわかるけど、それだけじゃダメなんだよ」

 ぽつりと呟くアレクを、殿下が窘める。

 それから彼は、私の方を再び向いた。

「ところで。各辺境伯が迎える妻は、全て国が用意するって事は知っているよね?」
「あ、はい」

 辺境地というのは、他の土地とは違う。国の防御の最前線だ。それ故、国は彼らとの結びつきを重要視していて、代々婚姻による絆を強めていた。

 その地に嫁ぐのは、王族に連なる者か、国の重要なポストについている上級貴族の娘たち。

「今回のローレイン辺境伯の妻は例外だけど、次代は国の方から誰か、と思っていたんだ」
「でも、アウル様が殿下に嫁ぐのですよね?だったら、それで十分では……?」
「そうだね。でもそれだと、アウルが国に組み込まれる事になる。できれば、辺境伯の方にも国からの人間を入れたいんだ」

 しかし、次代の辺境伯がまだ決まっていない。

「そこで君だよ。父親は将軍の一人でその上侯爵。身分も教養も申し分ない。さらに、生活能力が高くて、例え最終的にアレクが騎士を望んでも、大丈夫な令嬢。ね?ぴったりだろう?」

 確かに、私は自分で言うのも何だが生活能力はある。例え、アレクが平民の騎士になっても、やっていけるだろう。共稼ぎだって大丈夫だ。って、そんな事で選ばれたの?

 納得できるような、できないような。

「後、君の存在で、アレクが考えを変えないかなーって期待していたところもある。……それは上手くいったようだ」

 ね?と殿下に視線を向けられ、アレクが頷く。

「エルを騎士たちが住む寮になんて、住まわせられない」
「え?別に平気だけど」

 独身と、家族持ちで別れているけれど、騎士には家賃の幾らかを領主が負担してくれる寮がある。

 急な出陣の事もあるから、大抵の騎士はそこに住んでいる。で、そこでお金を貯めて、引退後は一軒家を持つというのがセオリーだ。

 アレクが家を離れて騎士を選ぶなら、当然そこに住むことになるはずなのだが。

「あそこは男の目が多い」
「は?」
「ああ。だから、領主を承諾したのか。確かに、領主夫人にみだりに近づく男はいないもんね」

 え?何それ?領主?アレクが領主?ってどういう事?

 驚きすぎて言葉がでない私に、アレクがこちらを向いて告げる。

「エルを妻にする条件でだけど。兄上も父上の了承してくれた」
「これで万事憂いない、だな。いや、めでたい」

 めでたいって、殿下、簡単に……。

「君には平民の暮らしだけでなく、貴族夫人としての教育もしたと将軍が言っていたから大丈夫だろう」

 それが平民の暮らしを学ぶ条件だったから、それは大丈夫なんだけど。

「アレク、そんな事で将来を決めちゃって大丈夫なの?」

 今まで断って来たというからには、何か思う所があったからだろう。

 それに彼は魔導を使えるというのに、それに頼らずに、剣や弓などの道具を使っている。そこにも意味があるんじゃないか。

 そう思って聞くと、アレクは少し考え、それから首を横に振った。

「兄上や姉上ほどの魔導の才はないから、剣を使っていた。領主になる理由がないから、兄上を支える騎士になろうと思っていた。ただそれだけだ」
「………」

 なんてシンプルな答えだろう。

「じゃあ、今魔導を使ったのは?」
「早く国と将軍に、結婚を認めてもらいたかった」
「………」

 そんな事の為に?

 目を丸くする私の向こうで、殿下が爆笑している。意外と笑い上戸なのね。ではなく!

「本当の、本当にいいの?」

 騎士としての夢とか、希望とかってなかったの?

 問い詰める私に、アレクはしらっとした彼のまま頷く。

 本当に、本当にこれでいいのか。

 私の疑問を他所に、話しはどんどん進んで行く。

 そうして、後日父と辺境伯との書面のやり取りも終え、私たちは正式に婚約者になった。

 結婚の予定は、私が学園を卒業する時。

 軍事面でかなり上の役職にいる父の娘と、国防の第一の要とされる辺境伯の息子の婚約は、国と辺境地との間で軍事面な強固なつながりになると、喜ばれた。

 のだが。勿論これだけで話が終わるわけもなく、この後の入学式から暫くの間、私は色々な面倒事に向き合う事になったのだった。



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