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102 物件探し

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 旅行から帰ってからはしばらく真面目に仕事をした。
 原稿とか動画編集。
 動画編集の方はカナタとミラが手伝ってくれたから、俺は漫画と小説付き画像集の作業。

 母親思いの美肌ちゃんの写真だけはそのまま使わず、自分で絵を描いて漫画にした。

 構図なんかは参考にして描いたけど、顔は全くの別人にしておいた。
 俺の同人作品が売られるのは異世界だから彼女の親戚なんかが知るはずもないが、なんとなく。

 まぁ、楽ばっかして絵を描くのをサボると下手になりかねないしな。
 今はデジタル作画なんでインクやトーンという画材が必要ない。
 タブレットとペンと電気さえあればなんとかなる。

 エロだし、背景もあんまりいらない。
 でも背景は素材がいくらでも用意できる。
 絵になる宿屋の風景も娼館の風景も撮らせてもらってるし、イラスト風に加工ですぐに使えるものにできる。

 そしてまた満月の日が来た。
 ラッキー達の世話をジェラルドたちに託して、俺はカナタと二人で大樹の元へ行った。
 カナタはかなり緊張しているみたいだ。
 やや顔色が悪い。

「大丈夫か? カナタ、深呼吸しろ?」
「だ、大丈夫、スーハー、スーハー」

 カナタは深呼吸して、大樹の前に歩み出た。
 上空では美しい満月が俺達を見守っていた。

 魔法のカバンを肩からかけたまま、大樹にそっと手を伸ばすカナタ。

 指先が大樹に触れたかと思ったら、そのまますっと、入った!!

 指のみならず、体ごとするりと入った!!

「成功だ!」

 俺もすぐにカナタの後を追って大樹の中から日本へ向かった。

「成功したよ! 翔太!」
「そうだな! じゃあ早速アパートかマンション探さないとな!」

「あ、でも別荘も買うだろうし、僕の住まいは安めのとこでいいから、どうせほとんど異世界で過ごすんだし、古くても騒音とかあっても平気」
「ああ、とりまこの家の近くかホムセンかドラッグストアの近くがいいな」

「あ、日本でのデータ同人本の売り上げは?」

 カナタが軍資金を気にしてるので俺はパソコンを立ち上げて売り上げをチェックした。


「上々だ」
「あ、かなり稼いでるみたいだけど、税金とかは大丈夫?」
「知り合いの漫画家さんのツテで紹介してもらった同じ税理士さんに頼んでいる」
「あ、なら良かった」

 とりあえずポストと宅配ボックスで荷物を受け取り、魔法のカバンに入れる。

「さて、ネットに繋がる今が物件を搜すチャンスだ」
「そうだね、僕はさっきの条件で安いアパートの部屋を探すよ」
「多少はティッシュとかも配達してもらうから、通販の物が置けるスペースも欲しいし、あんまり狭すぎるのはやめておこうぜ、俺は別荘を探す」
「そ、そう? 翔太がそう言うなら」


 しばらく二人で物件探しをした。
 あとは実際に内見して決めればいいかな?

「そろそろシャワー浴びて寝るか、明日は不動産屋に行ったり買い物もするし」
「そうだね」


 先にカナタに風呂に行かせて俺は通販の方をポチポチした。
 コンドームとか、薬の類と女性物の下着を。

 カナタがシャワーから戻ってきたので、入れ替わりで風呂に。

 翌朝、近くの喫茶店でモーニングを注文した。
 映える写真を撮った後に食べた。
 サンドイッチ美味しい。
 
 そしてまたスマホから弁当屋に弁当の大量注文をした。
 カフェで楽をする為だ。

 それからコンビニでスイーツやおにぎりなどを買って、ホームセンターでティッシュの類を買ってから不動産屋へ。

 不動産屋に行ってホムセンの近くにあるアパートの契約をさっさと済ませる。
 カナタが自分のは内見もいらないと言うので。

 それと次に俺の別荘を別荘地に見に行くので電車に乗って向かうことにした。

 電車の旅と言えばアレだよ。


「カナタ、なんか美味そうな駅弁買おうぜ!」
「駅弁かあ、いいね」
「俺は黒毛和牛のすき焼き弁当にしよう」
「僕は何でも」
「じゃあ同じのでいいな」
「うん」

 黒毛和牛のすき焼き弁当を六個買って、二個は電車内で食べて、残りは魔法のカバンに入れておくことにした。

 しばらくまったりと車窓の景色を眺め、お腹が空いた頃に駅弁の蓋を開けると黒毛和牛が敷き詰められていた。
 うひょー!! 美味そう! そして実食!

「生姜を感じる、これ美味しいね」
「上品な味つけだな、美味い」


 しばし電車内で駅弁を楽しむ。

 別荘地にある気になる物件を4件ほど現地の不動産屋に案内してもらって車で見に行った。

 一戸建て、4LDK の1,980万円。
 コンクリートの打ちっぱなし系の建築がクールでモダンで頑強そう。

「もうここでいいか」


 俺はとある別荘前で独り言のようにそう漏らした。

 入り口も広いし、ガレージもあるし、通販の荷物も多めに置けそうだし。

「翔太、そんなに早く決めて大丈夫?」
「なるべく早く異世界に帰らないと店があるしミレナが心配するし」

 ジェラルドは多分大丈夫だけど、問題はミレナだよ。
 かつて冒険者パーティーから揉めて弾かれた子だし。
 なんか俺がついててやらないとって思ってしまう。


「そう、翔太がいいならいいけど、占い師にいいとこを聞くんじゃなかった?」
「あー、なんかもう面倒になってさぁ……」

 
「あの、お客様、お決まりにまりましたらまた連絡をください」
「はい」

 他のお客の案内係があるらしく、一旦不動産屋と別れた。

 俺達はレンタサイクルで自転車を借りて近所を散策がてら少しサイクリングをすることにした。


「あのチート帳面を使うとはいえ、異世界への入口つけるんでしょう?」
「えーと、じゃあ、四件の中から阿弥陀でー」
「あ、あみだくじー?」

 俺があみだくじを提案すると、

「あ、あそこパン屋さんがあるよ! 飲食スペースもありそう」
「じゃあ、あそこであみだくじやろうかなー」

 俺達は自転車から降りて森の中のパン屋さんと言う名前のかわいいパン屋に入った。

 扉を開けるなり鼻腔をくすぐる素敵な香りがあった。
 あー、焼き立てパンの香りは最高だぜ!!

 トレイとトングを手にして、二人で美味しそうなパンを選んだ。

 飲食スペースで美味しいパンをいただいた。


「ベーコンエピはやはり美味しいな、噛めば噛むほど味わいがある」
「このあんバターフランスも美味しいよ」
「じゃあそっちも御土産に買っておくか」

 俺の好きなハード系のパンが美味しいパン屋が近くにあるし、もうここでいいのでは?

 と、思いつつもルーズリーフとボールペンをテーブルの上に取り出し、紙を一枚外して一応あみだくじを作った。
 紙の一番下を折り曲げてから選ぶ。


「ここにするか」
「じゃあ線をたどって……おや? ここは」
「ほら、やっぱり、神は美味しいパン屋が近所にあるここにせよと言っている」

「じぁあ契約しちゃう?」
「ああ、さっきの物件に決めた」

 レンタサイクルを返却し、不動産屋にスマホで連絡をした。

「え? もう決められたんですか?」

 と、物件屋に驚かれたが、やることが多いからさ。

 トイレを借りる為に道の駅に入った。
 ついでに美味しそうなサツマイモなんかを買い込んだ。

「これで焼き芋パーティーができるぞ」
「楽しみだね」
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