俺って何故か押入れから異世界へ行き来ができるっぽい!〜 商人であり聖者でもある男の異世界を巡る日々 〜

長船凪

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52 ランタン祭り

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 演劇を見るために俺達は劇場へ向かった。
 人の入りはなかなかだった。

 そしてなんと演目は人魚と人間の恋物語。

 内容は恋に落ちた異種族の二人。
 周囲は住む世界も海と陸地とで違うと反対されていたが、最終的に人間の男が愛する人魚のいる海に向かって「人魚の彼女を愛しています! ずっと一緒にいたいのです!
 海神様、どうかお許し下さい!」
 と、叫んだら、「それが本気なら海に飛び込め」と声が聞こえて、本当に命がけで飛び込んだら、海神の許しをえて、その神の加護で男も人魚になって二人が結ばれる話だった。

 悲恋じゃないんだ!
 めでたし、めでたしでよかったぞ。


「人魚役の子はガチの人魚だったみたいだな、とても綺麗だった」
「そうだな」
「私だって綺麗だわ」

「何を張り合っているんだか」
「ふん!」

 またジェラルドとミレナが軽くやりやってる。
 はたから見たらケンカップルにも見えなくもない。

「こらこら、二人とも仲良く」
「次は何をするの?」

「ジェラルド、マッサージが受けられるとこってあるかな?」
「あったと思うぞ」
「そこに行きたい、肩と腰を癒されたい」
「ジジイ……」

「はい、はい、お若いミレナと違って俺はジジイですよ」

 そんな訳で、癒やしを求めてマッサージに来た。


「あちらが女性用の美くしくなるとかいうマッサージで、こちらが男性用の健康の為のやつだ」

 店の前の看板を指さしてジェラルドが解説してくれた。

「じゃあ後で落ち合うか、うっかり寝落ちるかもしれないから、ランタン祭りの会場公園で現地集合にするか? 腹が減ったら現地に出店があるだろうし」
「じゃあそれでいいわよ」
「そうだな、じゃあ待ち合わせの目印は人魚の銅像の側で」
 

 そんな訳で、俺達は女性用マッサージと男性用で分かれたが、ジェラルドは俺に付き添ってくれただけで、マッサージはうけないと言う。


「大丈夫? ジェラルドは暇じゃない?」
「俺はどこも悪くないからこのへんで本でも読んでいる」

 壁際に椅子があって、ジェラルドはそこに腰掛けた。

「そっか」


 マッサージを受けて二時間くらいかかって店を出た。
 最初は痛かったけど、俺はやはり途中で気持ちよくなってうっかり寝落ちた。


 店の前にはまだミレナがいなかったので、ジェラルドと二人で公園に向かうことにした。

 道行く途中で見かけた奇麗な人や景色の写真を撮ったり、また大きな貝殻の上にドレス姿のミラを立たせたり座らせたりして写真を撮った。
 
「あ! ジェラルド、あそこ! 踊り子の衣装のセクシーな女性がいる! せっかくだから声をかけてくる!」
「ああ」


 記録の魔道具と言い訳をしてスマホで撮影させてもらった。

 やった!! ミレナがいない間で助かったな。
 きっとマッサージで寝落ちしたんだろう。


 なんだかんだでランタン祭りと会場の公園に到着した。

 適当に飲み物を買ったら南国フルーツの味だった。

「串焼きでも買うか」
「またイカ焼きにしようかな、新鮮だろうし」
「じゃあ俺はあの揚げ物」

 コロッケみたいな小判形の揚げ物だった。 
 それが葉っぱに包んである。

「それって何の味なんだ?」
「なんかもちもちしている」
「揚げ餅みたいなものか! 俺も買おう!」


 ジェラルドと同じものを買って食ってみたらやはり揚げ餅のようなものだった。

 土産物売り場で真珠のアクセサリーがあったので記念にいくつか買っておいた。

「ショータ、それ店で売るのか?」
「いや、故郷のおふくろ、ってか、母と姉の分とか」
「ほお、家族にか、感心だな。優しいじゃないか」
「思えばろくなプレゼントしてこなかったし、まあ、母の日に花とかケーキなんかは贈ってたけど、あまり高いのは買ってなかったし。せっかくこの世界の通貨を店で稼いでるしな」

「海底都市の真珠は質がいいからいいと思うぞ」
「だろ? そんな気がしたんだよ! せっかくだし、10本くらいいっとくか!」
「余れば売ればいいから、いいと思うぞ」

 売上の金貨があるんだし!

 そして真珠の色がわりと多い!
 ホワイト、ピンク、グレー、ブラック、ゴールド、ブラウン、ブルー、グリーン、パープルなどまであるのだ。

「ホワイトとゴールドとピンクの真珠のネックレスがかわいい気がする、どれがいいかな?」
「気になるのは全種買えばいい」
「だよな! 大人買いだ!」


 買い物も済ませたので俺達は人魚の銅像の側でミレナを待つ。


 天井が暗くなってランタンが飛び始めた。
 側にある出店にお酒があったので一杯飲んだ。

 いい気分に浸っていると、
 ミレナが小走りでやってきた。


「気持ちよくなって寝てしまったわ! もうはじまっているじゃない!」
「あはは、だと思った」

「二人共もうなんか食べた!?」
「ああ、出店のイカ焼きと揚げ餅みたいなやつ」
「えー、じゃあ私はどうしようかしら」
「あ、あそこのお店、サザエやホタテを網焼きしてるぞ」

「むー、貝は好きじゃない」
「あ、そういや貝は苦手だけど汁だけくれって前に言ってたか。あ、あの揚げ餅美味しかったぞ」
「じゃあそれ買ってみる!」

 ミレナは揚げ餅らしきらものを買ってきてぱくついた。

「……美味しい」
「よかったな」
「うん」

「あ、ジェラルド、このランタンって願いをかけて飛ばすんだったか? 死者の慰霊のやつじゃないよな?」
「ああ、願いを乗せて飛ばすやつだぞ」

「じゃあランタンを買って飛ばすか」
「ああ」

 三人でランタンが替える店へ向かった。
 ミレナも歩きながら揚げ餅を完食していた。

「ランタンみっつください」

「私、自分で出すわ」
「そうか?」
「自分で買わないと願いが叶わないかもしれないし」
「そういうものか」
「ジェラルドは?」
「俺も自分で買うよ」

「あ、そうだ、ミラもお小遣いをあげよう、ランタン買うか?」
「はい」

「すみません、やはり会計別で一個ずつ」
「あいよ」

 店の人に謝罪してそれぞれ一個ずつ買うことにした。

 幻想的なランタンを飛ばす祭りに俺達も願いを乗せて飛ばしてみた。
 ランタンはふわりと浮いて上昇していく。

 俺の願いはシンプルに、

「幸せになれますように……」と。

 不幸は嫌なんでな。


 二人の願いは口に出してはいなかったけど、まあ、誰だって幸せを願うなり、お金持ちになりたいとか、素敵な恋人ができますようにみたいな感じだろう。

「あ、でもジェラルド、最期にランタンがクジラに飲み込まれても願いって叶うのもかな?」
「海神の遣いと言われるそのクジラに願いを飲み込んでもらえてこそ、叶うだろうと言われてるんだ」
「あー、そういう事か」

 祭りのラストに空飛ぶクジラがランタンを大きな口で飲み込んでいく。とても雄大な姿だ。

 周囲のボルテージは最高潮。
 歓声が上がる中、俺はミラを抱っこしながら人々の嬉しそうな顔を見て、いい祭りに参加できてよかったなと思った。
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