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3[ヴィル]
リアの隠し事
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リアは元気を取り戻し、震えも止まって毒沼のような薬とお別れした。
主の回復とともにエムブラ宮殿には平穏な日々が戻り、俺たちの心も安息で満たされた。
それは単に彼女の体から癒しの魔力が漏れているという理由だけでなく、彼女が微笑んでいたからだった。
甘い菓子を食べながらホワホワと話す彼女は、存在そのものが俺たちにとっての癒しだった。
あの日、鬼の形相でスルトを殴り殺そうとしていたアレンも、(腹の中がどうなっているかはさておき)リアの隣で穏やかに彼女を見守っていた。
団員たちが遠征を伴う訓練に行きたがらないのも無理はない。
リアのそばを離れたくないのだ。
アレンがボヤいていると、慈悲深いリアは自らも訓練へ参加すると言ってくれた。
彼女はあのようなひどい目に遭ってもなお親切で礼儀正しく、側近護衛を大事にしてくれる。
俺が徹夜明けの失態をわびたときも、彼女は気にしないようにと言ってくれた。そればかりか、俺がやらかした翌日からずっと変わらぬ態度で接してくれている。
しかし、そんな平穏な日々は、あっけなく壊れてしまった。
犯人はほかでもないリアだった。
彼女が俺たちに秘密を作ったのだ――
アレンは俺の顔を見るや否や不満そうに口を尖らせた。
そして「また収穫なしですかぁ?」と言う。
「仕方ないだろう」と、俺は答えた。
彼がぷくぷくと頰を膨らませ「もぉー、ダメなヴィルさん」とリアの真似をしたせいで、周りにいた団員がドッと笑った。俺も思わず吹き出した。
最近、アレンのモノマネの精度が上がっており、忘れた頃にポツリと披露するので、団員たちに大うけしている。もともと器用な男ではあるが、すっかり宮廷訛りを使いこなしていた。
「軽く質問しただけだからな」
「侍女と侍女長もですか?」
「彼女たちは意外と肝が据わっている。というか、リアへの忠誠心が強い。あれは死んでも口を割らないぞ」
「大事にされていますから仕方ないですね」と、アレンは顎をさすった。
「俺だって拷問にかけられても彼女のことは話しませんよ」
徹夜明けの俺が理性をぶっ飛ばして大暴走する中、リアは何か「問題がある」というようなことを言った。
ずっとそれが気になっていたため、後日「俺のベッドで言っていたのは何だったのか」と真意を確認した。すると、思わぬ返事が返ってきた。
「すみません。殿方にはお話しできないのです」
彼女は俺やアレンだけでなく男という男をすべて払い、女性だけで秘密の話をするようになっていた。
フィデルは「そんなこともあるんじゃないのぉ?」と、軽く流した。
彼は今でこそ部下だが、俺の先輩だ。
昔から頭の中に常夏の太陽とヤシの木が生えた砂浜があり、心臓がココナッツの殻で覆われている男などと言われている。
繊細そうに見えて、とてつもなく強心臓かつ強靭な精神を持つ男だ。
「気にならないのか?」と聞いてみた。
「女性だけで集まっているのもかわいいじゃないの」と彼は笑う。
陽気すぎるというか明るすぎるというか、大物すぎて話が噛み合わない。
アレンは「警備のことがありますからね」と、至極まともなことを言った。
寡黙なマークは無言で「うん」とうなずいただけ。
俺の部下は皆とても優秀だが、少々個性が強すぎる。
方針も何も見えていない状態で話し合う相手は、やはりアレンが適任だった。
執務室でアレンと二人きりになると、俺は盛大にため息をついた。
皆には申し訳ないが、俺は単純に「リアに隠し事をされた」という事実が衝撃すぎて立ち直れずにいる。
それはない。
それはないよ、リア……。
俺はそんなに頼りないだろうか。
これでも努力はしているつもりなのだが、やはり「ダメなヴィルさん」なのだろうか。
どうしたら彼女に話してもらえるのだろう。
「アレンにも何も話さないのか?」
「教えてくれませんねぇ。結構しつこく聞いてみましたけど」
アレンは下向き加減に口を尖らせてブツブツと言い、チラリと上目遣いでこちらを見た。
「なんだよ?」
「『俺のベッドで言っていた話』って、いつの間にそういう関係に?」
「何もない。ただ俺が暴走しただけだ」
「へー」
「お前こそ、リアとのことで個人的な報告はないのか?」
「あるわけないでしょう。私はただの護衛ですよ」
しばし沈黙が流れた。
アレンに座るよう促し、俺はその向かいのソファーに腰かけた。
「夫に、という話は出ないのですか?」と、アレンが言った。
俺は素直に「出ない」と答えた。
あの暴走事件のせいでむしろ遠ざかっているくらいだろうが、それは言わずにおいた。
「変ですねぇ。どう見ても最初からリア様の想い人は団長ですよ。お互い好き合っているようにしか見えない」
「そうだとしても、何もない」
「何か……なーんか、違和感がありますよね。そう思いませんか? なんか変ですよ」
彼は顎をいじり回しながらブツブツ言った。
俺には彼の言う「なんか変」が何のことなのか分からなかった。
「俺はてっきりアレンと良い仲なのかと思っていた」
「それはないです。今は」
「今は?」
「自分が一人目の夫の器でないことくらい分かります。というか……」
「なんだ?」
「いや、んー……なんでもないです」
「器なんて、俺にもないぞ」
「想い人がいるなら、まずはそちらと上手くいくようにと思っているだけです」
「想い人か。まあ、嫌われてはいないのだろうが……」
「ヴィル先輩で物足りなくなったときが我々の出番なのでね」
「俺が飽きられる日の話なんて勘弁してくれ」と言った。
それに、物足りないも何も、まだ満たせてすらいないのだ。
その証拠にたった今も人払いを食らっている。「男だから」という理由だけで。
「あのコソコソやっているのが何なのか……」
「悪巧みではないでしょうが、気になりますね」
「男には言えない、の一点張りだぞ」
「男であるかぎり教えて貰えないのですかね? 一生?」
「俺が女の格好をすればいいのか?」
「肩幅広すぎません? 私のほうが似合うかも。ちょっといかつい大女になると思いますが」
「やってみるか?」と言うと、彼は「バカじゃないですか」と笑った。
たかが女装したくらいで内緒話をしてくれるのならばお安い御用なのだが、さすがに現実的ではない。
侍女と四人だけでコソコソやっている分には良いが、外へ広がるのなら警護の問題もあって厄介だ。騎士だけで良いのか特務師も入れるべきなのか……今の状態では適切な準備ができない。
どうにかして聞き出さなくては。
「こういう場面は特務師団のほうが得意そうだが、彼らならどうするのだろう」
「まあ、対応策がないわけではないでしょうね」
アレンは言葉を濁した。
「なんだ? はっきり言えよ」
「特務師団は直線的というか、騎士道の影響がないので目的のためには結構えげつないことをします」
「例えば?」
「とてもリア様相手に使えるようなものではないですよ」
「だから、どういうものだ?」
「相手は何の罪もない女性ですから、最初に候補となる手法は、やはり『色』を使った痛くない拷問でしょうね」
「つまり、『男』を使うということか」
「先代ならまだしも、リア様には無理ですよ」
「思い切り薄めたら?」
「はあ?」
「うすーくうすーく、百倍希釈ぐらいにしてかわいい感じにしたら?」
「それ、もう原形を留めていないですよ。自分でやって下さい」
彼は笑いながら「なんなんですか『かわいい感じ』って」と言った。
「笑って済むかわいい感じだよ」と答えると、彼はさらに笑った。
「先輩がやる分にはいいのでは?」
「無理だ」
「上手くやれば夫に選ばれる可能性がなきにしもあらずですよ?」
「リアが相手では俺のほうが我慢できない。こっちが拷問を食らうも同然だ」
「この変なメガネを貸してあげますよ」
「岩が迫っても話してくれないさ」
「ふははっ」
侍女と侍女長を揺さぶればすぐに情報が引き出せると踏んでいたものの、何も聞き出せなかったことから打つ手がなくなっていた。
もはや案を出し合っているのか、仲間外れにされた者同士で傷をなめ合っているのか良く分からない様相を呈している。
「リア様は千倍以上に希釈して、しかもほんのちょっとにしないと無理でしょうねぇ」と彼は言った。
「できそうか? というか、やれ」
「強引ですねぇ」
「なんとかして探らねば警護に差し支える」
「んー。リア様に口づけを拒絶されたことは?」
「……ない」
俺が答えると、アレンは小さく「ふむ」と言った。
リアが恥じらうことはあっても拒絶されたことはなかった。
「リア様が拒まなかった場合に限り口づけをしますが、それでも大丈夫ですか?」
俺は小さくため息をついた。
「本人が拒否しないものを、俺が文句言うわけないだろう。何度も言うが、そのばかげたメガネは必要なときだけにして普段は外せ。お前だって夫になる資格があるし、むしろお前のほうがそれに近いと……」
「いや、おそらく拒否するでしょうし、口も割らないと思いますよ」
「何故そう思う?」
「リア様だからです」と、アレンはまた顎をいじって何か考えていた。
彼の言ったとおり、リアは彼の口づけを拒絶し、かと言って秘密を話しもしなかった。
彼いわく、猛烈に薄めて機能するギリギリのところだったらしい。しかし、話してもらえなかったので深追いもしなかったそうだ。
それどころか彼女が気を失ったため「もう二度としない」と言って落ち込んでいた。
魔力を持ち、かつ魔力操作のできない彼女には、悪ふざけの延長であっても精神的な負荷になることはやめたほうが良いのだろう。
アレンは「こんなに人に謝ったことない」というほど彼女に謝り倒したらしい。
そんなことがあっても、二人の関係は変わらず良好だった。
アレンの溺愛ぶりが若干ひどくなった気はする(そもそも最初からひどい)のだが、とりあえず仲は良さそうなので安心した。
憂慮していたとおり、リアの内緒話は外部の人間を巻き込み始めた。
以前、問題を起こしたことのあるマダム・オリオンというデザイナーを宮殿に呼び出し、またもや女性だけで打ち合わせをするという。
俺たちがしつこく聞いたせいか執事長に口止めをしていたようだ。
マダム・オリオンが会議室に到着し、リアがそこへ向かう直前にそれを知らされた。
主の回復とともにエムブラ宮殿には平穏な日々が戻り、俺たちの心も安息で満たされた。
それは単に彼女の体から癒しの魔力が漏れているという理由だけでなく、彼女が微笑んでいたからだった。
甘い菓子を食べながらホワホワと話す彼女は、存在そのものが俺たちにとっての癒しだった。
あの日、鬼の形相でスルトを殴り殺そうとしていたアレンも、(腹の中がどうなっているかはさておき)リアの隣で穏やかに彼女を見守っていた。
団員たちが遠征を伴う訓練に行きたがらないのも無理はない。
リアのそばを離れたくないのだ。
アレンがボヤいていると、慈悲深いリアは自らも訓練へ参加すると言ってくれた。
彼女はあのようなひどい目に遭ってもなお親切で礼儀正しく、側近護衛を大事にしてくれる。
俺が徹夜明けの失態をわびたときも、彼女は気にしないようにと言ってくれた。そればかりか、俺がやらかした翌日からずっと変わらぬ態度で接してくれている。
しかし、そんな平穏な日々は、あっけなく壊れてしまった。
犯人はほかでもないリアだった。
彼女が俺たちに秘密を作ったのだ――
アレンは俺の顔を見るや否や不満そうに口を尖らせた。
そして「また収穫なしですかぁ?」と言う。
「仕方ないだろう」と、俺は答えた。
彼がぷくぷくと頰を膨らませ「もぉー、ダメなヴィルさん」とリアの真似をしたせいで、周りにいた団員がドッと笑った。俺も思わず吹き出した。
最近、アレンのモノマネの精度が上がっており、忘れた頃にポツリと披露するので、団員たちに大うけしている。もともと器用な男ではあるが、すっかり宮廷訛りを使いこなしていた。
「軽く質問しただけだからな」
「侍女と侍女長もですか?」
「彼女たちは意外と肝が据わっている。というか、リアへの忠誠心が強い。あれは死んでも口を割らないぞ」
「大事にされていますから仕方ないですね」と、アレンは顎をさすった。
「俺だって拷問にかけられても彼女のことは話しませんよ」
徹夜明けの俺が理性をぶっ飛ばして大暴走する中、リアは何か「問題がある」というようなことを言った。
ずっとそれが気になっていたため、後日「俺のベッドで言っていたのは何だったのか」と真意を確認した。すると、思わぬ返事が返ってきた。
「すみません。殿方にはお話しできないのです」
彼女は俺やアレンだけでなく男という男をすべて払い、女性だけで秘密の話をするようになっていた。
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彼は今でこそ部下だが、俺の先輩だ。
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繊細そうに見えて、とてつもなく強心臓かつ強靭な精神を持つ男だ。
「気にならないのか?」と聞いてみた。
「女性だけで集まっているのもかわいいじゃないの」と彼は笑う。
陽気すぎるというか明るすぎるというか、大物すぎて話が噛み合わない。
アレンは「警備のことがありますからね」と、至極まともなことを言った。
寡黙なマークは無言で「うん」とうなずいただけ。
俺の部下は皆とても優秀だが、少々個性が強すぎる。
方針も何も見えていない状態で話し合う相手は、やはりアレンが適任だった。
執務室でアレンと二人きりになると、俺は盛大にため息をついた。
皆には申し訳ないが、俺は単純に「リアに隠し事をされた」という事実が衝撃すぎて立ち直れずにいる。
それはない。
それはないよ、リア……。
俺はそんなに頼りないだろうか。
これでも努力はしているつもりなのだが、やはり「ダメなヴィルさん」なのだろうか。
どうしたら彼女に話してもらえるのだろう。
「アレンにも何も話さないのか?」
「教えてくれませんねぇ。結構しつこく聞いてみましたけど」
アレンは下向き加減に口を尖らせてブツブツと言い、チラリと上目遣いでこちらを見た。
「なんだよ?」
「『俺のベッドで言っていた話』って、いつの間にそういう関係に?」
「何もない。ただ俺が暴走しただけだ」
「へー」
「お前こそ、リアとのことで個人的な報告はないのか?」
「あるわけないでしょう。私はただの護衛ですよ」
しばし沈黙が流れた。
アレンに座るよう促し、俺はその向かいのソファーに腰かけた。
「夫に、という話は出ないのですか?」と、アレンが言った。
俺は素直に「出ない」と答えた。
あの暴走事件のせいでむしろ遠ざかっているくらいだろうが、それは言わずにおいた。
「変ですねぇ。どう見ても最初からリア様の想い人は団長ですよ。お互い好き合っているようにしか見えない」
「そうだとしても、何もない」
「何か……なーんか、違和感がありますよね。そう思いませんか? なんか変ですよ」
彼は顎をいじり回しながらブツブツ言った。
俺には彼の言う「なんか変」が何のことなのか分からなかった。
「俺はてっきりアレンと良い仲なのかと思っていた」
「それはないです。今は」
「今は?」
「自分が一人目の夫の器でないことくらい分かります。というか……」
「なんだ?」
「いや、んー……なんでもないです」
「器なんて、俺にもないぞ」
「想い人がいるなら、まずはそちらと上手くいくようにと思っているだけです」
「想い人か。まあ、嫌われてはいないのだろうが……」
「ヴィル先輩で物足りなくなったときが我々の出番なのでね」
「俺が飽きられる日の話なんて勘弁してくれ」と言った。
それに、物足りないも何も、まだ満たせてすらいないのだ。
その証拠にたった今も人払いを食らっている。「男だから」という理由だけで。
「あのコソコソやっているのが何なのか……」
「悪巧みではないでしょうが、気になりますね」
「男には言えない、の一点張りだぞ」
「男であるかぎり教えて貰えないのですかね? 一生?」
「俺が女の格好をすればいいのか?」
「肩幅広すぎません? 私のほうが似合うかも。ちょっといかつい大女になると思いますが」
「やってみるか?」と言うと、彼は「バカじゃないですか」と笑った。
たかが女装したくらいで内緒話をしてくれるのならばお安い御用なのだが、さすがに現実的ではない。
侍女と四人だけでコソコソやっている分には良いが、外へ広がるのなら警護の問題もあって厄介だ。騎士だけで良いのか特務師も入れるべきなのか……今の状態では適切な準備ができない。
どうにかして聞き出さなくては。
「こういう場面は特務師団のほうが得意そうだが、彼らならどうするのだろう」
「まあ、対応策がないわけではないでしょうね」
アレンは言葉を濁した。
「なんだ? はっきり言えよ」
「特務師団は直線的というか、騎士道の影響がないので目的のためには結構えげつないことをします」
「例えば?」
「とてもリア様相手に使えるようなものではないですよ」
「だから、どういうものだ?」
「相手は何の罪もない女性ですから、最初に候補となる手法は、やはり『色』を使った痛くない拷問でしょうね」
「つまり、『男』を使うということか」
「先代ならまだしも、リア様には無理ですよ」
「思い切り薄めたら?」
「はあ?」
「うすーくうすーく、百倍希釈ぐらいにしてかわいい感じにしたら?」
「それ、もう原形を留めていないですよ。自分でやって下さい」
彼は笑いながら「なんなんですか『かわいい感じ』って」と言った。
「笑って済むかわいい感じだよ」と答えると、彼はさらに笑った。
「先輩がやる分にはいいのでは?」
「無理だ」
「上手くやれば夫に選ばれる可能性がなきにしもあらずですよ?」
「リアが相手では俺のほうが我慢できない。こっちが拷問を食らうも同然だ」
「この変なメガネを貸してあげますよ」
「岩が迫っても話してくれないさ」
「ふははっ」
侍女と侍女長を揺さぶればすぐに情報が引き出せると踏んでいたものの、何も聞き出せなかったことから打つ手がなくなっていた。
もはや案を出し合っているのか、仲間外れにされた者同士で傷をなめ合っているのか良く分からない様相を呈している。
「リア様は千倍以上に希釈して、しかもほんのちょっとにしないと無理でしょうねぇ」と彼は言った。
「できそうか? というか、やれ」
「強引ですねぇ」
「なんとかして探らねば警護に差し支える」
「んー。リア様に口づけを拒絶されたことは?」
「……ない」
俺が答えると、アレンは小さく「ふむ」と言った。
リアが恥じらうことはあっても拒絶されたことはなかった。
「リア様が拒まなかった場合に限り口づけをしますが、それでも大丈夫ですか?」
俺は小さくため息をついた。
「本人が拒否しないものを、俺が文句言うわけないだろう。何度も言うが、そのばかげたメガネは必要なときだけにして普段は外せ。お前だって夫になる資格があるし、むしろお前のほうがそれに近いと……」
「いや、おそらく拒否するでしょうし、口も割らないと思いますよ」
「何故そう思う?」
「リア様だからです」と、アレンはまた顎をいじって何か考えていた。
彼の言ったとおり、リアは彼の口づけを拒絶し、かと言って秘密を話しもしなかった。
彼いわく、猛烈に薄めて機能するギリギリのところだったらしい。しかし、話してもらえなかったので深追いもしなかったそうだ。
それどころか彼女が気を失ったため「もう二度としない」と言って落ち込んでいた。
魔力を持ち、かつ魔力操作のできない彼女には、悪ふざけの延長であっても精神的な負荷になることはやめたほうが良いのだろう。
アレンは「こんなに人に謝ったことない」というほど彼女に謝り倒したらしい。
そんなことがあっても、二人の関係は変わらず良好だった。
アレンの溺愛ぶりが若干ひどくなった気はする(そもそも最初からひどい)のだが、とりあえず仲は良さそうなので安心した。
憂慮していたとおり、リアの内緒話は外部の人間を巻き込み始めた。
以前、問題を起こしたことのあるマダム・オリオンというデザイナーを宮殿に呼び出し、またもや女性だけで打ち合わせをするという。
俺たちがしつこく聞いたせいか執事長に口止めをしていたようだ。
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