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2[ヴィル]
王宮からの発表
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文官の汚職が絡んでいた一連の事件は、何がしかの正式な発表をしなくてはならず、王宮では議論に発展していた。
イドレの汚職、そしてスルトの謀反について、どこまでを発表するのか。
主要な新聞社に概要を説明して事前質問を受け付けたところ、どこの新聞社も『当日降った雨』について説明を求めてきた。
事件の日、リアが涙を流したことで王都に小さな雨が降った。
降るべき場所で降るべき量しか降らせないはずのそれが、無計画に王都全体の地面をしっとりと濡らしたのは久々のことだ。
リアは知ってか知らずか、感情を爆発させることなく声を殺して静かに泣いた。
それは彼女の心の均衡を保ち、かつ王都を大雨洪水被害から守る唯一の方法でもあった。
先代神薙の時代、王国の民はありとあらゆる自然災害に悩まされていた。
これまで新聞や雑誌の記者たちは、起きている事実を独自に観察し、分析して記事を書いていた。天候は商売や国民生活に直結するため、昔から関心が高い。
彼らはうわさのような形ではなく、王宮の正式な見解を知りたがっていた。
最近の素晴らしい天気は今だけなのか、それとも当代の神薙が在位している間ずっと続くものなのか。長年愛用してきた砂塵よけの外套に帽子、防塵布、ヴェール……ありとあらゆる対策用品は捨てても良いのか。
そんな中、無理もないことなのだが、彼らは久々の雨に対して過敏に反応していた。
よもや再び大雨洪水・落雷突風に砂ぼこりを食らい続ける日々が戻ってくるのではあるまいな、と。そう不安に思う気持ちは俺にもよく分かる。
もともと王宮では、リアの功績を何らかの形で国民に伝えようという動きがあった。
俺個人としては、こういった悪い知らせに混ぜるような形で発表をするのは反対だ。願わくは明るい話題として彼女のことを知ってもらいたい。
しかし、雨に関する質問を無視すれば、神薙の印象が悪くなる懸念があった。
議論の結果、神薙に関する部分についても発表をすることになった。
神薙が夫を選んでいること。
その過程で謀反人が文官と結託し、事件を起こしたこと。
神薙を人質にしたが、第一騎士団がそれを阻止したこと。
すべては法の中で行われたことではあるが、神薙が深く傷つく結果になったこと。
これを踏まえ、王宮は組織と法の見直しを行うこと。
このようなざっくりとした発表ではあるのだが、起きた事実の大半が網羅された内容となった。
王宮がここまで文官の不祥事について発表をすることは稀だ。
「それだけのことが起きていながら小雨で済んだ。当代の神薙は慈悲深く、民への影響は最小限で抑えられている」と王宮は発表した。
どの新聞社も何がしかの確信を持つに至ったのだろう。リアに対し、好意的かつ同情的な記事を書いた。
リアはまだ毒沼のような薬を飲んでいる――
イドレの汚職、そしてスルトの謀反について、どこまでを発表するのか。
主要な新聞社に概要を説明して事前質問を受け付けたところ、どこの新聞社も『当日降った雨』について説明を求めてきた。
事件の日、リアが涙を流したことで王都に小さな雨が降った。
降るべき場所で降るべき量しか降らせないはずのそれが、無計画に王都全体の地面をしっとりと濡らしたのは久々のことだ。
リアは知ってか知らずか、感情を爆発させることなく声を殺して静かに泣いた。
それは彼女の心の均衡を保ち、かつ王都を大雨洪水被害から守る唯一の方法でもあった。
先代神薙の時代、王国の民はありとあらゆる自然災害に悩まされていた。
これまで新聞や雑誌の記者たちは、起きている事実を独自に観察し、分析して記事を書いていた。天候は商売や国民生活に直結するため、昔から関心が高い。
彼らはうわさのような形ではなく、王宮の正式な見解を知りたがっていた。
最近の素晴らしい天気は今だけなのか、それとも当代の神薙が在位している間ずっと続くものなのか。長年愛用してきた砂塵よけの外套に帽子、防塵布、ヴェール……ありとあらゆる対策用品は捨てても良いのか。
そんな中、無理もないことなのだが、彼らは久々の雨に対して過敏に反応していた。
よもや再び大雨洪水・落雷突風に砂ぼこりを食らい続ける日々が戻ってくるのではあるまいな、と。そう不安に思う気持ちは俺にもよく分かる。
もともと王宮では、リアの功績を何らかの形で国民に伝えようという動きがあった。
俺個人としては、こういった悪い知らせに混ぜるような形で発表をするのは反対だ。願わくは明るい話題として彼女のことを知ってもらいたい。
しかし、雨に関する質問を無視すれば、神薙の印象が悪くなる懸念があった。
議論の結果、神薙に関する部分についても発表をすることになった。
神薙が夫を選んでいること。
その過程で謀反人が文官と結託し、事件を起こしたこと。
神薙を人質にしたが、第一騎士団がそれを阻止したこと。
すべては法の中で行われたことではあるが、神薙が深く傷つく結果になったこと。
これを踏まえ、王宮は組織と法の見直しを行うこと。
このようなざっくりとした発表ではあるのだが、起きた事実の大半が網羅された内容となった。
王宮がここまで文官の不祥事について発表をすることは稀だ。
「それだけのことが起きていながら小雨で済んだ。当代の神薙は慈悲深く、民への影響は最小限で抑えられている」と王宮は発表した。
どの新聞社も何がしかの確信を持つに至ったのだろう。リアに対し、好意的かつ同情的な記事を書いた。
リアはまだ毒沼のような薬を飲んでいる――
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