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[リア]
告発
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「理由はお聞かせ頂けるのでしょうか」
大司教が不満そうに言った。
聖女の石像が作れないと、宗派統合が計画どおり進まないのだろう。でも、それは民には関係のないことだ。
「わたくしが死んだ後、また分裂などされても困るからですわ」と答えた。
「聖女様が信仰の対象から外れることになってしまいます」
「結構です。像が変わったところで教えは変わりませんし、民は変わらず家や職場から行きやすい教会に行きますわ」
大司教は言葉に詰まった。
これは彼らもわかっているはずだ。祈るだけなら交通費を払いたくないのが民の心理。普段と違う教会へ行くのは「何かのついで」の時だけだ。宝くじ売り場のように「ここは当たりやすい」とか「願いが叶いやすい」とか、魅力的な宣伝文句でもなければ人は呼べない。
「神薙のわたしは像を作る対象ではありませんでしたよね。同一人物ですのに、聖女になったら急に祀りたいと仰る。ご自身がおかしなことを言っているとは思いませんか?」
「そ、それは、神獣様が」
「神獣の有無で判断しているのでしたら、皆さまにとって重要なのは神獣だということです。ご自身の口で『信仰に聖女は関係ない』と言っているようなものですよ?」
フェンリルが膝の上で「このオジサン、アホだね」と言った(直球すぎ。神語でよかった。笑)
「それに、南の聖女様と西の大聖女様はお二人ともご存命ですわ。今ある像を撤去した後、どうなさるおつもりですの?」
「あ……あー、いや……それは、ですね」
「西の大聖女様はオーディンス大臣の奥様でもあり、わたくしが最も信頼する側仕えのお母様です。新聞報道で日々のご活躍を知り、わたくしも大変尊敬しております。まさか、その像を棄てようなどとお考えではありませんわよね?」
「そっ……。陛下、あの……」
大司教は陛下に救いを求めた。
しかし、陛下はじろりと彼をにらみつけている。
「まさか、教会近くの広場に売ろう、などと考えていないだろうな?」と冷たく言った。 すでにそういう情報が入っているのだろう。まったく、なんて不届きな人たちなのかしら。
「そのようなことをしてみろ。ヴィントランツ王国との国際問題になる。関わった聖職者は、首から上だけが海を渡ることになるだろうな?」
陛下が何か意味ありげな目でこちらを見ている。
「わたくしから、もう少しお話をしたほうがよろしいですか?」と尋ねた。
陛下はうなずいて目配せした。
子どもたちから直接話を聞いたわたしに告発をしてほしいのだろう。
「大司教様、一つお伺いしたいことがあるのですが」と切り出した。
「皆さまが熱心にやられていた宗派争いですが、結局、どなたのためになりましたか?」
「それはどのような?」と、大司教は質問を返してきた。
「質問をしているのはわたくしです。答えなさい」
「し、失礼しました! それは、もちろん民のために……」
「あちこちの教会から勧誘を受けて迷惑していると民からは聞いています」
「こ、孤児院が、増えました」
「慈善家の皆さまから、寄付が別の場所に流れているのではないかと相談を受けておりますが?」
「それは異なことを……」
「事実ではないと仰るのですか?」
「かようなことは有り得ません」
彼らの後ろでは、音も立てずに扉が閉まり、屈強な騎士がその前に立っていた。
謁見の間は近衛騎士団の管轄だ。しかし、扉の前に立っているのは近衛ではなく、かといって聖騎士団員でもなかった。
この用が済んでも、大司教は家に帰れないだろう。
わたしが急に呼び出されて貴族のお祝いを受けることになったのは、おそらく大聖堂の調査に関係している。彼らが王宮へ来るよう仕向け、いない間に裏で何か調べているはずだ。
陛下が最初に彼らを呼んだのは、一番にお祝いを言わせるためではない。
断罪するためだ。
わたしは陛下とヴィルさんに目配せをした。
本題に入りますわ。皆さま、援護をお願いいたします。
「大司教は原理派をまとめていらっしゃる最高責任者ですよね?」
「はい。僭越ながら」
「北二区にある原理派の教会についてお伺いしたいのですが」
「はい、北二区が何か?」
「カメリアの花が美しい教会で、敷地内に孤児院がありますね?」
「はい」
「そこで暮らしていた複数の子どもから、こんな話を聞きました。毎週決まった曜日の夜中にお友達が消えると。子どもをどこに移動させているのですか?」
「そっ、そそそのようなことは!」
「ないと仰るのかな?」と、ヴィルさんが言った。
「ございません。夜中に移動というのは有り得ませんので!」
「そうか。しかし、ちょうど今しがた、この件について王都内すべての聖堂と教会に一斉捜査が入っているところだ。真実はすぐ明らかになるだろう」
「なっ、なんですと……?」
「おや? どうした。やましいことがないのなら、動揺することではないだろう」
「侮辱を賜りました。我々は何もやましいことなどございません!」
ヴィルさんは涼しい顔で雑談を始めた。
「原理派は西派に比べて信者数が少ない。大司教殿、だいぶ金策に苦労していたようだな。活動費を集めるために、信者からもらった装飾品などを売りに出し、現金化していたとか」
「それは……。そういうときもございましょう」
「次第に売るものがなくなり、金に困っているのを人買いに知られる事態にまでなった」
「な、なんのことでしょうか」と、大司教は声を震わせた。
こそこそ悪いことをやっていたわりに、隠し事が得意ではないらしい。
「組織ぐるみで上手くやっていたようだが……貴公、怒らせた相手がよろしくなかったぞ?」
ヴィルさんは余裕の微笑を浮かべていた。
対照的に、大司教は青ざめた顔でそわそわと手足を動かしている。
「私なら絶対に彼を敵には回さない。貴公はそういう男を激怒させてしまった」
「ぞ、像の件は改めまして! 我々はこれにて失礼をいたします!」
回れ右をしてそそくさと出口へ向かう御一行様。
しかし、出口の前には腕を組んで彼らをにらみつけている人がいた。
大司教が不満そうに言った。
聖女の石像が作れないと、宗派統合が計画どおり進まないのだろう。でも、それは民には関係のないことだ。
「わたくしが死んだ後、また分裂などされても困るからですわ」と答えた。
「聖女様が信仰の対象から外れることになってしまいます」
「結構です。像が変わったところで教えは変わりませんし、民は変わらず家や職場から行きやすい教会に行きますわ」
大司教は言葉に詰まった。
これは彼らもわかっているはずだ。祈るだけなら交通費を払いたくないのが民の心理。普段と違う教会へ行くのは「何かのついで」の時だけだ。宝くじ売り場のように「ここは当たりやすい」とか「願いが叶いやすい」とか、魅力的な宣伝文句でもなければ人は呼べない。
「神薙のわたしは像を作る対象ではありませんでしたよね。同一人物ですのに、聖女になったら急に祀りたいと仰る。ご自身がおかしなことを言っているとは思いませんか?」
「そ、それは、神獣様が」
「神獣の有無で判断しているのでしたら、皆さまにとって重要なのは神獣だということです。ご自身の口で『信仰に聖女は関係ない』と言っているようなものですよ?」
フェンリルが膝の上で「このオジサン、アホだね」と言った(直球すぎ。神語でよかった。笑)
「それに、南の聖女様と西の大聖女様はお二人ともご存命ですわ。今ある像を撤去した後、どうなさるおつもりですの?」
「あ……あー、いや……それは、ですね」
「西の大聖女様はオーディンス大臣の奥様でもあり、わたくしが最も信頼する側仕えのお母様です。新聞報道で日々のご活躍を知り、わたくしも大変尊敬しております。まさか、その像を棄てようなどとお考えではありませんわよね?」
「そっ……。陛下、あの……」
大司教は陛下に救いを求めた。
しかし、陛下はじろりと彼をにらみつけている。
「まさか、教会近くの広場に売ろう、などと考えていないだろうな?」と冷たく言った。 すでにそういう情報が入っているのだろう。まったく、なんて不届きな人たちなのかしら。
「そのようなことをしてみろ。ヴィントランツ王国との国際問題になる。関わった聖職者は、首から上だけが海を渡ることになるだろうな?」
陛下が何か意味ありげな目でこちらを見ている。
「わたくしから、もう少しお話をしたほうがよろしいですか?」と尋ねた。
陛下はうなずいて目配せした。
子どもたちから直接話を聞いたわたしに告発をしてほしいのだろう。
「大司教様、一つお伺いしたいことがあるのですが」と切り出した。
「皆さまが熱心にやられていた宗派争いですが、結局、どなたのためになりましたか?」
「それはどのような?」と、大司教は質問を返してきた。
「質問をしているのはわたくしです。答えなさい」
「し、失礼しました! それは、もちろん民のために……」
「あちこちの教会から勧誘を受けて迷惑していると民からは聞いています」
「こ、孤児院が、増えました」
「慈善家の皆さまから、寄付が別の場所に流れているのではないかと相談を受けておりますが?」
「それは異なことを……」
「事実ではないと仰るのですか?」
「かようなことは有り得ません」
彼らの後ろでは、音も立てずに扉が閉まり、屈強な騎士がその前に立っていた。
謁見の間は近衛騎士団の管轄だ。しかし、扉の前に立っているのは近衛ではなく、かといって聖騎士団員でもなかった。
この用が済んでも、大司教は家に帰れないだろう。
わたしが急に呼び出されて貴族のお祝いを受けることになったのは、おそらく大聖堂の調査に関係している。彼らが王宮へ来るよう仕向け、いない間に裏で何か調べているはずだ。
陛下が最初に彼らを呼んだのは、一番にお祝いを言わせるためではない。
断罪するためだ。
わたしは陛下とヴィルさんに目配せをした。
本題に入りますわ。皆さま、援護をお願いいたします。
「大司教は原理派をまとめていらっしゃる最高責任者ですよね?」
「はい。僭越ながら」
「北二区にある原理派の教会についてお伺いしたいのですが」
「はい、北二区が何か?」
「カメリアの花が美しい教会で、敷地内に孤児院がありますね?」
「はい」
「そこで暮らしていた複数の子どもから、こんな話を聞きました。毎週決まった曜日の夜中にお友達が消えると。子どもをどこに移動させているのですか?」
「そっ、そそそのようなことは!」
「ないと仰るのかな?」と、ヴィルさんが言った。
「ございません。夜中に移動というのは有り得ませんので!」
「そうか。しかし、ちょうど今しがた、この件について王都内すべての聖堂と教会に一斉捜査が入っているところだ。真実はすぐ明らかになるだろう」
「なっ、なんですと……?」
「おや? どうした。やましいことがないのなら、動揺することではないだろう」
「侮辱を賜りました。我々は何もやましいことなどございません!」
ヴィルさんは涼しい顔で雑談を始めた。
「原理派は西派に比べて信者数が少ない。大司教殿、だいぶ金策に苦労していたようだな。活動費を集めるために、信者からもらった装飾品などを売りに出し、現金化していたとか」
「それは……。そういうときもございましょう」
「次第に売るものがなくなり、金に困っているのを人買いに知られる事態にまでなった」
「な、なんのことでしょうか」と、大司教は声を震わせた。
こそこそ悪いことをやっていたわりに、隠し事が得意ではないらしい。
「組織ぐるみで上手くやっていたようだが……貴公、怒らせた相手がよろしくなかったぞ?」
ヴィルさんは余裕の微笑を浮かべていた。
対照的に、大司教は青ざめた顔でそわそわと手足を動かしている。
「私なら絶対に彼を敵には回さない。貴公はそういう男を激怒させてしまった」
「ぞ、像の件は改めまして! 我々はこれにて失礼をいたします!」
回れ右をしてそそくさと出口へ向かう御一行様。
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